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コロナ後の“旅行”を問い直す 第2回~旅行における「非日常・現実逃避」とは何か?生活者の連想構造から読み解く

「“旅行”を問い直す」をテーマとした連載記事、第2回は、旅行について考えるときによく用いられる「非日常」と「現実逃避」をキーワードに、若者とシニアそれぞれにおいてこれらの言葉がどんな意味を持つのかを掘り下げていきます。生活者の心の地図である「マインドディスカバリーマップ」を読み解くことで、若者とシニアでは逃避したい“日常”が異なること、そしてそれぞれが求めている“非日常“が浮かび上がってきました。

生活者の心の地図、「マインドディスカバリーマップ」

前回の記事でもお伝えした通り、「マインドディスカバリーマップ」は設定したテーマに関する数百人の自由連想とその関係性を構造化したデータです。インテージのソリューション「デ・サインリサーチ」では、このマップを、ワークショップを通して多様なメンバーで読み解くことで、生活者が自分でも意識していない深い心の動き(インサイト)を発掘します。

今回は『生活者にとって旅行することとは』を問いに、若者(18-39歳の子どもなし男女)とシニア(50-69歳の高校生以下の子どもなし男女)500人ずつから回答を聴取してマップを作成しました。マップの作成にはインテージの解析ツールPAC-iを使用しています。

図表1

マインドディスカバリーマップの読み方の基本は、「近くにあるワード同士は意味が近い」「遠くにあるワード同士は意味が遠い」です。詳細な読み解き方もいくつかありますが、本記事ではその1つ「ギャップ ポジション」を活用し、「非日常」「現実逃避」関連のワードが若者とシニアそれぞれのマップでどのようなポジションにあるかに注目、意味合いの違いを分析しました。

図表2

マインドディスカバリーマップの読み解き方~「ギャップ ポジション」

若者にとっての「非日常」「現実逃避」

まず、若者の旅行において、「非日常」「現実逃避」はそれぞれどのような意味を持つのかを見てみましょう。
ワークショップを通して若者マップから読み取れた『心の声』を3つご紹介します。

図表3

若者にとっての「非日常」「現実逃避」読み解き

心の声①:「旅行楽しかった~。この経験を糧に、明日の仕事もがんばろう!」

マップの中央に「非日常を味わう」「現実逃避」というワードが集まり、その周囲に「経験」「仕事を頑張れる」があります。若者は、旅行で非日常を味わい得られた経験を仕事の糧にしたり、現実から逃げてリフレッシュすることでまた仕事を頑張れる状態になりたいと考えているようです。
若者にとって、「日常」「現実」=「仕事」であることが推察できます。また旅行することで現実や日常である仕事から離れるという心の動きと、旅行での経験を生かして仕事がうまくいくという心の動き、2つの一見相反するインサイトが旅行による非日常への期待としてあるようです。

心の声②:「遠くへ行けない週末は、いきあたりばったりのお散歩をすると、いつもの自分から自由になれる気がする」

マップの左側に「日常から離れる」というワードがあり、その近くに「散歩」「スーパーを探索」といった一見旅行とは関係のなさそうなワードが集まっています。周囲の他のワードも踏まえると、日常の枠からちょっとはみ出るような行動に、「旅行すること」と似た意味を見出している可能性があります。このエリアでは、物理的に遠くに行くことは重要ではなく、気持ちを切り替えることで慣れ親しんだ場所も見え方が変わることを楽しんでいる様子がうかがえます。

心の声③:「この旅行は自分へのプレゼント!ゆっくりして美味しいもの食べるぞ~」

マップの下側に「非日常」「非日常な体験」という言葉があります。周囲には「ご褒美」「美味しいものを食べる」「温泉」といったワードがあり、のんびり温泉旅館でごちそうを食べるような自分へのご褒美シーンがイメージされます。
このエリアにおける非日常性とは、普段はしないお金の使い方やモノの贅沢を意味するのでは、と読み解けます。

シニアにとっての「非日常」「現実逃避」

つづいてシニアマップから読み取れた『心の声』を3つご紹介します。

図表4

シニアにとっての「非日常」「現実逃避」読み解き

心の声①:「たまには人が作ったおいしいごはんが食べたい!」

マップの中央に「非日常」「非日常を味わう」があり、近くには「美味しいもの」「郷土料理」がありました。食の存在感の強さが見て取れます。また少し遠めですが「上げ膳据え膳」もあり、食べるものの特別感だけでなく、普段は自分で行っている食事の準備や片付けまでしてもらえることにも非日常の喜びを感じていることが読み取れます。
そこから、シニアにとって毎日の食事(準備などの家事を含む)は「日常」の象徴であり、逆に旅行では、美味しいものさえ食べられれば非日常を感じてかなり心が満たされると考えられます。また今回は詳しくご紹介できませんが、シニアでは人間関係のストレスも大きいようでした。

