セルフレジはどこまで浸透したのか?~導入・利用実態と、消費者が感じるメリット・デメリット~
小売業や外食産業を中心に深刻化する企業の人手不足。現場の人手不足を補う手段として、一部のスーパーやコンビニエンスストアなどでは、対面式のレジとは異なり、商品のスキャンから会計まですべて買い物客自身で行う「セルフレジ」の導入が進んでいます。最近では、完全自動セルフレジ機の導入実証実験が行われるなど、次世代を見据えた先進的なレジの開発も進んでいるようです。
そこで、ショッパーの買い物行動を知るインテージでは、セルフレジはどのくらい使われているのか、どのようなことにメリットを感じてセルフレジが使われているのか、そして不満はないのか、など、昨今のセルフレジの利用動向を探るべく、16~69歳の男女2,305人を対象に意識調査を実施しました。
※セルフレジ・・・今回の調査では、セルフレジを「商品のスキャン、会計をすべて買い物客自身で行うレジ」と定義し、セルフ精算レジ(商品のスキャンはレジ係が行い、会計のみ買い物客自身が行うレジ)は対象外としました
セルフレジの利用経験は?どのような業態で利用している?
最近、スーパーやコンビニ、アパレル店やレンタルショップなどで、様々な場所で見かけるセルフレジ。みなさんは利用したことがありますか。まずはセルフレジ自体の認知度や利用率について、性年代別やエリア別で詳しく見てみました。
まず、セルフレジの認知・利用経験について聞いてみたところ、セルフレジは、全体では9割を超える高い認知率であることが判明。利用経験がある人の割合も7割と高く、広く普及している様子がうかがえます。
性年代別に詳しく見てみると、男性に比べて買い物の頻度が高い女性は、認知、利用経験ともに高い傾向。男女ともに10~20代の若年層で利用経験率が高く、特に男性では年代が上がるにつれて利用経験率が低くなる傾向が顕著ですが、最も利用経験率が低い男性60代でも約5割が利用経験ありという結果になりました。
また、地域別では、利用経験率が最も高いのは「東北」で82.3%、次いで「北海道」(76.6%)、「中部」(72.9%)と続く一方、西日本エリアでは相対的に利用経験率が低い傾向であることがわかりました。セルフレジの導入は、レジ会計時間の短縮によりレジ台数を減らし、少ない従業員で対応できるという利点があります。東北エリアで利用経験率の高さは、東日本大震災後の人手不足を背景に、こうした利点を活用すべくスーパー等でのセルフレジの導入が拡大したことが一つの要因として考えられます。セルフレジは、限られた人材の有効活用の面からも、今後も普及が加速すると予想されます。
7割の人が利用したことがあると答えたセルフレジ。では、どこで利用しているのでしょうか。セルフレジの利用経験がある人を対象に、どの業態で利用したかについて聞いてみました。
その結果は、「スーパーマーケット」が9割と突出。それ以外では、「レンタルショップ」(11.0%)、「衣料品店・アパレルショップ」(9.7%)、「ディスカウントストア」(6.8%)などもあがりましたが、いずれも利用経験者のうちの1割程度であることがわかりました。また、2025年までに全店舗にセルフレジを導入することを大手5社が発表した「コンビニエンスストア」は、現段階では4.1%という結果に。2025年までにどこまで進むのか、今後の動向が注目されます。
また、性年代別では、男女ともに10~30代では「レンタルショップ」が約2割と他層に比べて高く、また女性、特に若年女性では「衣料品店・アパレル」も高くなっています。若年層の一部ではスーパーに限らず複数の業態でセルフレジを活用しており、より普段の買い物の中で身近になっていることがわかりました。
Key Point 1
セルフレジ、10~60代の男女で約7割が利用経験あり。震災後に導入が拡大した「東北」では8割超。利用場所、そのほとんどが「スーパー」。若者中心に「レンタル」「アパレル」で利用も。
普段使っているスーパーの設置状況は?
