arrow-leftarrow-rightarrow-smallarrow-topblankclosedownloadeventfbfilehamberger-lineicon_crownicon_lighticon_noteindex-title-newindex-title-rankingmailmessagepickupreport-bannerreportsearchtimetw

コロナ禍における健康市場トレンド

長く続くコロナ禍によって、健康に関する意識が変化しています。コロナ渦で起きた変化の定着~コロナ以前に「戻るもの」「戻らないもの」は?でもご紹介した通り、「新型コロナ感染拡大以後の生活・行動・考え方で変化したこと」を調査したところ、『人づきあい・コミュニケーション』『食』に次いで、3番目に『健康』が挙がってきました。

この変化を受け、健康市場にどのような影響がみられているのでしょうか、消費財に関するデータから見てみました。

健康に関する変化と今後の定着

図表1は健康について、コロナ禍で「変化した」ことと「収束後も定着する・変化が進む」ことについて調査した結果です。変化が大きい項目をピックアップしたのですが、運動不足に起因する体力低下・体重増といった悩みが増えていることや、免疫に関する意識が高まっていること、そしてこれらへの対処として、栄養補給や運動を意識的に行っている様子が見て取れます。

図表1

また、変化した中で定着する・変化が進む割合を『定着度』として算出してみると、特に定着度が高かったのが「免疫力を気にしている」「栄養補給を心がけている」「スポーツ・運動をしている」でした。特に免疫力については、「変化した」と答えた人も約58%と多く、このコロナ禍を機に大きく意識が変わったと言えそうです。

健康意識・行動の変化が市場に与えている影響は?

ここからは、変化の定着度が高いとみられる『免疫力ケア』『栄養補給』『運動』が消費にどのように影響するかを見ていきましょう。

そもそもの健康と食の関係ですが、インテージの生活者価値観データベースProfilerのデータを見てみると、「健康によいのでずっと取り続けている食品・飲料がある」という人は年々増えています。摂る食べもの、飲みものによって、ナチュラルな形で健康になりたい、という意識がコロナ前から高まっていたことがわかります。

図表2

この意識と連動してか、トクホや機能性表示食品の市場規模も年々拡大を続けています。(図表3)

図表3

では、コロナ禍で高まった『免疫力ケア』意識はどのように市場に反映されているのでしょうか。機能性表示食品市場の推移をカテゴリ別に見たものが図表4です。コロナ禍に入って以降の2020年、2021年は飲むヨーグルトや、乳酸菌飲料、乳酸飲料が特に好調だったことがわかります。
※無糖茶の伸びが大きいのは、売れ筋商品が機能性表示食品になったことによる影響による。

図表4

近年、様々な効果・効能がある乳酸菌が発見・商品化されており、免疫力強化をうたう乳酸菌が入った飲むヨーグルトや乳酸菌飲料が店頭に並んでいます。2021、2022年の市場の伸びはこれらの商品がけん引しており、背景にコロナ禍における免疫力向上への関心の高まりがあると考えられます。

また、『栄養補給』として注目されているのがタンパク質です。図表5はプロテイン粉末の市場規模を性年代別に表したものです。

図表5

もともと加齢に伴うフレイル※1の対策として筋力強化を求めるシニア層と、若年女性の筋トレブーム※2によってプロテイン粉末市場は拡大傾向にありましたが、コロナ禍に入った2020年以降、伸びが顕著となっています。「コロナ禍の隠れたヒット商品 成長するプロテイン粉末市場」でも紹介しましたが、コロナ禍で運動不足に陥ったことをきっかけに、筋力強化やダイエット時の栄養補給を目的に購入を始めた若年女性が多かったようです。

最近では、プロテインが強化された様々な食品が市場に出されています。今後、コロナ禍が明け、運動不足の状況が解消されても、コロナ禍を機にプロテインを補給して効果が得られた人にとって、食によるプロテイン補給は行動として定着するのかもしれません。

運動量と食品・飲料の消費の関係

ここまで、今後定着が見込まれる『免疫力ケア』『栄養補給』への食による対処が、市場に与える影響を見てきました。では、『運動』が定着することによって、変わる消費行動はあるのでしょうか? 消費者パネルSCIのモニターに普段の運動実態を聴取し、運動量と買い物ログのデータを紐づけることで、運動量と購買行動の関係を見てみました。

