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生活者インデックスデータ

暮らし先読み、後読み予報~生活リズムの予兆を<n=1>からみる(10)~「サラダチキン」とRF1「サラダベントウ」の差異とは~

新しい「全体最適」を探る

前回述べた「全体最適」と「部分最適」の話をもう少し掘り下げてみよう。「全体最適」という概念が大きく変わってきている、ということが、その一つのファクトファインティングである。一つの食シーンや食卓の構成が、過去から考えられてきているいわゆる定型、典型というものからズレていっているということだ。和風、中華風、洋風といった構成バランス、あるいは主菜や副菜、汁物、そして主食としてのごはんやパンがバランスよく組み立てられているといった定型がなくなっていっている。

一汁三菜病やメインディッシュ病という言い方を私はよくするが、これが崩壊しているのだ。この手の旧来型のバランスが少なくなってきており、そこに新しいバランスが暮らしの中で生みだされているということだ。バランスを整えなくてはならないといった脅迫感と簡便・時短といったキーワードが日によってなのか、食シーンによってなのかはさまざまであるが、両立しているのだ。既に暮らしの方は、あっさりと旧来型から進化している。そんな例として麻婆豆腐とナンの登場するシーンを前回は紹介した。

そしてその新しい「全体最適」の一つの解としての「お弁当」やおにぎりというものがもっている、暮らしの中での価値を覗き込んでみた。さらにその積極的な解答の一つの例として、RF1という店舗が売っているサラダ弁当風というアイテムを挙げてみたりした。

「玄米ロール入りsaladbento」の価値

この写真で紹介しているのがそのRF1のサラダ弁当風である。

2人の子供がいる女性のランチシーンに登場したものだ。この日は在宅ワークであった彼女が、昼休みに買い物などの用事で駅まで出かけたついでにゲットしてきたものだ。子供たちは学校に行っており、朝からのリモートワークも思った以上にはかどり、春風を受けながらハナミズキの並木の下を駅までをママチャリで往復。「気分がよい」し、自分へのごほうびもかねて、今日のランチはこれにしたのだ。商品名は「玄米ロール入30品目saladbento」1,100円、消費税を入れると1,200円近い出費となるが、この日の気分と、この商品の持つ価値を考えるとスイッチは即座にオンだった。

このRF1のランチ弁当に表象されている「全体最適」からは学ぶべきことが多い。30品目という素材の多様性とバラエティのバランスの「全体最適」が最大の価値である。こんなこと逆立ちしても自力で整えることなどできない相談だ。じっくりみるとよくわかるが、いわゆるメインディッシュがない。あえていえばパストラミビーフサラダがそれにあたるともいえるが、彼女にとってそれがメインだからということが選択動機ではなかった。肉なのか魚なのかといった主菜がスイッチのありかではないのだ。鶏の唐揚げ風もあり、春巻きもありといった点でいえば、どれもがメインスイッチになりうるものだが、主菜の顔つきもしていないし、量目の多さという姿もとっていない。玄米ロールといったアイテムには、ごはんものとして主食という役割があるともいえるが、それも「全体最適」の一つのパーツに過ぎないといえる。

彼女の中では、ひじきと豆の煮物風が一番食欲をそそったそうである。もう一つはジャガイモと大根が期待通りのおいしさだったという。RF1のジャガイモはおいしいという体験価値が蓄積されているのだ。

実は私もこの商品は時折食べる好物であるが、十分お腹いっぱいにもなるし、いわゆる味つけ、味覚バラエティにも富んでいるのだ。ひじきは和風であり、春巻きはエスニックだし、鶏唐はややピリッとしているし、パストラミビーフサラダのドレッシングはさすがRF1と思わせるし、ジャガイモは絶妙な甘みが効いている。味覚、味わいの「全体最適」という点も、いわゆる従来の定型を崩しきっている。

これらの要素は、いわゆるカフェプレート的な食べ方にも、そして「お弁当」にも共通する、新しい「全体最適」を生みだしている生活文脈だということになる。それぞれのメニューやアイテムが持つ「部分最適」の因子が消え去り、全体としてのおいしさと満足感に至りつくことになる。

「部分最適」としてのタンパク質

もちろんこんな「全体最適」がすべての食シーンで実現されている訳ではない。できればこうありたいという欲求が生みだしている、新しい定型の予兆なのである。一方で、「部分最適」ということが、食べることやそのシーンでの選択のスイッチを押すことの方が多いともいえる。次に紹介するのは、この「部分最適」の極致のような選択シーンである。

