暮らし先読み、後読み予報~生活リズムの予兆を<n=1>からみる(15)~「あじさいの花」と「6月の鍋」が意味すること~
梅雨だからといっても・・・。
今はちょうど梅雨の真最中である。これをお読みになるのは7月の前半になっているので、かもすると梅雨も明けている可能性も高そうだ。例年通りということであれば長雨続きの中、つかの間の晴れの日はムシムシ暑くて“うんざり気分”だろう。しかし、日々はそんな単純には過ぎてはいかないものだ。
予想とは異なって「梅雨晴れ」がやってきたりする。当然洗濯スイッチが押され、青空の下をママチャリでコインランドリーに向かって行くことになったりする。ムシムシ暑くてという表現をしたけれど、実はそうでもないことも多々ある。「梅雨寒」ということで、小雨や曇り空を見上げながら「ヒンヤリするなあ」と、もう仕舞っておいたヒートテックのインナーを着てみたりすることもある。
また、天気が安定しないけれど、夜明けから午前中の早めの時間だけ青空が広がってくれることもある。すぐにどんよりした梅雨空が戻ってくるのだが、朝だけは快適だったりする。夏至の前後なので、もう午前4時頃には明るくなっている。この日はもう起き上がって活動を開始することになる。仕事モードに入る前に、運動がてら近くを散歩してみたりする。
6時前には、この日の第一食目を口に入れたりする時も普通にあるだろう。こんな時には何を食べたくなるのだろうか。散歩の途中で見た「あじさいの花」が心に残り、何かの気持ちスイッチを押しているかもしれないのだ。
オケージョンという構成要素
こんな気ままな自然の動きが波及して“気持ちスイッチ”や“行動スイッチ”が押されることがある。これが「生活文脈」の変化を形づくることになるのだ。こんなスイッチの入り方につながる要素のことを、私は【オケージョン】という言い方をしている。こんなオケージョンという要素も、「生活文脈」を構成している一つの鍵となる因子と言っていい。
前回までで整理してきた時間軸と空間軸という「生活文脈」を紐解くための因子に加え、このオケージョンという要素が解析のための一つのメソッドとなる。時間も空間も、できるだけその連続性・連鎖でみていくことと同様に、このオケージョンについても可能な限り連続性・連鎖でみていくことが必要だということは言うまでもない。
時間軸(Time)や空間軸(Place)にこのオケージョン(Occasion)を加えて「生活文脈」を紐解いていくための因子はTPOということになる。つまりTPOの設定こそがメソッドといっていい。TPOというとずい分当たり前のことを言っているにすぎないと思われるかもしれないが、このTPOを使いこなしていくことが、「生活文脈」から新しい視点を発見・把握していくための、まずは第一のアプローチとして繰り返していくといいと思う。
そこで、次に紹介するのは30代男性の暮らしのヒトコマである。日頃から仕事柄朝は早いのだが、この日は快晴の夜明けにスイッチを押されて、4時過ぎには起きることになった。
この彼は自営業である。平日なのだがこの日は休みで、普段ならば寝坊しているパターンだ。しかし、早起きして奥さんとワンちゃんを連れて散歩へ。きれいに咲いているあじさいの花を見て、日常ならばあり得ない様々な気分や妄想が広がった。夏至の頃の明るい早朝、あまり気にも止めないあじさいの花が気持ちのスイッチを入れることになったのだ。これがオケージョンということから覗きこむ「生活文脈」ということになる。
「あじさいの花」とわらび餅
まだまだ早朝に帰宅した彼が、まず口にしたのが強炭酸天然水とわらび餅であった。
きなこと黒蜜の甘さに満足することになるが、梅雨時に訪れることになったつかの間の青空とあじさいの花からの気持ちの連鎖であったといえる。
運よく午前中は日射しがもってくれたので、仕事用に使っているワゴンの洗車をして、そのままの元気モードのスイッチを維持しつつ、晴れているうちに「早めに昼ご飯を食べようぜ」というノリで、午前11時前には早い昼ごはんとなった。
今年初めての素麵をいただくことになり、小あじの南蛮漬けが「待ってました」とばかりにお伴をしてくれた。これも冷凍庫が住まいとなっている残り物、作り置きといった方がいいだろうか。
彼の気持ち全開モードはここまで。 午後からは予報通り雲が広がり小雨もパラついてきた。昼過ぎからは何もする気がなくなり、たっぷりと昼寝をすることになった。これがオケージョンという構成要素によって、形作られることになった「生活文脈」の一つなのである。
この連載の第11回で『「ハナミズキ」が教えてくれる「生活文脈」』ということを述べた。この時には主として生活動線の流れ、主として空間軸の連鎖の中での「生活文脈」を紐解いた。
実はここにもオケージョンはあった。 空間移動の中での文脈としてRF1のサラダベントウに到達したことを紹介したが、この動線の中で彼女の視野に入ることになったハナミズキ、モッコウバラ、藤の花をとりあげた。RF1のサラダベントウの持つ健康価値という側面も当然の気持ちスイッチの価値ではあるが、このオケージョンには、晩春の花々を見上げながら、自然の持つ旬の感覚を味わっていたといえる。モノとしてのハナミズキやモッコウバラを食べる訳ではないが、自然の持つ恵みというものを共感しているということが、RF1に相通ずることになっているのだ。
この気持ちスイッチがあってこそ、普段では彼女にとっては選ばれにくい価格のRF1がゲットされることになったのである。RF1には「素材に恋するそうざい」というキャッチフレーズがあるが、自然の持つ素材としての花々を感じとることで共感されている。
ハナミズキもモッコウバラも、1年の中でこの時期だけに姿を現してくれる旬というものである。オケージョンという因子は、このような形で「生活文脈」を構成することになるのだ。
「6月の鍋」と「梅雨寒」
先ほど紹介した30代男性の奥さんから送られてきた写真がある。
これはヒメシャラという花である。この花が青空に映えていることからインスパイアされて、その日の夜は2種類のパスタを食べることになったそうだ。
トマトソースもクリームソースも、この花の彩りから感じとったものだったという。栄養素や空腹感などといったロジカルなことよりも、【色】が気持ちのスイッチを押したのである。「生活文脈」にはこんなオケージョンとの結びつきが多々でてくる。
さて、「梅雨晴れ」というありがたいスイッチもある一方、「梅雨寒」という気持ち的にはあまりありがたくないオケージョンもたびたび到来することになる。
とりわけ5月下旬から6月中旬あたりには、こんなオケージョン変化が起こる。しまいこんだヒートテックのインナーが引っぱりだされたり、フリースを着たりするのもこんな時だ。
とはいえ「梅雨寒」とはいっても、最高気温が20度を下まわるだけで17~18度はあるのだ。春の初めの頃の最高気温よりは全然高いのだが、寒いと感じるオケージョンは前日比での【体感差】なのである。
寒い時には鍋ということで、5、6月には実は鍋がよく登場する。
梅雨だからムシムシ雨降りといった単純な類型で暮らしをみることはできない。朝、昼、夜の三度の類型で暮らしの食をみることができないのと同様である。
オケージョンという鍵をさしこむことで「生活文脈」という扉が開きやすくなる。
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