運動の強度を測る単位として“メッツ”というものがあります※3。安静時(静かに座っている状態)を1とした時と比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示します。
そして、普通の歩行は3.0、ウェイトトレーニングは6.0など、様々な運動や日常の活動について、詳細に計測結果が公開されています。この運動の強度と運動の実施頻度を掛け合わせて年間の運動量を算出して運動量の多さで人を分類し、運動量の多い人ほど消費が多いカテゴリがないかを探ってみました。

運動量が多くなるほど購入量が多くなった食品・飲料カテゴリを男性、女性それぞれについてピックアップした結果が図表6です。

図表6

男性は運動量が多いほど、シリアル、低カロリー甘味料、栄養バランス食品、乳酸菌飲料、美容・健康ドリンクなど、“効率的な栄養摂取や健康への効果を訴求する”カテゴリの消費が増える傾向がありそうです。一方、女性は豆乳やトマトジュース、野菜ジュースなど、“自然に近い形で栄養のバランスを取れる”カテゴリの消費が増える傾向がありそうです。また、ウィスキーや焼酎といった糖質ゼロのお酒を選ぶ傾向があるようです。

男女ともに運動量が増えるほど購入量が増えている栄養バランス食品について、もう少しデータを見てみましょう。
図表7は各層の栄養バランス食品購入において“プロテイン”訴求の商品が占める割合です。男性は多少でも運動している人の購入の95%がプロテイン訴求となっているのに対し、女性は運動量に比例してプロテイン訴求の割合が高まっています。運動量の多い女性とそうでない女性で栄養バランス食品を買う目的が明確に異なっているという状況が見て取れます。

図表7

コロナ禍をきっかけにはじめた『免疫力ケア』『栄養補給』『運動』の定着は、様々な食品や飲料の購買行動に影響を与えそうです。知るギャラリーでは今後も健康市場の動きを追っていきます。


この分析は、インテージの消費者パネルSCIと、SCI モニターに対する自主企画調査の結果を用いて行いました。
【SCI®(全国消費者パネル調査)】
全国15歳~79歳の男女52,500人の消費者から継続的に収集している日々の買い物データです。食品、飲料、日用雑貨品、化粧品、医薬品、タバコなど、バーコードが付与された商品について、「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで、購入したのか」という消費者の購買状況を知ることができます。
※SCIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開しておりません

【SCIモニターに対する自主企画調査】
調査手法:インターネットリサーチ(SCI vois)
調査地域:日本全国
対象者条件:調査実施タイミングにおけるSCI全有効モニター
標本サイズ:n=44,820
調査実施時期: 2022年1月12日(水)~1月28日(金)


※1 フレイル
2014年5月に日本老年医学会によって提唱された言葉で、「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、生活機能障害や要介護状態などが進むことで死亡などの危険性が高くなった状態」を指す。一般的に、高齢になるにつれ状態が悪くなるが、適切な介入や支援によって、生活機能の維持が可能とされている。

※2 若年女性の筋トレブーム
Instagramで“割れている”腹筋をアピールする 有名人の「腹筋女子」が増加したのをきっかけに、一般人にも広がり、♯腹筋女子 というハッシュタグには4/22現在71.8万件の投稿がされるなど盛り上がりを見せている。

※3 メッツの値について
公益財団法人長寿科学振興財団のホームページに記載のあった、運動別のメッツ値を使用した。同じ種目でもメッツ値が複数提示されているものは、平均値を使用している。
公益財団法人長寿科学振興財団

転載・引用について

◆本レポートの著作権は、株式会社インテージが保有します。
 下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。
「出典:インテージ 「知るギャラリー」●年●月●日公開記事」

◆禁止事項:
・内容の一部または全部の改変
・内容の一部または全部の販売・出版
・公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
・企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的としたパネルデータ(*)の転載・引用
(*パネルデータ:「SRI+」「SCI」「SLI」「キッチンダイアリー」「Car-kit」「MAT-kit」「Media Gauge」「i-SSP」など)

◆その他注意点:
・本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
・この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません

◆転載・引用についてのお問い合わせはこちら