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Z世代・アルファ世代のリアル-テックネイティブな未来の消費者を紐解く⑥~Z世代によるSNSの使い方大解剖!

今後の消費の中心として注目を集めるZ世代と、その次に来る“生まれたときからデジタルに慣れ親しんでいる”アルファ世代。インテージでは、Z世代リサーチ研究分科会(1) を中心に複数の部署やグループ会社で連携し、産業能率大学の小々馬敦先生(2)とZ世代・アルファ世代といった“テックネイティブ”の情報接触・価値観・消費行動を明らかにするための共同研究を行っています。

知るギャラリーでは、この共同研究の結果を6回にわたってお伝えしています。
第6回となる今回のコラムではZ世代の日常生活になくてはならないSNSの使い方について詳しく解説します。今回は実際にインタビュー・行動観察を行った、インテージクオリス リサーチ推進部の三橋がお伝えします。

Z世代はどのSNSで何をしている?プラットフォームの使い分け

一口に「SNS」といっても、Instagram、Twitter、TikTokの使い方はそれぞれ異なります。それぞれ、どのような使い方・文化が発展しているのか、彼らの目線からみていきたいと思います。

図表1は各プラットフォームの使い方を調査結果からピックアップしたものです。

図表1

まず、メイン利用SNSとしてよく挙がるのがInstagramです。インプット(閲覧)もアウトプット(投稿)もコミュニケーションも活発で、ついつい手を伸ばしてしまうプラットフォームとなっているようです。詳細な使い方は次章で詳説します。

Twitterは、図表2の通り、利用パターンが「サブSNSとしてアクティブ利用タイプ」と「ほぼ休眠タイプ」に大別されました。「サブSNSとしてアクティブ利用タイプ」は、自分の好きな分野・ジャンルの情報収集をしたり、仲間と交流する使い方です。
一方、「ほぼ休眠タイプ」は、電車遅延や地震などのリアルタイムで知りたい情報を得たり、トレンド機能で世の中全体では今何が起こっているかを知る場合にのみ使うタイプです。見る頻度は低く、「暇つぶしの最終手段」と位置づける人もいました。

図表2

TikTokの利用パターンは「たまに暇つぶしタイプ」と、「ヘビーユーザータイプ」に分かれ、ライトユーザーがまだまだ多いことが特徴的でした。「たまに暇つぶしタイプ」が週に数回おすすめ画面を流し見する程度だった一方で、「ヘビーユーザー」はおすすめ画面を流し見する頻度が高いだけでなく、欲しいものの候補があったときに、TikTokでレビュー動画を探して検討材料とすることもありました。
特筆すべきは、レビュー動画の内容そのものに加えて、コメント欄を「口コミ」として参考にしていることです。Instagramは商品レビューなどの投稿に対して実際のユーザーのコメントが付きにくいのに比べて、TikTokは「ほんとこれ間違いないよね」など一般ユーザーの反応がコメント欄に投稿される傾向にあるためです。

Z世代のInstagramアカウントの使い分け

ではここからは、メイン利用SNSであるInstagramについて、インプット、アウトプット、コミュニケーションの詳細をみていきましょう。

まずは、彼らのInstagramアカウントの使い分けです。連載第1回でもご紹介したように、25歳以上の社会人以上と比較して、高校生・大学生やZ世代にあたる24歳以下の社会人はアカウントを多く持つ傾向にありました(図表3)。

図表3

複数アカウントのうちひとつは、最もフォロー/フォロワーの関係性が広い「メインアカ」「本アカ」と呼ばれるものです。次に、近い関係性の人のみに対し素の自分を出せる「サブアカ」、さらに自分の関心ごとに特化した「趣味アカ」「オタクアカ」があります。

図表4

Instagramメインアカの使い方

メインアカはフォロー/フォロワーが400人~800人程度の規模のアカウントで、中学校頃からのリアルな人間関係を中心に構成されています。このメインアカではどのように投稿したりコミュニケーションを取っているのでしょうか。

Instagramへの投稿は、自分のプロフィール画面およびフォロワーのタイムライン(「フィード」)に表示されるものと、基本的には24時間で投稿が消える「ストーリーズ」に分けられます。プロフィール・「フィード」への投稿は旅行やテーマパーク、イベント、きれいな景色、素敵なお出かけ先、完成度の高いコーディネートなど特別で「ハレ」色の強い出来事を厳選して投稿しています。特に女性では、投稿のトンマナ(淡い色、原色でカラフルなど)を統一することで「ちょっとおしゃれ」なプロフィールを作り出していました。