心の声②:「気のおけない友人とのお気楽旅がいちばん癒される」

マップの左下に「日常からの解放」があり、近くには「女子会」「友達と行く」「ストレス発散」などがあります。親や孫やパートナーと行く旅行と、友人との旅行は一味違うようです。余計な気を遣わずリラックスできるのが良いのかもしれません。

心の声③:「旅行に行くと疲れるし準備や移動も大変だし、旅番組をぼーっと見ているときがなんだかんだ一番現実を忘れられるよ…」

マップの下側に「現実逃避」があります。「非日常」と「現実逃避」がごく近くにあった若者と比べ、シニアではそれら2つは意味的に違いが大きいことが分かります。
「現実逃避」近辺のワードは「テレビの旅番組」「四季を感じる」などであり、このエリアからはあまり具体性やリアリティを感じません。家にいながら頭を空っぽにしてテレビ番組を眺めることで現実を忘れているか、非現実的ないつかやってみたい理想の旅行を表しているのかもしれません。

旅行することにおいて「非日常」「現実逃避」を考えるとはどういうことか

マインドディスカバリーマップの読み解きを通して、下記のことが明らかになりました。
・若者にとっての「非日常」「現実逃避」:
仕事から脱出できること。散歩からご褒美旅まで、いくつかのレベル感の“旅行”を使い分けてそれを実現している。
・シニアにとっての「非日常」:
日常の家事や人付き合いから解放されること。ただし、おいしいものがあればひとまず楽しめる。
・シニアにとっての「現実逃避」:
メディアコンテンツなどを連想し、実際に行うことにはあまりリアリティがない。このため、シニアに対して旅行関連の訴求をしたいとき、「現実逃避」という表現は刺さらない可能性がある。

旅行について考えるとき「非日常」や「現実逃避」という言葉は便利に使いがちですが、その裏には生活者の複雑な状況や心情があり、対象者の属性によっても意味合いが異なることが分かりました。生活者にとっての「非日常」「現実逃避」を深く理解することで、よりかれらの心に刺さる取り組みのヒントが得られるのではないでしょうか。

インテージでは、今回ご紹介した自主企画調査を起点とし、ターゲットをより深く理解するような定性調査や特定領域の実態把握、コンセプト策定のためのワークショップなど、最適な手法を組み立て、新しいビジネスを実現する支援をしてまいります。ぜひお気軽に担当営業もしくはデ・サインリサーチ担当者(de-sign@intage.com)までお問合せください。


今回の分析は、下記の設計で実施したインテージの自主企画調査結果をもとに行いました。
調査地域:日本全国
対象者条件:18~39歳の子どもなし男女、50~69歳の高校生以下の子どもなし男女
標本抽出方法:弊社モニターより抽出しアンケート配信
標本サイズ:対象者条件ごとn=500 ずつ
調査実施時期: 2023年12月18日(月)~2023年12月22日(金)

著者プロフィール

小林 実可子(こばやし みかこ)プロフィール画像
小林 実可子(こばやし みかこ)
2020年インテージへ入社。デ・サインリサーチグループにて、調査と創造を組み合わせたソリューションであるデ・サインリサーチを担当。
主に消費財に関する生活者インサイト導出&アイデア創出やソリューション開発に従事するほか、2020-21年には書籍『リサーチ・ドリブン・イノベーション(安斎勇樹・小田裕和 著、株式会社インテージ 協力)』の発刊プロジェクトを担当。
好きな言葉は「ラディカルにゆっくり人であれ」。好きな場所は日本庭園と鴨川と珈琲店。

2020年インテージへ入社。デ・サインリサーチグループにて、調査と創造を組み合わせたソリューションであるデ・サインリサーチを担当。
主に消費財に関する生活者インサイト導出&アイデア創出やソリューション開発に従事するほか、2020-21年には書籍『リサーチ・ドリブン・イノベーション(安斎勇樹・小田裕和 著、株式会社インテージ 協力)』の発刊プロジェクトを担当。
好きな言葉は「ラディカルにゆっくり人であれ」。好きな場所は日本庭園と鴨川と珈琲店。

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