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地上波番組でF1ファンは増えるのか?~日本グランプリ地上波ハイライト視聴者の分析

今年のF1日本グランプリのチケットは発売と同時にほぼ完売したと言われており、世界的なF1ブームの中で日本国内での熱量の高まりを感じる出来事となりました。
また、今年のF1日本グランプリは2015年以来11年ぶりに地上波でハイライト番組が放送されました。筆者自身も過去の地上波番組がF1に傾倒する入口であり、今回の地上波番組をきっかけとした今後のファン層拡大を大いに期待しています。
そこで本記事では、2026年3月29日(日)に放送された決勝ハイライト番組の視聴者の来歴や事後行動(無料接点→デジタル行動→有料転換)を分析すると共に、ファン層拡大に向けた地上波番組の意義について考察します。

1. F1地上波ハイライト番組は誰が観たのか?

2026年3月29日(日)に放送された決勝ハイライト番組の視聴者を、これまでのF1との関わり方をもとに3層(新規層/復帰層/現役層)に区分しました。

図表1

決勝ハイライト番組の視聴者3区分【ベース:F1日本GP地上波テレビ番組視聴者(ライフスタイルパネル回答者)】

普段からF1を観戦している現役層を除いた86.0 %(新規層+復帰層)が、地上波番組が新たに生み出した層と言えます。これまで一般の方々が無料でF1に触れる機会が多くなかった中で、これだけの多くの新しい方々とF1の接点を作った地上波番組は意義のある取り組みであったと評価できます。

2. F1復帰層はどこから戻ってきたのか?

本記事では「最後にF1を観戦した時期が1年以上前」の人を復帰層と定義しました。ではこの復帰層が最後にF1を観戦したのはどの年代だったのでしょうか。

図表2

最後にF1を見ていた年代【ベース:F1復帰層(n=1208)】

復帰層が最後にF1を観ていた年代は2000年代と2010年代が最多でした。2000年代はミハエル・シューマッハやフェルナンド・アロンソが、2010年代はセバスチャン・ベッテルやルイス・ハミルトンが連覇を果たした年代です。10-20数年ぶりに観たF1で、アロンソ選手やハミルトン選手がいまだにトップドライバーであることに驚いたかもしれませんが、当時と今を繋ぐよい架け橋になったのかもしれません。

この復帰層には、現代のF1そのものや今回の決勝ハイライト番組についての印象や感想を、視聴していた当時と比較して回答してもらいました。
「臨場感や迫力が増した」という撮影技術の進化に伴うポジティブな意見と、「ハイライトでは物足りない」という放送時間に対するネガティブな意見が多く挙がりました。後者については「もっと観たい」という欲求であり、ひさしぶりのF1観戦自体は好評であったと解釈できます。
少数ながら特徴的な意見として「現地の盛り上がりへの驚き」が挙げられます。近年の国際映像では現地イベントの様子や観客をよく映していたり、フジテレビ独自の映像があったりと、映像を通じて若い人や女性の観客が多い現代のF1の姿が伝わった格好です。

図表3

3. 各層はなぜ観たのか?視聴後の行動は?

決勝ハイライト番組の視聴者はなぜ番組を視聴したのでしょうか。視聴理由を層ごとに確認します。

図表4

地上波テレビ番組でF1日本グランプリを視聴した理由

新規層の6割近くが「テレビをつけたらたまたまやっていた」という偶発的な視聴であることが分かります。また、「F1に興味があるから」はわずか1割程度です。これらの結果は新規層の多くは有料放送・配信だけでは接点を持てなかったことを示しており、ファンの裾野を広げる上での地上波テレビ番組の重要性を再認識できます。
復帰層では5割強が「無料であること」を理由に挙げており、地上波テレビ番組ならではのハードルの低さがひさしぶりの観戦を後押しした様子が見て取れます。また、前述の自由回答では「フルレースを観たい」「全戦を観たい」といった要望が多く挙がっており、F1への関心の復活を感じられます。地上波テレビ番組の視聴で高まった関心を、有料放送・配信を選択する理由へと丁寧につなげていく設計が重要になってくると考えられます。

次に決勝ハイライト番組の視聴後の行動を層ごとに確認します。

図表5

地上波テレビ番組でF1日本グランプリを視聴した後の行動

新規層の約4割、復帰層の約5割が決勝ハイライト番組の視聴後に何かしらの行動を起こしていることが分かります。いずれの層も約3割がWeb上で何かしらの動画を観ており、特にF1公式やフジテレビがアップしているハイライト動画を視聴しています。
また、いずれの層も約1割はSNS上で何らかの行動を起こしており、情報の閲覧だけでなく、投稿やチーム・選手アカウントのフォローといったより能動的な行動をしています。
地上波テレビ番組の視聴のみに閉じず、デジタル上の行動へと連続的に広がる構造が一部に生まれたことが分かります。

4. ファン化はどこまで進むのか?

