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コロナに負けないタイのモーターショー~コロナ時代のアジア自動車ビジネス③

インテージでは、日刊自動車新聞に「コロナ時代のアジア自動車ビジネス」をテーマに連載枠をいただき、中国、インド、タイ、日本の4カ国について、現地スタッフを交えて生活や自動車市場の変化をレポートしました。その内容を、知るGalleryでもお届けします。
3回目はタイ。意識調査の結果から、車に関する生活者の気持ちをレポートします。
1回目の記事はこちら 中国自動車市場の現在とオンライン販売の可能性
2回目の記事はこちら モビリティと購買行動に対するインド生活者意識の変化

タイ・バンコクの現状

新型コロナウイルスの拡大により、私の住んでいるタイにおいても他の国と同様に大きな影響を受けました。タイでは3月に突如発令された非常事態宣言とそれに続くロックダウン、在宅勤務、夜間外出禁止令、酒類販売や外食禁止、外国人の入国禁止等、徹底的な生活制限を経て、市中感染者をゼロに抑えることに成功。ここ何カ月かは〝普通〟の生活を取り戻すことができていました。しかし、9月になり101日ぶりに感染経路不明の新規感染者が発見され一瞬緊張が走るなど、いまなお安心と不安が交錯する毎日が続いています。

タイのバンコクでは、外出時や商業施設に入館する際、マスク着用が当然のエチケットとなり、モールやコンビニエンスストアをはじめ、建物に出入りする時は、検温、手指のアルコール消毒が普通となっています。商業施設に出入りする際はQRコードによる入退館履歴を残すか、あるいは手書きで名前、電話番号、入館時間や体温を記載する必要がありますが、最近では、だんだんと運用が緩くなってきています。
このところ、毎日のように市中感染者がいないと報道されたこともあり、最もチェックが厳しかった時期と比較すると、形式的な運用になっていますが、バンコクにおいてはマスクなしで外出することは既に非常識であり、行動としては定着しています。また、タイ人はコロナに対し非常に警戒が強いことは変わっておらず、コロナが身に迫る危機が少なくなった今もなお、街中では一定の感染対策がとられています。

コロナ禍のモーターショー 新車購入は影響を受けた?

さて、2019年後半から新車販売台数は低空飛行を続けていたタイ。今年になって起きたコロナによる経済的打撃はどの程度消費者に影響を与えているのでしょうか。
その試金石となりそうなのがモーターショーです。年に2回ショーが行われる3~4月と11~12月は、新車販売で非常に重要な即売会の時期として知られており、大きな盛り上がりを見せます。今年についてはコロナの影響により7月に延期の上で実施にこぎつけた形でした。インテージタイランドではこのイベントの前後にあたる3月10日、7月9日、7月27日の計3回にわたり、バンコク首都圏在住の18歳以上の男女を対象にインターネット調査を実施しました。

3月の調査時点では、まさにロックダウン寸前の時期であり、さまざまな生活上の制約が飛躍的に増加していました。その時期でさえ84%が新車購入意向ありと回答。7月時点でも86.4%が新車購入意向ありとなっており、コロナの影響を感じさせない高い水準を維持していました。

図表1asia-carbusiness-3_01.png

更に、「7月のモーターショーに行く予定」と回答した約4割の来場意向者に絞ると、100%が新車を買う計画があるという結果でした。これらの結果を見る限り、タイでの新車購入への熱量は、コロナによって大きく下がってはいないことがわかります。

モーターショーの来場者のうち、会場で購入を即決したと回答した人は約28%。現在も交渉中と回答した55%と合わせて、全体の83%が購入に向けてアクションをとっていました。(図表2)
「行けば買う」ないしは「買う気満々で行く」というタイにおけるモーターショー来場者の特徴は変わらず強いようです。タイではコロナ禍を経て、新車販売台数が落ち込んでいますが、引き続き強い購買意向があることがわかります。

