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2030年 医療・ヘルスケアはどうなる?~インテージ未来レポート シナリオ4

様々な社会課題がある中で、その解決手段として期待される各種データや先端技術の活用。
2030年の未来を考える~インテージ 未来レポート 序章でお伝えした通り、インテージグループでは、現状分析や先端技術動向を踏まえた未来予測と社会変化から、バックキャストで今後必要となる技術を検討する「インテージグループ未来レポート」を作成しました。

この記事では、このプロジェクトで描いた4つの未来シナリオのうち「医療・ヘルスケア」に関するシナリオと共に、その背景にある変化と技術動向について解説します。
2030年の医療・ヘルスケアはどのようになっているのでしょうか?想像してみたいと思います。

2030年の未来シナリオ~アップデートされた10年前の記憶

※「2030年の未来シナリオ」は、インテージグループR&Dセンターが想定したフィクションです。

2030年、今年還暦を迎える私は結婚が遅かったこともあり、一人息子は私立大学に入ったばかり。高額な授業料と住宅ローンの支払いが残っており、妻からは「健康に気を付けてまだまだ元気で働いてね」と釘を刺されている。

飛躍的な進歩を遂げたがん検診技術

1週間前、勤務先の会社が提携する病院から、がん検診のキャンセルが出たから早く受診できる、とのビデオメッセージがスマートウォッチに届いた。実は3年前からスマートフォンは使っていない。プロジェクションボタンを押せば、腕の表面に画面を投影でき、タッチ操作もできるスマートウォッチが普及したからだ。ビデオメッセージを見た後、続けてAIオペレーター相手に変更手続きを済ませた。

日本政府は、高齢化が進む中で社会保障費の増大を抑えるべく、徹底的なAI活用で医療における多くの業務を省人化した。時代の流れとは言え、AIオペレーターとのやりとりには一抹の寂しさを感じる。「昔の方が良かったな。いや、時代は進歩していると言うべきか」と独り言をつぶやいた後、自嘲気味に笑った。
がん検診当日、AIオペレーターで受付を済ませて検診室に入った。検診医に「どうかされましたか?」と声をかけられて、我に返った。「いや、すみません。今日初めて人と話したものですから(笑)」

AIとの“触れ合い”には馴染めない私だが、医療の進歩には驚かされる。特にがん検診は飛躍的な進歩を遂げた。約10年前に、1滴の血液中に含まれるマイクロRNAを用いた超早期診断技術が話題になったが、今では当たり前となった。実際、検診はすぐに終了。検診医から「今から採血します」と言われ、指から目薬1滴分の血液を採取されただけだ。「もう終了です。検診結果は約2時間後に出ますので、それまでは自由に過ごしてください」

カフェで休憩中、10年前の記憶が蘇った。2020年、新型コロナウイルスの感染が猛威を振るう中、胃カメラ検査で腫瘍性のポリープが発覚。がんの専門病院に通院して内視鏡検査と生検を行った結果、切除しないと良性か悪性の診断がつかないと言われ、入院して切除した。退院後、病理検査結果で良性腫瘍と判明し、安堵した記憶がある。
当時、辟易したのが、診断がつくまでの期間だ。発覚から最終診断がつくまで約半年。その間どれだけやきもきしたことか。誠実な主治医には感謝し、紹介状による情報共有もあったが、もっと医療情報が共有・連携されれば、同じような検査や診察を減らせるのでは、という非効率さが目立った。患者に寄り添った医療であってほしいと願った記憶がある。

2時間が経ち、結果を聞きに検診室に入った。「先ほどのマイクロRNAによる胃がん検査で気になる所見がありました。ステージ0かステージ1か分かりませんが、初期の胃がんの可能性があります」。そう聞いて一瞬、背筋が凍るような緊張感が走ったが、その後の説明を聞いて平静になった。「詳細は内視鏡検査をしないと分かりませんが、同意に基づいて拝見したあなたのPHR※と、過去の似た所見のPHRビックデータの解析結果によると、95%は内視鏡手術で根治可能です。当院は以前あなたが受診したがん専門病院と連携していますのでスムーズな治療が可能です」。 ※PHR:Personal Health Record(生涯電子カルテ)

ペイシェント・ジャーニー

検診から2週間後、かつて入院したがん専門病院を受診した。若手医師は簡単に自己紹介を済ませた後、早速診察を始めた。「10年前に当院を利用して頂き、ありがとうございます。今回、あなたのPHRや検診結果からごく早期の胃がんの可能性があるとの所見をふまえて、次の手順で検査や治療を進めたいと思います。今から説明しますが、よろしいでしょうか?」。部屋が少し暗くなり、大きなスクリーンにビジュアルフロー図が投影された。 

「当院への来訪は2回の予定です。1回目は内視鏡検査による病変場所の特定と生検です。2回目は手術入院です。入院期間は出血や穿孔の可能性があるので手術日を含めて2泊3日です。手術方法は生検の結果をふまえて決めますが、リンパ節転移の可能性は低いと思いますので、EMR(内視鏡的粘膜切除術)かESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)のいずれかでしょう。EMRとESDの違いを説明しますが、ここまでは大丈夫でしょうか?」
「はい、過去に経験がありますので」。その後、EMRとESDの違いをARで表示されたシミュレーションを例に説明された。私が感心したのは、常に患者が理解しているかを確認し、同意を得ながら、丁寧に説明することだ。「これがいわゆる患者に寄り添うペイシェント・ジャーニーに基づいた治療なのだろう」と納得させられた。