ここで少し注意が必要なのは、彼らは「自分のいいところを見せたい・知って欲しい」と言うものの、それはミレニアル世代以上の「いいところを見せたい」感覚とは少し違うことです。ミレニアル以上の世代にも話を聞くと、投稿の動機として「いいね」が欲しい気持ちがあったり、実際よりも良い自分を見せたい思惑もあるようでした。一方、Z世代が見せたい「自分のいいところ」は現実の自分の枠を出ない範囲であり、目的も「自分が」どう思われるかというよりは、「自分と」見た人の関係をより良い方向に進めていくための、人間関係進展ツールの意味合いが強いようです。

たとえば、まだ友人とまではいえない関係の同級生と「インスタ交換しませんか」となった際、プロフィールを見た相手に好印象を与えたり、「おしゃれで優しい雰囲気。友達になりたいな」「このバンド好きなんだ、今度ゆっくり話してみよう」といった反応を期待しています。このことから、Instagramのプロフィールは「ビジュアル名刺」として活用されているといえそうです。

図表5

次に、同じ出来事でも、こんなものが美味しかった、教室でこんなことをした、友人のバイト先に来た、など「ケ」の出来事は「ストーリーズ」で投稿します。24時間で消えるため、トンマナを気にせず気軽に投稿することができ、「フィード」に比べて投稿頻度が高いようです。「フィード」と「ストーリーズ」でハレとケの違いはあるものの、出来事を中心に投稿していることから、Instagramでの「投稿」は「思い出置き場」となっている実態が見えてきました。

さらに、「DM(ダイレクトメッセージ)」機能で1対1でコミュニケーションを取ったり、誰かの投稿に対して返信する形でメッセージが続くこともあります(たとえば、「〇〇とラーメン食べに行った」というストーリーズに「いいな、俺も食べたい」と返信し、やり取りが続く)。その他、部活の掲示板としても使われているなどの例もあり、コミュニケーションプラットフォームとしての特色を持っているといっていいでしょう。

メインアカ以外の使い方

「メインアカ」が自分のいい面を見せる場所であるのに対し、「サブアカ」では仲のいい数人~数十人のフォロワーに対して、メインアカには投稿しないようなふざけた様子や変顔、愚痴や、悲しい気持ちなどを投稿しています。
また、メインアカ、サブアカは個人情報が特定される(サブアカは素の自分も見られてしまう)ため、「鍵をかける」つまり自分が許可した相手しか閲覧できない状態にしている人が少なくなかったことも特徴的でした。

そして、絵やアイドル、漫画・アニメなど、ある分野・ジャンルに特化した「趣味アカ」「オタクアカ」を持つこともあります。ここでは情熱を共有し合って好きな物の世界を存分に楽しんだり、情報収集・情報交換をしています。ただし、「趣味アカ」「サブアカ」は全く持たない人もいれば、InstagramとTwitterを合わせて10個以上のアカウントを持っている人もいて個人差がみられました。

なぜこのように趣味アカウントを細かく分けるのでしょうか。SNSのホーム画面や検索画面に表示されるおすすめは、アカウントごとの行動履歴(いいね、保存など)に紐付いています。つまり、イラスト、音楽、アニメ作品など分野や作品ごとにアカウントを作成すれば、その分野・作品に特化したおすすめ情報を表示してくれる、濃度の濃いアカウントができるのです。彼らは、その瞬間の関心に合わせて効率的にお目当ての世界に浸りたいため、アカウントを多数使い分けていました。これはTwitterについても同様です。

このように、人間関係の深度や趣味関心に合わせてプラットフォームやアカウント、投稿内容を分ける機微は、Z世代のSNS使用の特徴といえそうです。

Instagramで見ているもの

Z世代は、リアルでつながっている人やフォローしている有名人、インフルエンサーの投稿が見られる「フィード」のほかにもうひとつ、虫眼鏡マークをタップすると表示される「発見タブ」を頻繁に見ています。

図表6

「発見タブ」は自分の関心が高い投稿を表示してくれる機能で、ジャンルは多岐に渡ります。精度の高いアルゴリズムによって、自分好みの情報がキュレーションされた画面をどこまでもスクロールできることもあり、ふと開きたくなる画面のようです。
この、自分にとって関与度の高い情報の海を漂って楽しんでいる状態は、能動的な「検索」を伴う「情報収集」とは様相が違い、さながら「情報遊泳」といえそうです。彼らは日に何度もついつい行う「情報遊泳」の中で、気になる商品を発見したり、したいことが見つかったりしています。

