SDGsは生活者の関心事へ
「SDGs認知率は8割、2年間で約3倍に」でも紹介したように、生活者のSDGsに対する認知はこの数年で急激に高まっています。この結果、生活者の日々の行動や商品選択行動はどの程度影響を受けているのでしょうか。影響について調査し、企業に求められる対応のヒントを探りました。
SDGsの認知の拡大で、「サステナブルな行動」をする人は増えた?
インテージでは、サステナブルな行動に対する質問(10問)を用いてアンケート回答者を行動レベルによって4層(Super、High、Moderate、Low)に分類し、その実態を分析しています。(以下、この区分を「サステナブルセグメント」と表記)。
一年前の2020年12月調査と、2021年12月調査の結果を比較すると、サステナブルな行動を先導して行うSuper層が0.7ポイント増加(4.6%→5.3%)、サステナブルな行動を積極的に行うHigh層が3.4ポイント増加(25.1%→28.5%)しています。
図表1
世代別で見てみたところ、年配層と若年層での増加幅が大きく、男性60~69歳のHigh層が6.3ポイント、女性60~69歳のHigh層が5.2ポイント、男性20~29歳のHigh層が3.8ポイント、女性20~29歳のHigh層が3.8ポイント増加していました。
SDGsという言葉の認知率が約8割に達し、内容理解や共感もさらに進むことが想定されることから、今後更にサステナブルな行動を進んで行うSuper層、High層の増加が見込まれます。
「サステナブルな行動」に見る世代間の差
前述の「サステナブルセグメント」に用いた質問に対する回答結果から、世代間に行動の差があることが見えてきました。図表2は、全体での回答率の高い順に質問項目を並べたものです。世代別の回答結果には2つのパターンがあることがわかります。
◆年配者が高く、若年層が低い行動 ※1
「使い捨ての割り箸やプラスチックスプーン、フォークなど、不要なものは断る」「食材は地元産のものを消費する」「食品添加物や合成保存料を使用していない食品を選ぶ」
◆U字型の傾向が見られた行動(若年層・年配層で高く、ミドル層では低い) ※2
男性:「リサイクル素材を使って作られた商品を選ぶ」「エコマークがついた商品を選ぶ」「化学物質の入っていない、水を汚さない成分の洗剤を選ぶ」
女性:「肌、髪のケア用品、化粧品はオーガニック製品を選ぶ」「社会的格差の解消を助ける、フェアトレード商品を選ぶ」
※1 年配者が高く、若年層が低い行動 :10~20代に比べ、50~60代が高い
※2 U字型傾向の行動 :10~20代、50~60代に比べ、30・40代が低い
図表2
「食材は地元産のものを選ぶ」「添加物や保存料を使わない食品を選ぶ」といった行動は、自身の健康にも影響するため、年を重ねて健康意識が高まるにつれて増えていくと考えられます。また、「割り箸やスプーンを断る」といった社会をよくすることへの繋がりが見えやすい行動は、年を重ねるほど実践する人が増えるようです。
一方、U字型の傾向にある行動の背景として、若年層には、学校教育の影響や「今後の社会を自分達が変えなければいけない」という思いがあること、年配層には、時間的金銭的余裕があることが考えられます。
SDGsに取り組む企業に対する生活者の態度は?
図表3はSDGsという言葉を認知している人を対象に、「あなたは、SDGsについてどのように思いますか」と質問した結果です。関心の有無や、関連する行動に対する意欲を聞いています。
認知者の約2人に1人が、企業の社会貢献活動に注目し、SDGsに取り組む企業を応援したいと回答しています。また、SDGsに対応した商品/サービスを選択したいと回答した人も45.1%に上り、SDGsが生活者と企業との関係性構築や、マーケティング活動と切り離せないテーマになって来ていることがわかります。今後の企業活動において、SDGs関連への取組みの必要性はますます増加するものと思われます。
図表3
世代別に見ると若年層と年配層が共に高く、ミドル層で低い“Uの字型傾向”が見られました。特に男性では40代が低く、 “Vの字型傾向“ともいうべき結果となりました。(図表4)
図表4
このUの字傾向、Vの字型傾向の背景としては、若年層は学校教育を通して、高年齢層はテレビを通してSDGsに関する情報に触れる機会が多く、自分ごと化による危機感から行動意欲ににつながっているのに対し、ミドル層は仕事や家庭面で忙しく、SDGsに関する情報に触れる機会が少ないことが考えられます。
また、今回の調査でどの程度生活にゆとりがあるのかを聴取したところ、図表4でVの字型の底となっていた40代男性は、“とてもゆとりがある”“まあゆとりがある”と答えた人の合計が、「時間のゆとり」で全体差-9.7ポイント、「心のゆとり」で全体差-7.8ポイント、「お金のゆとり」で全体差-4.6ポイントと、全体平均と比べて特にゆとりがない世代となっていました。ライフステージで異なる精神的・金銭的・時間的余裕の違いが、SDGsに対する関心や行動意欲に影響しているようです。
メディアで取り上げられる機会が増え、SDGsが生活者の関心事となってきている今、企業としては、投資家向け中心だったESG活動を、商品やサービスを介し生活者へ向けてSDGsの取り組みを発信し貢献するステージへと変革する時期を迎えているのではないでしょうか。
またSDGs関連の商品・サービス戦略の立案に当たっては、生活者をひと括りにせず、世代別のマーケティング戦略が必要といえそうです。
“サステナブルな行動”の実践状況、商品の選択基準の変化など、詳細なレポートを公開しています。
調査概要
<2021年12月調査>
調査地域:全国
対象者条件:15~69 歳の男女
標本抽出方法:弊社「マイティモニター」より抽出しアンケート配信
標本サイズ:n=10,003
調査実施時期: 2021年12月14日~12月16日
<2020年12月調査>
調査地域:全国
対象者条件:15~69 歳の男女
標本抽出方法:弊社「キューモニター」より抽出しアンケート配信
ウェイトバック:性年代構成比を、2015年度実施国勢調査データをベースに、人口動態などを加味した2020年度の構成比にあわせてウェイトバック
標本サイズ:n=10,572
調査実施時期: 2020年12月4 日~12月7日
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