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成熟期を迎えたSDGs ~世代によって異なるSDGs17目標の捉え方~

インテージが2020年から継続的に実施しているSDGsに関する自主調査。「SDGs」という言葉が浸透する中、商品やサービスを選ぶ視点にはどの程度影響が見られるか。これまでの自主調査から、最新動向をお届けする。
また、今回は世代間の差にも着目し、マーケティングの在り方に関しても考察する。

1. SDGsの理解はどこまで進んだのか?

図表1はSDGsの理解浸透状況を経年で比較したものである。「SDGs」という言葉自体の認知率*は2020年から2022年にかけて毎年大幅に伸びていたものの、2023年12月には84.6%、最新(2024年12月)には82.8%であり、大きく数値の変化はなく微減となっている。

図表1

SDGsの理解浸透状況(2020年1月~2024年12月)

一方で「SDGsの内容を知っている」人は17.7%と前回(13.5%)から4.2ポイント増加しており、SDGsに対する認知の広がりは高止まりしつつも、内容まで理解している人は増加している。

また世代別にみると(図表2)、15~29歳では「SDGsの内容を知っている」人が32.0%を占めており学校教育の影響もあり、他の世代より高い結果となった。今後も若年層を中心にSDGsの内容理解がさらに進むと見られる。

*認知率:SDGsについて「内容を知っている」「内容をある程度知っている」「言葉は聞いたことがあるが、内容は知らない」計

図表2

世代別SDGs理解浸透状況(2024年12月)

2. 「優先的に取り組むSDGs17の目標」世代間の差は?

次に、「SDGsで優先的に取り組むべき目標」への意識がこの4年間でどのように変化したのかを見てみる。図表3は、SDGsの17の目標の中から優先的に取り組むべきだと思う順に3つを選択してもらい、足し上げた結果である。

図表3

SDGs17の目標の中で優先的に取り組むべきと思うもの(TOP10)(2023年1月~2024年12月)

ウクライナ侵攻やガザ地区での紛争などを背景に2023年12月にはTOPであった「平和と公正をすべての人に」は2024年12月では2位となった。過去3年間のTOP3を確認すると「すべての人に健康と福祉を」「平和と公正をすべての人に」「気候変動に具体的な対策を」が共通して選ばれており、この3つの目標が世相により順位変動する様子がうかがえる。

このSDGs17の目標の順位を世代別に集計した結果が図表4である。
「気候変動に具体的な対策を」は15~29歳では9位、30~49歳では4位、50~69歳では1位と世代が上がるごとに上昇している。逆に「働きがいも 経済成長も」では15~29歳が4位、30~49歳では6位、50~69歳では12位であり、世代が上がるにつれ順位が下がっている。 今の生活を重視する若年層では「働きがいも 経済成長も」が上位に挙がり、50歳~69歳では、今後の生活や、次の世代に対する心配も含め「気候変動に具体的な対策を」を選択している人が増加していると思われる。世代ごとの背景からSDGs17の目標に対して優先的に取り組む順位が異なっていることが分かる。

図表4

世代別SDGs17の目標の中で優先的に取り組むべきと思うもの(TOP10)(2024年12月)

3. サステナブルな行動は増えたのか?

では、SDGs17の目標に向かって生活者はどのようなサステナブルな行動をしているのか。インテージでは、その行動の度合をSuper(サステナブルな行動を進んで行い他者へも協力を求める)~Low(サステナブルな意識は低め)の4層に区分した「サステナブルセグメント」を作成している。
※サステナブルセグメントの詳細は「サステナブルな視点をビジネス課題の解決に活かす 」をご覧いただきたい。
このセグメントの構成比の変化を示したのが(図表5)である。

図表5

「サステナブルセグメント」の構成推移(2020年12月~2024年12月)

2021年12月以降、サステナブルセグメントの構成比には大きな変化はない。サステナブルな行動に進んで取り組むSuper層(S)+High層(H)は、2021年12月には33.8%を占めたが、その後減少傾向であり、2024年12月では30.4%に留まった。コロナ禍で高まった社会や環境への意識が徐々に希薄になっていることが影響しているのではないだろうか。

また世代別にサステナブルセグメントの構成を確認すると(図表6)、男女共にU字型の傾向がみられた。サステナブル行動は、男女若年層(15~29歳)と、男性60代、女性50~60代で高くなる傾向にある。子育て世代である30~40代ではサステナブル行動が減少している。生活の繁忙とサステナブルな行動に関係性が見られるのではなかろうか、行動においても世代間の差があることが分かった。

図表6

男女年代別「サステナブルセグメント」構成比(2024年12月)

4. 「社会」or「自分」どちらのメリットで商品選択するか?

