海外オンライン調査を実施するうえでの心得~サンプル設計編~
従来、郵送や家庭訪問といった形で実施していた市場調査ですが、インターネットの普及やテクノロジーの発展によって、国内外共に実施しやすくなりました。
オンライン調査は従来の定量調査と比較して、準備が簡単で、調査結果が早く入手できて、費用も安く済むといったメリットがあるため、図表1のように日本ではすっかりオンライン調査が過半数を超え、定量調査を代表する手法となっています。
新興国ではまだ日本ほどの普及率はありませんが、年々オンライン調査の比率が増えつつあります。知るギャラリーではそんな海外でオンライン調査を実施するうえでの特徴、留意点、コツ等について、3回に分けてご紹介します。
第1回はサンプル設計がテーマです。
海外アンケートモニターについて
オンライン調査を行う上で必要不可欠なのは、調査に協力いただくアンケートモニターです。海外のアンケートモニターはポイントサイト、ECサイト、メディアサイト等の会員・ユーザーといった方々から構成されています。近年、アジアでもオンライン調査は普及していますが、アジア最大規模のモニターを保有しているインテージでも、図表2の通り、国によって登録者数にばらつきがあり、まだまだ日本のモニター数には及ばない状況にあります。その為、国内で回収が見込める対象者条件や設計でも、内容によってはそのまま海外に展開できない場合もあります。
アンケートモニターの属性について
図表3はアンケートモニターの属性を日本と海外の国で比較したものとなりますが、国によって構造が異なります。
インテージの国内モニターの場合、高齢化の進む日本の人口構成に合わせる形でモニターを募り、管理していることもあり、全体の80%近くが40~60代以上のモニターになっています。
一方、海外のモニターに目を向けると、国によって多少傾向は異なるものの、若年層の割合が多くなっています。50~60代以上のモニターが存在しないという国もアジアでは多くなっています。その為、対象者条件によっては、調査手法の変更や、外部に一般生活者をリクルート依頼してアンケートに誘導するといった代替案の検討も必要になってきます。
サンプルサイズの決め方について
オンライン調査で回収するサンプル数の決め方についてお問い合わせいただくことがあります。
サンプルサイズを決める上で、考慮しないといけないことは大きく2つあると考えています。
1つ目は「標本誤差」です。
これは海外調査だけでなく日本国内のオンライン調査でも同様ですが、定量調査ではより多くの生活者のデータを回収できれば、誤差は少なく、精度もあがります。図表4ーAは標本誤差の早見表となりますが、一般的に信頼区間は95%で設定し(100回調査したい場合、95回は真の値が含まれる)、許容誤差も5%以内にしてデータを分析することをおすすめしています。最も誤差が生じる比率50%で5%以内になるのは標本数400サンプルとなるため、回収数のひとつの目安として400サンプルがあります。
※オンライン調査でもランダムサンプリングができた前提で標本誤差の表を参考にしています。
そして、2つ目は「分析セグメントの確保」です。
統計上、分析に耐えられる最低限のサンプルサイズは30サンプルと言われており、どこまでデータを深堀して分析するかによって標本数も変わってきます。例えば図表4ーBのように、20~40代を対象とした調査で回収したサンプルを性・年代別まで分解して分析したい場合、最低でも計180サンプルは必要になります。
※ただし、30サンプル同士で比較する場合、比率50%の標本誤差は18%近くあるため、データを読む際は注意が必要となります。
海外ならではの分析セグメントとして、社会経済クラス(SEC:Socio-economic class)や人種・民族等があります。
東南アジア等、まだまだ貧富の格差がある国々では経済状況によって価値観や購買行動の傾向が異なることがあるため、収入・支出といった指標でセグメント分けをして分析することがあります。
また、アメリカ、ブラジル、シンガポール、マレーシアといった多人種・多民族国家では人種・民族によってニーズや嗜好も変わってくるのでデモグラフィック情報として調査票内で聴取しておくと分析時に役立ちます。 なお、各国の収入・支出別構成比、人種・民族の構成比といったデータは弊社Global Market Surfer(https://www.global-market-surfer.com/)で無料公開していますので、ぜひ一度覗いてみてください。
最終的にはこれら要素を複合的に考慮しながらサンプルサイズを決めることをおすすめしています。
以上、海外でオンライン調査をするうえでの基本知識についてお伝えしました。 有意義な調査を実施するためには、日本国内のオンライン調査と同様、海外調査においても調査票作成が非常に重要な工程になります。次回は、オンライン調査で精度の高いデータを得るための、調査票作成時のポイントをご紹介します。
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