「発見タブ」のほかに、消費行動における認知や検討に影響を与えている要素の一つとして、最後にインフルエンサーの存在にも触れておきましょう。 好き・憧れているインフルエンサーがいるケースは多くみられました。ただし、有名インフルエンサーに商品を紹介してもらえばZ世代が買ってくれるかというと、そう単純ではないことも分かりました。その理由はふたつあります。

ひとつは、「インフルエンサーがおすすめしている」だけで認知から購買に直結するとは限らないということです。実際、そのような例はほとんど見られませんでした。発信内容を積極的に参考にしたり、「この人が言うなら良いんだ」と感じるなど、影響を受けてはいますが、あくまで商品認知のきっかけや有力な検討材料のひとつの様です。「憧れのインフルエンサーさんが使っていたら気になる。でも、それが自分に合わないなと思ったら商品はスルーする」といった声も聞かれました。

もうひとつは、Z世代が「好きなインフルエンサー」として挙げるのは、有名インフルエンサーだけではなく、1000人規模のフォロワーを抱える(つまり“普通の”Z世代自身とそうフォロワー規模の変わらない)ナノインフルエンサーもおり、憧れの対象がかなり細分化されていることです。

ただ、連載第3回でもご紹介したように「推し」が紹介しているとなると、購買までのハードルは低くなるようです。「推し」は幸福の源泉や日々の活力、アイデンティティにもなり得る存在のため、少数の例ではありますが、「真似したい」「応援のために買いたい」といった強い気持ちがみられました。モノとしては不要だけど「貢ぐ」感覚で買っている、という例もあるほどです。

これらのことから、Z世代との接点を創出するために、間を取り持ってくれる存在に頼るときは、彼らとターゲットの関係性を子細に理解し、どんな影響が期待できるかを慎重に検討する必要があると考察できます。

Z世代へのコミュニケーションを図るとき、彼らが日常的に使っているSNSは重要な接点となるでしょう。ただし、ステレオタイプの解釈やアプローチをあてはめたり、世代が違う自らの経験を基に彼らの行動を読み解こうとすると、ミスリードの危険があります。対話や観察を通して彼ら目線で行動とその背景にある気持ちを理解する、さらには共感することで、Z世代とのコミュニケーションの真の活路がみえてくるのではないでしょうか。

連載終了のご挨拶

定量データ、インタビュー、行動観察などからZ世代、そしてアルファ世代の実態に迫ってきました。多角的に捉え、考察することで実態理解は大きく進んだ一方で、マーケティングに資する域に達するにはまだまだ研究を進める余地があることと、さらに理解を深めるための課題や方策も見えて来ました。課題や方策のヒントは、私たちが抱く彼らへのステレオタイプな観念を行動観察やインタビューから捉えた実態に則してアップデートすることにあると考えます。

これからも、彼らの目線で、ともに彼らの生活や未来を考えるなかで理解を促進していけるよう、そしてそのことがマーケティング活動にとって価値ある資源となるようグループ一丸となって研究に取り組み続けます。研究結果は引き続き皆様にお伝えしていきますので、楽しみにお待ちください。


(1)【Z世代リサーチ研究分科会】
インテージグループR&Dセンターの分科会の一つ。マーケティング活動に資するZ世代の特性を理解し、グループの事業発展に繋がるZ世代の調査法・調査結果の活用法の確立を目指しています。これまでさまざまな形でZ世代にまつわるプロジェクトに関わったメンバーが集まり、社内外の知見の収集や自主調査の実施など精力的に活動を始めています。
(2)【小々馬敦先生】
産業能率大学経営学部マーケティング学科教授。ゼミの取り組みでは「Z世代の生活価値観」からマーケティングのニューノーマルを探究することを行っています。2015年から若者の価値観変容を追跡調査し、日本マーケティング協会と学生と社会人の対話「ミライ・マーケティング研究会」を開催するなど、精力的に若者のリアルについて研究されています。
小々馬 ゼミURL:https://www.kogoma-brand.com/


【調査概要】
期間:2021年12月28日から2022年5月29日
対象者: Z世代(1997年《24歳》~2009年《中1/12歳》と定義)35名
調査方法:オンラインデプスインタビュー(n=31)、デプスインタビュー・行動観察(n=4)

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