その後、医師の見立て通りに進み、内視鏡検査と手術入院は無事に終了した。病理検査でも病変を全て切除することができたことが分かり、今後は外来での経過観察となって一段落した。驚いたのは、検診受診から最終診断まで1.5カ月と短かったことだ。がんを告知された時は驚いたけど、10年前のやきもきした気持ちはなかった。医療技術の進歩に加え、PHRの活用やペイシェント・ジャーニーの浸透などで、日本の医療レベルは格段に上がった気がした。

AIオペレーターの笑顔

診察を終え、スマートウォッチを起動したら、2通のビデオメッセージが入っていた。1通は妻と息子から、もう1通はAIオペレーターからだ。順に開封する。
妻と息子からは「診断結果はどうだった?今日はパパのおつかれさま会をしましょう。帰りを待っています」。
AIオペレーターからは「今回の診察および治療データを大規模解析に使うことに同意頂ける場合は、サインしてください」。私がデジタル署名をすると、AIオペレーターは笑顔になった。「署名ありがとうございます。個人情報保護を約束した上で胃がん、内視鏡検査・手術セクションのデータ集計と解析に使います。貴重な経験を日本の胃がん予防・治療・ペイシェントジャーニーの向上に役立てることを誓います」
AIオペレーターとのやりとりも悪くないなと思った私は、家族が待つ家への帰路を急いだ。

医療・ヘルスケアを取り巻く動き

2030年、日本は前人未到の高齢化社会に突入します。その影響は大きく、社会保障費の増大と労働力不足による医療・介護人材の逼迫により、「国民皆保険」に象徴される、国民の誰もが安心して受けられる医療制度の持続可能性が問われるでしょう。人口減少で過疎が深刻化し、医療インフラが危機的状況に陥る自治体や地域も出るかもしれません。

インテージグループとしては、医療・ヘルスケア技術の一層の発展と、“患者起点”のデータ統合および連携、その高度活用によって、困難を乗り越えられる新たな社会基盤を構築することを提唱したいと考えています。

医療や介護、ヘルスケア分野など患者データを横断的に連携・統合

医療データの高度活用の方向性として、患者データのパーソナライゼーション(個別化)と、それを集約したビックデータの分析・活用の2つがあります。患者データのパーソナライゼーションは、医療に加えて介護、さらに日常的なヘルスケアデータを患者ごとに連携・統合したPHR(Personal Health Record)の構築によって行われます。

PHRの活用によって、患者は自らの健康状態や病気予兆を認識し、早期の検査や受診が可能となります。医療従事者もPHRを見ながら適切な治療法などを提示し、患者が望む“意思決定”を促せます。こうしたペイシェント・ジャーニーの可視化の恩恵は大きく、患者はもちろん、医療従事者や製薬企業などの患者に寄り添う医療提供の促進につながります。

PHRの個人情報を除いて集めたビックデータは、社会基盤としての活用が期待できます。例えば、先端医療の治療データとデジタルツイン技術を駆使することで、治療前に高度なシミュレーションを行い、より患者に合った治療選択やインフォームドコンセントを確立することができます。生体センサーから収集されるヘルスケアデータの分析に基づいた、未病者への生活習慣病やフレイル予防のための情報提供も進み、高齢でもより長く健康に暮らすための社会基盤となるでしょう。

データ基盤は製薬、医療器具、街づくりなど広い分野で活用

構築したデータ基盤が医療・製薬業界にどのような変化をもたらすのか、その影響を整理したのが下図です。製薬企業では患者リサーチの活性化に、医療機器・器具メーカーではヒューマンファクターズエンジニアリング(HFE)やユーザービリティエンジニアリング(UE)に配慮した製品作り、健康に暮らす街やインフラづくりなどに幅広く活用されます。このように、医療データ活用市場が活性化することで、多様な健康状態でも安心して暮らせるよう、企業のサポートが進むでしょう。

おわりに

ここまで、医療・ヘルスケア領域におけるデータ活用が進むことで、生活者の健康や関連業界がどのように変わっていくかを予測してきました。“患者起点”のデータ活用が医療や介護などの分野で横断的に進むことにより、患者に寄り添う医療、未病者に対する生活習慣病やフレイルの予防、終末期ケアまで寄与し、社会の基盤となっていくことが期待されます。

これまで5回に渡って、インテージグループが考える2030年の未来社会、生活者を取り巻く環境変化、そこにおけるデータや先端技術の活用について、ご紹介しました。
インテージグループでは、今回のレポートをベースに、果たすべき役割の検討を始めています。「高度なデータ活用」による未来づくりに貢献すべく、これからも研究・開発を進めていきますので、ご興味があれば是非お声がけください。


【インテージグループ未来レポートとは】
2030年の未来に向けた社会変化から取り組むべき課題を検討することを目的に、インテージグループR&Dセンターで描いた未来予測レポート。生活者、企業、街、医療の4領域を予測し、SFプロトタイピングの手法により、バックキャスティングで必要となる技術を描き、研究開発テーマとして検討を進めています。

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