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With コロナ ~「だれかのために」という意識の高まり ~

1. はじめに

年が明けるとオミクロン株の拡大が明らかになりました。ひと月もすると1日の新型コロナウィルスの新規感染者数が10万人に達し、多くの都道府県でまん延防止等重点措置が発令される事態に陥りました。いよいよ回復へという気運も芽生えていた世の中にまた、自粛・自制が求められる生活に逆戻りとなりました。そして、3月に入りようやく新規感染者数の拡大も減少へと向かい、沖縄をはじめ、早くからまん延が発令されていたエリアでは解除もはじまりました。世の中はまた少しずつ日常に向かっています。

今月、弊社が行った恒例の「2022年お花見に関するアンケート※1」では、この春に3割弱の方がお花見を予定しているという結果となりました。さらに、どのようなお花見を予定しているかと尋ねてみると「公園や土手などの近所の桜が咲いているところで」や「家族と一緒に」という予定が最も多くなっており、「桜の名所」や「旅行やドライブ」、「大人数で」といったイベント性のあるお花見を予定している人はごくわずかでした。

感染者数は減少しているとはいえ、新型コロナの影響はお花見にも影を落としていました。まだまだ、心からお花見を楽しめる状況ではありませんが、新規感染者の減少とともに少しずつ安堵に向かう生活者のマインドをいつものように定点アンケート等のデータから見ていきましょう。

2. 景況感は底打ちから回復へ ~ 内閣府 景気ウォッチャーから ~

内閣府が景況感の把握のために実施している調査に「景気ウォッチャー調査※2」があります。この景気ウォッチャー調査はさまざまな仕事に従事する約2000人に現在と将来における景気の実感を質問し、指数化して発表をしています。
最新の調査結果(2022年2月データ:2022年3月8日リリース)では、現在の景況感をあらわす「景気の現状DI」をみると、前回1月に大きく減少に向かった「家計動向」、「企業動向」、「雇用」は下げ止まりの傾向をみせています。新規感染者数の減少や子どもを含めた幅広い世代へのワクチンの普及、3回目接種の普及などを背景に景況感も回復に向かっているようにもみえます(図表1)。
また、将来的な景況感をあらわす「景気の先行きDI」についても「家計動向」、「雇用」ともに回復の兆しをみせています。一方で「企業動向」だけが下降を続けていますが、内閣府解説では「ウクライナ情勢による影響を含め、コスト上昇等に対する懸念が見られる」という表現で新型コロナ以外の新たな不安要素、インパクトを示唆しています。原材料の高騰やコスト上昇に連動しての値上げについては、国内でも幅広い品目において価格見直しの動きがあります。ウクライナの情勢とともに今後も注視していきたいと思います。

図表1

3. 春めく消費・行動意欲

定点調査で追い続けてきた新型コロナの感染拡大不安をはじめとしたさまざまな「不安」を見ていきましょう。

新型コロナの感染不安はオミクロン株による第6波の減少を受けて減少に向かっています。第6波の拡大により、一時は7割まで増加していましたが10ptほどの減少をみせています(図表2)。一方で暮らし向きや家計の不安は依然と高いままで、感染不安ほどの回復はみせていません。「今後3ヵ月先」として尋ねている今後の家庭の暮らし向きについて、「今より悪くなる(14%)」はほとんど変化がありません。また、「家計の節約を心がけている(節約意識)」についても大きな動きはなく約6割の方があてはまるとしています。前回、節約意識に関しては経済や景気の回復がより強く影響を及ぼすため、新型コロナの収束とは異なる根深さがある、と書きましたが、新規感染者が減少傾向に向かう中、感染不安は大きく減少しましたが、先行きや節約意識に関してはほぼ同水準で推移しており、その根深さを証明する形となっています。

図表2

次に「飲食店での食事」や「テーマパークや繁華街・人が集まる場所への外出」、さらには「国内旅行」といった不特定多数の人との接触リスクが心配される場所への外出行動に関する不安ついてみてみましょう。感染不安の動きと呼応するように各項目ともに一気に減少に向かっています(図表3)。

沖縄が一足先にまん延防止等重点措置の解除に踏み切りましたが、これからの季節はお花見をはじめ、ゴールデンウィークと本格的な観光シーズンが始まります。感染不安の減少による行動・外出の意欲の芽生えは運輸や旅行業界にとっては期待を測る指標となるはずです。子どもへのワクチン接種が始まり、3回目のワクチン接種も進んでいます。そうした施策とともに、ここ数年厳しい状況が続く、業界にも光が差し込むことを願うばかりです。

図表3

4. コロナインパクトと生活者意識 ~時間の使い方・社会貢献・思いやりがキーワード

2020年4月に初めての緊急事態宣言が発令されてからもうすぐ2年になります。その間、長期の休校や外出自粛、在宅勤務やリモートワークの活用など、これまで経験したこともないような暮らしの変化を体験しました。コロナインパクトは生活者の意識や行動にどのような変化をもたらしたのでしょうか。

