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生活者の口コミから新商品のアイデアを得る ~ビジュアルなソーシャルメディア(X、Instagram)の活用~

ソーシャルメディア(Instagram、Xなど)には生活者の工夫やアイデアが公開されています。商品企画やマーケティングを担当されている方は、膨大な口コミから新商品のアイデアを作ることを考えたことがおありではないでしょうか?
しかしながら、これらの口コミを活用する上では「投稿数が多すぎる」「口コミには様々な書き込みがあるので整理が難しそう」「どう扱って良いのかわからない」という課題感を感じている方も多いと思われます。

インテージでは、口コミを起点としたアイデアを創出するメソッドを組み立ててきました。この記事では、実際の取り組みを通し、口コミの活用イメージをつかんでいただければと思います。

1.カレールーの新商品を考える

今回の取り組みでは、日頃、口にすることも多いカレーの「ルー」を題材に選びました。売上が伸長しているレトルトカレーに対して、成熟市場となっている「ルー」は、もう一段の成長につながる新商品アイデアが必要と想定しました。

アイデア創出の手順は以下の通りです。
①関連するSNS投稿を収集する
②アイデアにつながるSNS投稿を抽出する
③ワークショップ1:キーワード(SNS投稿からの気づき)をグルーピングする
④ワークショップ2:キーワードを軸で整理し、アイデアを創出する領域を決める
⑤コンセプトワーク:④で定めた領域の生活者への提供価値とベネフィットを整理してアイデアを創出する

図表1

新商品アイデアを得るまでの手順

ここからは、この手順に沿って、実際に取り組んだ内容を紹介します。

まず、①の「SNS投稿の収集」です。
「カレールー」だけで絞り込むと、新しいアイデアにつながるSNS投稿は集まりません。カレー「ルー」だけに注目したSNS投稿を集めても、新しいアイデアにつながるSNS投稿はなかなか集まりません。そこで視野を広げ「カレーを食べているシーン」に注目し、SNS投稿を集めることにしました。生活者はカレーをどのように食べているのか?、カレーが食べられる背景やニーズから商品開発へのヒントをつかむことにします。

今回は、XとInstagramを対象に投稿の収集と抽出を行いました。
検索ワードには、家庭で調理される「カレー」以外にも外食・中食でのカレーカテゴリーも含めることで、カレーに関わるシーンを幅広く収集しました。

図表2

SNS投稿の収集対象とするカレーのカテゴリー定義

2.アイデアにつながるSNS投稿をピックアップする

次に、②の「アイデアにつながるSNS投稿の抽出」です。ここで一つ目の課題、「投稿数が多すぎる」ことに対する対応が必要となります。カレーをキーワードとすると、今回、2023年1月1日~12月31日の1年間でX:約300万件、Instagram:約29万件の投稿を集めることができます。しかしながら、この中には、メーカーのPR広告やインフルエンサーから生活者の発信まで幅広い内容が含まれます。そこで、アイデア開発に使えるSNS投稿を抽出するためには、基準を設ける必要があります。
※返信やリポストを含まないオリジナルの画像付き投稿のみ。一部、キャンペーンが含まれている可能性もあります。

そこで、生活者の本音・ニーズを重視し、弊社が利用しているシステムで、機械的に以下の条件を満たす投稿に絞り込みました。
・PR広告ではない生活者の発信であること
・ポジティブもしくはネガティブな行動、気持ちに紐づくこと
・画像、動画も一緒に投稿されていること
・調理ニーズ(家計のやりくり、健康維持、合理的、手軽、素材へのこだわり、料理好き、など)に触れていること
・一日の流れ(食べる、運動する、眠る、など)や生活者の欲求(きれいになりたい、痩せたい、健康になりたい、など)ワードが含まれること

これらの投稿を読み込み、投稿者のプロフィールや過去投稿も確認することで背景やニーズを推測します。さらに、リサーチャーの視点でカレーが食べられるシーンやニーズに関する“気づき”をキーワードとして抽出しました。このキーワードが後々重要となるのですが、ソーシャルメディアならではの数多くの写真やテキストが良い刺激になり、多くのキーワードを発見することができました。