多くの生活者がSDGsと言う言葉の認知や内容理解を深めている中、商品やサービスを選ぶ際に「よりよい社会や環境の実現」を重視する人はどの程度いるのだろうか。
カテゴリー別に「よりよい社会や環境の実現」と「自分へのメリット」のどちらを重視するかを調べたところ、「よりよい社会や環境の実現」が約1割、「よりよい社会や環境の実現と自分へのメリットの両立」が約2割、「自分へのメリット」が約7割となった(図表7)。

図表7

カテゴリー別商品・サービス選定時の重視度(2024年12月)

「日用品(消耗品)」と「車」、「住宅」では、商品選択において「よりよい社会や環境の実現」を意識している生活者が約4割と、高めであることが分かる。
「車」ではハイブリッド車や、EV車の占有率が上昇している。エネルギー費用高騰による省エネ効果 = “自分へのメリット” と、地球温暖化の防止 = “社会・環境へのメリット”が両立している。
「住宅」では、住宅の高気密高断熱化や、ソーラーパネル、蓄電池の設置が進んでいる。光熱費の削減 = “自分へのメリット”と、地球温暖化対策 = “社会・環境へのメリット”が両立している。
このように”自分へのメリット“ と “社会・環境へのメリット”が共に実感できるカテゴリーから、商品、サービスを介したSDGsへの取り組みが進んで行くのではないだろうか。

5. 生活者はSDGsに取り組む企業を応援するのか?

(図表8)は「SDGs」という言葉を認知している人に対して、SDGsへの関心や、取り組む企業・関連商品・サービスへの意識を聴取した過去3年間の結果である。
最新の2024年12月の結果を2023年12月と比較すると「取り組む企業を応援したい」が2.4ポイント減、「SDGs関連商品・サービスを購入(利用)したい」が1.3ポイント減であり、それぞれ微減傾向となった。

図表8

SDGsについてどのように思うか(TOP2:そう思う+まあそう思う)(2022年12月~2024年12月)

これを世代別に確認したのが(図表9)である。15~29歳では「取り組む企業を応援したい」は58.0%、同じく30~49歳では45.4%、50~69歳では46.7%であり、SDGsに関して内容理解が進む若年層(15~29歳)の約6割が、SDGsに取り組む企業に対して応援したいと考えている。
「SDGs関連商品・サービスを購入(利用)したい」に関しても、15~29歳が50.1%、30~49歳が38.8%、50~69歳が40.9%となった。

図表9

世代別SDGsについてどのように思うか(TOP2:そう思うプラスまあそう思う)(2024年12月)

若年層(15~29歳)は、SDGsに関する認知や内容理解が高いことから、企業の社会や環境に対する対応に関心を持ち、対応する企業の商品やサービスを選択する傾向にあると言える。若年層に対するブランド構築や、マーケティングにおいては、自社のSDGsやサステナブルの取り組みを正しく告知して行くことが大事となる。

6. まとめ

ここ数年でSDGsは広く認知されるようになった。生活者全体で見るとSDGsの認知や、サステナブルな行動の伸びは今後も大きな変化がないことが予測される。
しかし、世代別にみると特に若年層(15~29歳)の内容認知や、企業への応援、商品購入意向の高さが見えてくる。

若年層(15~29歳)は、学校にて正しくSDGs17の目標や地球の環境危機を学んでいる。またSNSを通じて環境や社会課題に関する話題が多く語られている。これら情報を見聞きすることにより、彼らにとっては環境を意識したサステナブルな行動が根付いているからこそ、SDGsに対応した商品やサービスを選択する行動に繋がっていると考えられる。

相対的には頭打ちとなったとも見えるSDGsではあるが、今後社会の中心となる若年層の意識や行動が高まることにより、SDGsやサステナブルな考え方、購買行動に拡がりを見せるのではないだろうか。
また今後の企業のマーケティングにおいては、これらの考え方に沿わない商品やサービスは、彼らから支持されない可能性が高まることを想定し、SDGsやサステナブルな考え方を取り入れた商品やサービス開発、企業メッセージの発信が引き続き重要になっていくのではなかろうか。


※本記事でご紹介しきれていないデータ・チャートは、無料レポートをダウンロードしてご確認ください 。


調査地域:日本全国
対象者条件:15~69歳男女個人
標本抽出方法:マイティモニターより適格者を抽出
標本サイズ:スクリーニングn=10576s  本調査n=3629 
ウエイトバック集計:なし※
※国勢調査にもとづき性別・年代・地域を母集団構成に合わせて回収
調査実施時期: 2024年12月20日(金)~2024年12月23日(月)

著者プロフィール

濱 賢太郎(はま けんたろう)プロフィール画像
濱 賢太郎(はま けんたろう)
株式会社インテージ マーケティングパートナー第2本部 営業推進部 
未来共創センター長
・大学卒業後家電メーカーへ就職、ワープロ、FAX、携帯電話、通信映像端末、
太陽光発電の商品企画を担当。
・2013年株式会社インテージに入社し、国内外の生活者リサーチ、
コンサルティングに従事。
・2017年「未来共創センター」を設立。
企業との共創による新価値の創出を軸に、共同研究(POC)、
生活者研究を多数実行中。
・現在はWell-being領域に興味関心を持ち
(社)データビリティコンソーシアムに参画
「Well-being部会」を立ち上げ、異業種との共創活動に取組み中。

株式会社インテージ マーケティングパートナー第2本部 営業推進部 
未来共創センター長
・大学卒業後家電メーカーへ就職、ワープロ、FAX、携帯電話、通信映像端末、
太陽光発電の商品企画を担当。
・2013年株式会社インテージに入社し、国内外の生活者リサーチ、
コンサルティングに従事。
・2017年「未来共創センター」を設立。
企業との共創による新価値の創出を軸に、共同研究(POC)、
生活者研究を多数実行中。
・現在はWell-being領域に興味関心を持ち
(社)データビリティコンソーシアムに参画
「Well-being部会」を立ち上げ、異業種との共創活動に取組み中。

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