これは60代になったいわゆるシニア男性の1日の食の連続性を追ったものである。中学生の子供のいる3人家族であり、いわゆる専門技術職としての個人事業者である。その意味で、サービス業特有の、自分のスケジュールで食シーンが選択できないパターンである。時間がたまたま空いたところでなんとかお腹を充たす、という生活文脈にならざるをえない。

朝食とかランチといったタイミングも成立しないことが多く、1回目、2回目、3回目といった分割食になったり、一歩間違うとこれらのアイテムが結局夕方にまとめ食いされたりすることもざらに出てくるのだ。

ミックスサラダのパック、ゆで卵、ヨーグルト、サラダチキン、そしてプロテインバーが、この日の夜になるまでの食シーンを構成することになったアイテム群である。これらのアイテムはほぼルーティンのようになっているという。この日には出現していないが、これらにバナナ1本やしらすおにぎりなどが追加されることが多い。

これらのアイテムがランダムに口に入れられるということが、食シーンの実態といっていい。組み合わせや食べあわせ、あるいは味覚ミックスということも欠如している。いわゆる「全体最適」といった欲求も実態もどこにもないといっていい。

生活文脈からみる「全体最適」

「部分最適」という概念しかない、といえるこれらのアイテムに共通していることが一つある。栄養素という因子が、この「部分最適」のメインスイッチになっているということだ。たとえばゆで卵というアイテムは、卵というたんぱく質の摂取をワンハンドでできるという効果が切り札だといっていい。たんぱく質を摂取するということで、同じ卵を食べるにしても、プレートに盛られたオムレツを食べるということではないのだ。サラダチキンにしても同じようなことがいえる。

この日には登場しなかったけれど、バナナ1本やミックスサラダは、野菜、とりわけビタミン、植物繊維、ミネラルなどの摂取を、より時短に簡略に可能である、ということがポイントなのである。

「部分最適」という暮らしの中での志向を支えているのは、栄養素という因子にまで分解することができる。別のいい方をすれば、健康志向に適合した型で販売されている、様々な栄養食品、栄養強化型食品は、この「部分最適」という価値にのみフィットしたものだということになる。食にかかわる「全体最適」という欲求や価値は全く消去されているといっていい。1日の食は「部分最適」のランダムな蓄積、累積によってのみ形成されているのだ。

そして仕事が終わり、自宅に帰っての遅めの夕食は逆に「全体最適」の定型になる。

この彼の一日の暮らしの文脈をたどることにより、「部分最適」と「全体最適」が複合化されることで、一日の食が成立していることがわかる。これらのすべての流れによって、彼にとっての「全体最適」が結果成り立っているのだ。生活文脈をたどることによってしか、「全体最適」、「部分最適」の実態をとらえることはできないといえる。

著者プロフィール

マーケティングプロデューサー 辻中 俊樹(つじなか としき)プロフィール画像
マーケティングプロデューサー 辻中 俊樹(つじなか としき)
青山学院大学文学部卒。日本能率協会などで雑誌編集者を経て、マーケティングプロデューサーとして現在に至る。
暮らし探索のための生活日記調査を開発、<n=1>という定性アプローチを得意とする。
インテージクオリスが運営するYouTube”Marke-Tipsちゃんねる”でも、
生活者視点、n=1視点での気づきを語っている。
代表的な著作としては、
「団塊ジュニア――15世代白書」(誠文堂新光社) 
「母系消費」(同友館)
「団塊が電車を降りる日」(東急エージェンシー)
「マーケティングの嘘」(新潮新書)
など編著書は多数。

青山学院大学文学部卒。日本能率協会などで雑誌編集者を経て、マーケティングプロデューサーとして現在に至る。
暮らし探索のための生活日記調査を開発、<n=1>という定性アプローチを得意とする。
インテージクオリスが運営するYouTube”Marke-Tipsちゃんねる”でも、
生活者視点、n=1視点での気づきを語っている。
代表的な著作としては、
「団塊ジュニア――15世代白書」(誠文堂新光社) 
「母系消費」(同友館)
「団塊が電車を降りる日」(東急エージェンシー)
「マーケティングの嘘」(新潮新書)
など編著書は多数。

Marke-TipsちゃんねるURL:https://www.youtube.com/channel/UCmAKND92heGN-InhC0sp7Kw

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