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新しいマーケティングのすすめ(35)

「日本の広告費と広告主のメディア選択」

株式会社電通の「2023年 日本の広告費」

マーケターで、広告・宣伝・コミュニケーション領域の仕事をされている方は、株式会社電通さまが発表する「日本の広告費」は、気になるのではないでしょうか。2024年も、2月27日に「2023年 日本の広告費」が発表されました。

私も事業会社でマーケティングを行っている時には、社内の会議で「日本の広告費」の資料を引用して、自社のデジタル領域のコミュニケーションについて、考察を述べていました。そして、結果的にデジタル領域のコミュニケーション予算の確保を推進してきました。

多くのマーケターは「日本の広告費」のデータを参考にして、自社の広告予算の媒体比率の設計の参考にしてきたのでしょう。今回は、この参考にするという行動を続けて良いのかを、少し冷静に考えてみたいと思います。

参考にすればするほど、インターネット広告費が伸びる可能性

2010年前後から、「インターネット広告費」はマスコミの媒体広告費を抜くのかという点が、「日本の広告費」を確認するときの注目すべき点になっていました。そして、2021年にインターネット広告(2兆7,052億円)がマスコミ4媒体9広告(2兆4,538億円)を初めて上回り、さらにインターネット広告費は伸びています。

ところで、この日本の広告費は、気象の気温や、降水量のような自然現象のデータではなく、私たち、マーケティング関係者のビジネスの結果のデータです。多くのマーケターは、日本のインターネット広告費が伸びた結果を確認して、自社の広告予算のインターネット広告費の割合を増やそうとするでしょう。この自社のインターネット広告費を増加させる明確な根拠があれば問題は少ないのですが、単純にマーケターが日本の広告費のインターネット広告費が増えたから自社のインターネット広告費を増やす、という判断をしているのであれば、しばらく日本全体のインターネット広告費が増えてしまう可能性があります。このことは、事業会社のマーケティング担当者の判断として適切なのでしょうか?

「日本の広告費」と自社の振り返り

前回の知るギャラリーの「新しいマーケティングのすすめ(34)」では、メディアの指標について再定義することを考えました。メディアの指標とは、すこし客観的な言い換えをすると、マーケティングの価値と効率性を確認するものです。

多くの人に伝える、安価に伝える、事業全体を赤字にしない、などの目的で指標を使うことが多いでしょう。確かに、この「安価」とか「効率的」というのは、インターネットメディアの一つの特徴だと言えるでしょう。

ところで、あなたの会社はどのメディア、媒体の設計が得意ですか?実は、「日本の広告費」の数値には、マーケターが「取り組みに苦労した時間」、そして「そのメディアを活用したマーケティングの成功割合」は、現れていないのです。

例えば、商品の紹介のWebページを作るときに、誰に、どのようなコンテンツを伝えるのかという企画を検討します。この企画作成は、マーケターの仕事でしょう。企画が決まってから、広告代理店や制作会社にオリエンをおこないます。ここから先の費用は、「日本の広告費」に見積もられていますが、社内の企画検討は費用化されていないのでしょう。

あなたの会社では、どの広告の企画、どのメディア、またはどのような形式を得意としていますか?

さらなる問題があります。広告の成否、もう少し丁寧に考えると、広告の売り上げの寄与率は、どのようになっているのでしょうか?この広告の寄与については、例えば、インテージシングルソースパネルのような、「情報接触」と「消費行動(購買・意識)」の関係性を捉えるパネルが調査会社から提供されていますが、皆さんの会社では、継続的に活用しているのでしょうか?

つまり、「日本の広告費」は、日本全体の傾向を知るためには重要な指標ですが、それ以上に重要なのは、「自社のコミュニケーションについて振り返り」なのです。

自社のコミュニケーション設計方針について明確にしよう

私達は、インターネットをマーケティングのコミュニケーションに活用し始めて、そろそろ30年が経過します。まず自分たちの会社が、インターネットのメディアが得意なのか、不得意なのかを素直に振り返りませんか?

不得意だから、みんなで勉強しよう。不得意だから、得意な人を採用しよう。そして、得意になったのであれば良いのですが、不得意なのであれば、そろそろ「不得意」を認める時期かもしれません。

実は、「不得意」な仕事は、効率的ではありません。そして、不得意があるということは、得意なメディアもあるはずです。メディアの種類は今後も多様になります。その多様さに対応する前に、まず自社のコミュニケーション設計方針を議論することが重要かもしれません。

マーケティングの4Pのプロモーションは重要な仕事ですが、そのプロモーションという仕事自体を3Cで整理する。特に、自社の整理をきちんと行うことを忘れてはいけないでしょう。

著者プロフィール

株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充プロフィール画像
株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充
1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

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