ここからは、前項でセルフレジ利用経験者の多くが利用場所としてあげた「スーパーマーケット」にフォーカスし、日常的にスーパーマーケットで買い物をしている人(月1回以上と定義)を対象に、普段もっとも利用しているスーパーのセルフレジ設置状況や利用実態など、詳しく見ていきます。
まず、普段利用しているスーパーのセルフレジ設置状況について聞いてみると、「設置されている」は46.4%という結果に。前項では業界を問わずにセルフレジの利用経験を確認したところ、全体で7割と高い利用経験率であることがわかりましたが、普段利用しているスーパーに限定すると、設置ありは約半数、というのが実態のようです。地域別では、前項と同様に「東北」が最も高く59.4%という結果に。さらに、「中部」(51.1%)、「九州」(47.0%)と続きました。
では、セルフレジを使っている人はどのくらいいるのでしょうか。普段利用しているセルフレジ設置スーパーでのセルフレジ利用状況について聞いてみました。
すると、普段利用しているスーパーにセルフレジが設置されている人のうち、約9割の人が「利用経験あり」と回答。さらにその内訳を見てみると、「現在も使っている」という人が7割弱と半数以上を占める一方で、「利用経験はあるが、その後使用しなくなった」人も2割という結果になっています。詳細は次項以降で紹介しますが、実際に使ってみた結果不満を感じ、積極的には使用しないことを選んでいる人も一定数いるようです。
続いて、普段利用しているスーパーでのセルフレジ利用について、どのような人が積極的に利用しているのか、買い物行動との関係を確認してみました。
すると、スーパー利用頻度別では「週に4~5回以上」と、よく足を運ぶ人の方がセルフレジを「現在も使っている」の割合が高く、スーパーへ足を運ぶことがない人ではセルフレジを「使ったことがない」「現在は使っていない」の割合が高いことがわかりました。また、1回あたりの平均買い物金額別では、1回あたりの買い物金額が少額な層ほどセルフレジを頻繁に活用していることがわかりました。
では、スーパーでセルフレジを利用している人は、一体どのような理由で使っているのでしょうか。また、不満に感じる点などないのでしょうか。メリット・デメリットという観点からセルフレジ利用状況について掘り下げてみました。
まず、セルフレジを利用する理由については、「対面レジより空いている」「対面レジより早く会計できる」「自分のペースで会計できる」など、時間的なメリットがいずれの年代においても上位にあがりました。また、50~60代では、「困ったときはスタッフが助けてくれる」が他層に比べて高く、操作への不安はありつつもスタッフの存在が後押しになっている様子がうかがえます。また、10~20代では、「レジ操作が簡単」「レジ操作が楽しい」がそれぞれ2割に、30~40代では「子どもがやりたがる」という理由もあがり、レジ操作に対するポジティブな反応が利用に繋がっていることがわかりました。
次に、不満に感じている点を聞いてみると、最も高かったのは「うまくスキャンできない」という操作に関する不満で33.1%。同じく操作系では「バーコードがない商品が面倒」も20.7%で上位に入っています。また、「操作に時間がかかっている人がいる」「設置台数が少ない」なども不満として上位にあがっており、これらの不満が積極的な利用の妨げになっていると考えられます。
Key Point 2
普段使っているスーパーのセルフレジ設置状況、46.4%が設置あり。スーパーの利用頻度が高い層や、1回あたりの買い物が少額の層がセルフレジを積極利用。利用理由は「対面式より空いているから」など時間的なメリット。 一方で、操作のイライラを感じる人も。
セルフレジの導入が、買い物客の店舗に対する印象に与える影響は?
では、セルフレジを店舗に導入することで利用者のお店に対する印象は変わるのでしょうか。最後に、セルフレジの有無が店舗の印象に与える影響について探ってみました。
すると、最も割合が高かったのは「どちらともいえない」で6割を占めるものの、約4割が「良くなった」とポジティブな印象変化をもっていることがわかりました。さらに、「良くなった(とても良くなった+良くなった)」(37.8%)と回答した人に、その理由を自由回答形式で聞いてみると、利用理由でも見られた混雑緩和・時間短縮効果が多くあがったほか、「お客様への配慮やお店としての取り組み意欲を感じるから」「客のニーズに応えていると思うから」など、店舗の取り組み姿勢に対する評価もあがっていました。
一方で、割合としては少なかったものの「悪くなった」と回答した人の中には、「少ない買い物はセルフというプレッシャーを感じる」や「店員さんがいる方が、活気があったから」「(レジは)ありがとうという反応が唯一出せる」といった意見もあり、導入による効率化とどう両立させるかは課題となることがわかりました。
Key Point 3
セルフレジ導入でお店の印象、4割弱が「良くなった」と好変化。時短に加え、店舗の取り組み姿勢評価。
グローバルに目を向けると、中国では決済業務をお助けするスマホ決済が普及、米国では“レジレス”が話題を呼ぶなど、昨今小売業を取り巻く環境はますます変化しています。日本においても、2018年は店舗のレジに表示されたQRコードをスマホで読み取ると支払いが完了するサービス「QRコード決済」や、昨秋には、未来を見据えた次世代型のセルフレジ機「レジロボ」の実証実験が開始されるなど、取り組みが進んでいます。これらが実用化されれば、レジ操作面に対する不満は一定解消されるかもしれません。ただし、その反面、機械化により高齢者層を中心に生活がしづらくなるなど、さまざまな問題が浮上することが考えられます。便利な機械をいかに生活に取り込んでいくか、見極めも必要となりそうです。
今回の分析は、下記の設計で実施したインテージの自主企画調査結果をもとに行いました。
【自主企画調査】
調査手法 インターネット調査
調査地域:全国
対象者条件:16-69歳男女
標本抽出方法:弊社「マイティモニター」より抽出しアンケート配信
ウェイトバック:性年代構成比を、2015年度実施国勢調査データをベースに、人口動態などを加味した2017年度の構成比にあわせてウェイトバック
標本サイズ:n=2,305
調査実施時期:2018年2月24日(金)~2018年2月27日(月)
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