3.SNS投稿を整理する

次に③の「キーワードのグルーピング」です。ワークショップで前述のキーワード(気づき)を図表3の様にグルーピングして整理しました。

図表3

アイデアにつながるシーンからキーワードを抽出・グルーピングしたアウトプット

冒頭で「抽出したSNS投稿の整理が難しそう」という課題感があるのでは、としましたが、ここで実施したのは、キーワードを付箋等に書いてホワイトボードに張り、類似したものをグルーピングしていく一般的な手法(KJ法)です。キーワードさえ抽出しておけば、整理自体は慣れた手法で行えます。

4.検討軸を決めてアイデアを創出する

④の「アイデア創出の領域決め」では、まず、③のステップでできたたくさんのキーワードのグループをヒントに、商品開発の切り口となる「軸」を見出して、再度整理しました。
例えば、様々にアレンジする『熟達』と極力手をかけない『時短』は同じ軸の両極と考えられそうです。また、シーン別のキーワードからは『冬カレー』対『夏カレー』といった軸も見出せます。このように生活者のニーズや行動を表す「軸」候補をできるだけたくさん出し、2種類ずつかけあわせて、各象限を満たす商品アイデアを考えて、有効性を評価していきました。

図表4は今回出てきたアウトプットの一例です。「短時間で整う」という主に若年層に多いニーズは、「長期にわたってサプリ補給」というシニアに多いニーズと両極にあり、これを一つの軸と考えました。一方でシンプルに「ライス有り」⇔「ライス無し」という軸もありそうです。この2つの軸を組み合わせることで、以下の4つのアイデアがでてきました。
・完全メシカレー
・発汗重視のスキっとするカレー
・効能カレー
・サプリカレー

図表4

軸の組み合わせ、および、狙うべき領域の検討例

既に存在する商品もある中、「短時間で整う」という若年層のニーズを満たし、かつライス無しの「発汗重視のスキっとするカレー」は新規性や事業性が期待できるのではないか、と考え、最終アウトプットとして、このアイデアについて、図表5の様にターゲット層や提供価値をまとめました。

図表5

新商品アイデア例(カレールーの新商品「発刊専用カレー」)

5.まとめ

今回のプロセスやアウトプットについて、実際にメーカーで商品開発に携わっているマーケティングご担当者数名にご覧いただき、感触を伺ったところ、SNS投稿を用いることでトレンド性を捉えられる、投稿のビジュアルが裏付けとなるため納得性が高い、など、体系的に新商品アイデアを出す1つの手法として評価をいただきました。

はじめに「口コミをどう扱っていいかわからない」という課題感に触れましたが、データの抽出・整理を正しく行えば、普段、定性調査や定量調査のあとに皆さまが実施されているワークショップと同じ流れで新商品のアイデアを得ることができそうです。

生活者の口コミには以下のような特徴があります。
・母数が大きいため、数多くの人の意見を知ることができる
・生活者の行動やニーズ、その時の気持ちを多数反映している
・広義の市場に関する探索から事前の仮説がなくても仮説を発見することができる
・背景やシーンのわかる画像が付いていたり、前後に説明のある投稿も多いため、アイデアにつながる気づきを得やすい

数百万人という生活者が投稿する口コミ情報をリサーチャー目線で読み解けば、今までにない商品やカテゴリーの創出など新規事業領域の探索につなげられると考えています。

著者プロフィール

高崎 綾子(たかさき あやこ) 株式会社インテージ カスタマー・ビジネス・ドライブ本部 企画・分析4部 未来共創センタープロフィール画像
高崎 綾子(たかさき あやこ) 株式会社インテージ カスタマー・ビジネス・ドライブ本部 企画・分析4部 未来共創センター
米国大学院卒業後、現地でマーケティングに従事したのち、2013年インテージに入社。
消費財、耐久財、サービスなど多方面にわたり、ソーシャルメディアデータのリサーチへの活用に取り組む。

米国大学院卒業後、現地でマーケティングに従事したのち、2013年インテージに入社。
消費財、耐久財、サービスなど多方面にわたり、ソーシャルメディアデータのリサーチへの活用に取り組む。

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