図表2asia-carbusiness-3_02.png

では、コロナ禍によりさまざまな産業が経済的な打撃を受けている中で、わざわざこのタイミングで家計の負担となる新車購入に踏み切るのはなぜでしょうか。モーターショーで新車を購入した人の理由を見ると、「特別値引き」が28.3%とトップですが、以下は「保有している車の不具合」が20.8%、「家族構成の変化」「仕事に必要だから」「通勤通学に必要だから」がそれぞれ18.9%と、生活上必要という理由が続きました。(図表3)
コロナ禍での積極値引きに後押しされる形で、日常の足として引き続き自動車が必要とされているということが改めて浮き彫りになりました。

図表3asia-carbusiness-3_03.png

なお、新車購入予定がある人たちに対して、購入予定のブランドを複数回答で質問したところ、最も支持されたのはホンダで45.7%、次いでトヨタの40.3%となっています。そして注目すべきは中国系メーカーの英MGで、新車購入意向者の12.0%が検討していると回答しました。
次に、現保有ブランド別で検討ブランドを見たのが以下の表になります。現保有ブランドによらず、おしなべてホンダが候補として挙げられていることが良く分かります。日系ブランドがしのぎを削っている一方で、前述のMGも日系ブランドからのスイッチ候補として存在感を示してきています。

特に昨年来から、MGの躍進ぶりは無視できないものとなっていて、タイ人に支持される理由はコストパフォーマンスの高さが挙げられます。人気のSUVである「MG-ZS」が70万バーツ(235万円)ほどで手に入れられる上、現在は0%の金利や頭金比率の軽減などのキャンペーンをはじめ、点検時間60分以内などのアフターサービスにも力を入れ始めています。
コロナからいち早く立ち直った中国は、近年東南アジア市場に対して積極的に進出してきており、自動車業界も含めてその動向は注目を集めそうです。

タイにおける自動車のオンライン購入の可能性は?

自動車をオンラインで購入することに対して、どの程度不安を感じているかも5段階で聞いています。3月の調査では「不安を感じない」が17.2%だったのに対し、7月は「不安を感じない」が全体で23.0%、モーターショーでの新車購入予定者に限ると28.6%となっています。緩やかではありますが、自動車購入におけるオンラインチャンネルの可能性が増してきているようです。実際、デジタルシフトはコロナ禍によって否応なく求められる流れとなっており、バリューチェーンのさらなるデジタル化に向けた各社の動きが注目されます。
なお、オンラインで自動車を購入するための条件について聞いたところ3月、7月どちらの調査でも上位に挙げられたのは「オンラインリミテッドエディション」と「オンライン購入の方がお得であること」となっており(図表4)、やはりオンライン購入に明確なメリットが感じられる要素は必要のようです。

図表4asia-carbusiness-3_04.png

このように、タイではコロナ禍を経ても自動車購買の意欲が根強いこと、いち早く立ち直った中国のメーカー進出が明確になってきていることをわかります。また、コロナ禍を経て自動車のオンライン購買も少しずつ生活者の視野に入ってきているようです。


【自主企画調査 調査概要】
調査地域:バンコク首都圏
対象者条件:18歳以上の男女
標本抽出方法:ランダム
標本サイズ:1回目 (n=1047) ,2回目(n=1022), 3回目(n=819)
調査実施時期:1回目 (2020/3/10) ,2回目(2020/7/9), 3回目(2020/7/27)

著者プロフィール

青葉 大助(あおば だいすけ)プロフィール画像
青葉 大助(あおば だいすけ)
タイ在住40代男性リサーチャー。過去に訪問した調査実施国数は30か国以上。当該国の消費者にとってのベストを求め、常に彼らの気持ちに寄り添うことを信条としている。
1日約1000回閲覧される自身の世界グルメ投稿もタイを中心に意欲的に継続している。

タイ在住40代男性リサーチャー。過去に訪問した調査実施国数は30か国以上。当該国の消費者にとってのベストを求め、常に彼らの気持ちに寄り添うことを信条としている。
1日約1000回閲覧される自身の世界グルメ投稿もタイを中心に意欲的に継続している。

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