決勝ハイライト番組の視聴者のファン化は見込めるのでしょうか。今後の意向を段階的に確認しました。

図表6

今後の意向【ベース:F1日本GP地上波テレビ番組視聴者】

まず地上波テレビ番組の継続的な視聴については、新規層の約4割、復帰層の約8割が意向を示しています。今回の地上波テレビ番組で初めて、もしくはひさしぶりにF1に触れた方々が継続的にF1に接触する接点として地上波テレビ番組の重要性が分かります。
有料 放送・配信への加入については、新規層の約2割、復帰層の約1割が意向を示しています。立場によってこの値の捉え方は変わると思われますが、特に新規層の値は筆者の想定を超えた高いものとなっています。あらゆるスポーツの有料放送・配信が当たり前となりつつある現在において、繰り返しになりますが地上波テレビ番組の視聴で高まった関心を、有料放送・配信を選択する理由へと丁寧につなげていく設計が重要になってくると考えられます。
来年の 現地観戦については、新規層の約3割、復帰層の約4割が意向を示しています。有料放送・配信で観戦した、ある意味ではすでに熱量が高い層の意向は約6割であり(F1 ファンは、どう変化している?― F1 新時代の日本グランプリ現地観戦者の変化を読み解く)、それと比べても高い水準にあると評価できます。

最後に、F1以外の国内カテゴリーへの波及の可能性を確認します。

図表7

今後の意向【ベース:F1日本GP地上波テレビ番組視聴者 】

新規層の約3割、復帰層の約6割が国内で開催される他カテゴリーにも関心を示しています。今回のアンケートではカテゴリーごとの意向は聴取していませんが、例えばSUPER FORMULAの会場では大会を重ねるごとにF1チームのキャップやウェアを着用している方が増えている印象があります。地上波テレビ番組がF1だけでなくモータースポーツそのものへの関心を喚起できたことは、各ステークホルダーが団結して協力体制を築いている国内のモータースポーツ業界にとって明るい材料かと思います。
過去の記事ではF1と比べたSUPER GTやSUPER FORMULAの魅力を分析しています。
F1ファンを次のカテゴリーへ~モータースポーツファン拡大のヒントを探る

5. まとめ

今回の調査は、「地上波テレビ番組の特徴」と「F1そのものの魅力」との相性の良さを感じられるものとなりました。視聴者の86.0 %は新規層+復帰層であり、いずれの層でも視聴後のWeb行動がある程度のボリュームで発生していることは驚きでした(いずれの層も約3割がWeb上で何かしらの動画を視聴、約1割がSNSでアクション)。
また、国内で開催されている他カテゴリーへの関心を喚起できたことは非常に興味深い結果でした。いちモータースポーツファンとしては「モタスポは1回観てもらえれば面白さが伝わる」と常々考えており、今回の「手軽な地上波テレビ番組×世界的なブームであるF1 」がそれを証明してくれたと解釈しています。
今回のF1日本グランプリ地上波番組は、F1ファンの拡大及びモータースポーツ全体のファン拡大において重要な一歩でした。


調査地域 :日本全国
対象者条件 :18-99歳男女
標本抽出方法 :弊社モニターより抽出し、アンケート配信
標本サイズ :10,771s
調査実施期間 :2026年4月3日~4月6日

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著者プロフィール

工藤 里志プロフィール画像
工藤 里志
2016年インテージ入社、モビリティ領域のアナリスト。
当時の地上波F1番組で多用されていた「最速ベッテルvs.最強アロンソ」の対立構造の見せ方に、今も影響を受けている。
強いドライバーが好き。

2016年インテージ入社、モビリティ領域のアナリスト。
当時の地上波F1番組で多用されていた「最速ベッテルvs.最強アロンソ」の対立構造の見せ方に、今も影響を受けている。
強いドライバーが好き。

著者プロフィール

武井 君枝プロフィール画像
武井 君枝
2021年インテージ入社、モビリティ領域のリサーチャー。
地上波で目にしたF1が原体験。
数ある呼び名の中でも「音速の貴公子」というネーミングが一番好き。

2021年インテージ入社、モビリティ領域のリサーチャー。
地上波で目にしたF1が原体験。
数ある呼び名の中でも「音速の貴公子」というネーミングが一番好き。

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