「新型コロナウィルスの影響を受けて、あなたの暮らしや意識・行動に変化はありましたか」と尋ねたところ、「時間を無駄にしないよう意識するようになった(20%)」が最も多くあげられました(図表4)。また、「仕事と私生活のバランスを意識するようになった(12%)」も高くなっていました。外出自粛や在宅勤務などにより、以前よりも家の中で過ごす時間が増え、自分あるいは家族と向き合う時間も長くなったように思います。そうした中、「時間の使い方」を視なおし、より有効な時間の使い方を考える機会も多かったのでは、と推測します。働き方に関しては、先のワークライフバランスのほかに、「副業」への関心も高まったようで、「副業の準備・検討を始めた(3%)」、「副業を始めた(2%)」という回答もみられました。この間、副業を容認あるいは推奨するように社内規定を変更した企業やリモートワークを加速させ、全国どこででも勤務可能とする企業など、新しい働き方に関するニュースがさまざまなメディアで取り上げられていました。生活者の意識の変化に共鳴するかのように、社会や企業の在り方も変化しているようです。

図表4

また、「SDGsに関する関心が高まった(15%)」、「エッセンシャルワーカーへの感謝が芽生えた・高まった(14%)」、「地元の飲食店や店舗への応援・支援を念頭にお金を使うようになった(13%)」、「ボランティアなど社会貢献への関心が高まった(6%)」など、「社会貢献」や他者への「感謝・気づかい」といった意識が高まったとする回答も多くなっていました。

昨今、さまざまなメディアで見聞きすることが多くなった「SDGs」。弊社が実施している「SDGs定点調査※3」でも、「SDGs」という言葉の認知率は8割に達し、2年間で約3倍になっており、ここ数年で言葉の認知や内容そのものの理解が飛躍的に増加していることがわかっています。数年前までは学校の授業で学習している若者やESG経営などの側面からビジネスマンの認知・理解も高かった傾向がありました。しかしながら、テレビをはじめとした各種メディアでの露出機会の増加などにより、男女問わず、また年代を問わず認知や理解も広がり、一般的な社会課題として認識・理解されるようになってきたようです(図表5)。

図表5

★関連記事 知るギャラリー 「SDGs認知率は8割、2年間で約3倍に(2022.2.9)」※3

5. 新しい働き方~自分のため・だれかのため~

コロナインパクトにより生活者の意識にもさまざまな変化が生まれています。先の章で触れた「時間の使い方」や「だれかのために」という他者への感謝や思いやりの意識は、社会貢献活動やボランティアへの関心の高まりや具体的な行動にもつながっているようです。そうした潮流において「仕事で身に着けたスキルや経験をだれかのために役立てたい」、という意識も強くなっているようです。

みなさんは「プロボノ」という言葉を見聞きしたことはありますか。プロボノとは「公共善のために」を意味するラテン語「Pro Bono Publico」を語源とする言葉で、社会的・公共的な目的のために、職業上のスキルや専門知識を活かして取り組むボランティア活動を意味しています。社会貢献意識やボランティア意識の高まりにより、だれかのために役に立ちたい・役立てたいという想いを形にできる取り組みとして注目も高まっており、国内の大手企業においても、社員のプロボノ活動への参加を推奨・支援する動きも出てきているようです。

弊社が実施した直近の調査では「プロボノ」という言葉の認知は14%でした。性・年代別に見てみると、男性の20・30代では4~5ポイントほど高くなっており認知の広がりを感じます。また、これまでプロボノ活動に参加したことがない方々にプロボノ活動を紹介する形で関心の芽生えを問うと、3割弱の人「が関心あり」と回答していました。特に10代においては男女ともに4割を超えており、高い関心を寄せていることがわかりました(図表6)。

図表6

コロナインパクトによって高まった、有意義な時間の使い方やワークライフバランスのとれた新しい働き方を志向する考え、社会貢献意識といった価値観と共鳴する部分も強いことから、「自らが仕事を通じて身に着けたスキルや経験をだれかのために役立てる。」といったことが実現できるプロボノ活動を通じて、有意義な時間の過ごし方を手に入れるとともに、新しいやりがいや生きがいをも手に入れるという生き方が注目されています。特にプロボノ活動の非経験者の中でも男女10代において関心が高いことは、以前、SDGsへの関心や取り組みが若年層から広がりだしたときのような、今後に向けた広がりや浸透を予感させるものです。

さて、コロナインパクトによって、みなさまの意識や行動にはどのような変化がありましたか。

コロナの上陸から2年が過ぎ、第6波が落ち着きを見せ始めた今、自分の生き方や暮らし方を視なおしてみる、よいタイミングなのかもしれません。

おわり

※1 インテージ 「2022年お花見に関するアンケート」 2022年3月実施
関連記事:「2022年のお花見はどうする?コロナ禍の春を愛でる」2022/3/17
https://gallery.intage.co.jp/ohanami2022/

※2 内閣府 景気ウォッチャー(DI ※ディフュージョン・インデックス)   
https://www5.cao.go.jp/keizai3/watcher/watcher_menu.html

※3 インテージ 「SDGsに関するアンケート」 2022年2月実施
関連記事:認知率は8割、2年間で約3倍に」2022/2/9
https://gallery.intage.co.jp/sdgs2022/


生活者研究センター概要

インテージの生活者理解の拠点として2020年8月3日に誕生。
長きにわたり蓄積している生活者の消費行動やメディアへの接触行動、さらには生活意識・価値観データなど膨大な情報を連携・横断して用いるとともに、社内の各領域におけるスペシャリストの知見を織り合わせることにより、生活者をより深く理解し、生活者を起点とする情報を発信・提供することを目的として設立された。また、お客様への直接的な貢献を目的として、共同研究や具体的なプロジェクトへの参画などにも積極的に取り組んでいく予定。


著者プロフィール

生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)プロフィール画像
生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)
1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

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