暮らし先読み、後読み予報~生活リズムの予兆を<n=1>からみる②~コインランドリーと高級食パン
マーケティングプロデューサーの辻中俊樹です。
<n=1>を通して得られた暮らしの文脈を可能な限り共有するために可視化・物語化していく連載企画。第2回の今回は、電動ママチャリで爆走するママのn=1の暮らしから、その文脈を読み解いた。
マスクにもアクセサリーがある
前回は暮らしの中の身近な道具の代表例としてマスクとショッピングバッグのことをあげてみた。マスクのことで少し余談をしてみる。たとえば時間帯や場所、さらには男女や年齢で特徴ある違いはあるものだろうか。
たとえば朝7時くらいの通勤時間帯の電車の中をみると、圧倒的に白いマスクが主流、ほとんど百%に近いくらいだ。それも男女、年齢層とは無縁なのである。快速電車などは特にそうで、各駅停車になると少し様相が違ってくる。同じような時間帯でも場所によって差異がでる。新幹線のホームなどは白いマスク以外の比率が上がる。昼過ぎの銀座通りなどはかなり多様になる。
さらに小学生くらいのキッズたちをみていると、逆に白いマスクはほとんどいないくらいだ。カラフルだし、古着をリサイクルしたような素敵な柄物も多い。きっとおばあちゃんの手作りなのかもと想像が働いたりもする。
私は日常的な暮らしの中の話題集めで「暮らしの中のショートショート」という、ちょっとした写真やコメントの収集をしているのだが、その中に「成程ねえ」と感じたことがあった。
マスクにもアクセサリーという工夫があるのだ。仮に“マスクホルダーネックチェーン”と呼んでおく。マスクの耳かけにつけて首からぶら下げることができるネックチェーンという訳だ。主に食事の時の“あごマスク”用だ。無造作にテーブルに置くのもポケットにしまうのもなんだかね、という想いから考えた工夫ということだ。
コロナ感染防止という健康機能軸だけでは解ききれないことがみえる。スポーツ系のマスクなどにもそんな感受性がみえたりもするが、これはポストコロナで消滅するものではないものといえる。以前から困っていた花粉症という悩みには、もっと心地よく楽しみがあるマスクがあってよかったのだ。機能はもちろんだが、暮らしの中の工夫には感心させられるものがある。
レジ袋には本当はガマンしていたのだ
ショッピングバッグにも、前回は例としてカルディのことを挙げたが、よくみているとDean&DelucaやKinokuniyaなども目についたりもする。自己主張というほどのことではもちろんないが、そのブランドが嫌いなはずはないのは明白だ。保冷タイプのショッピングバッグもたまに見ることもある。これは決して冷凍食品を入れている訳ではない。もっとおもしろい使い方をしている。これはまた別の機会に述べるが、いずれにせよ多様な使われ方をしているのだ。
スーパーのレジ袋がこのようにエコショッピングバッグにかわっていったのだが、これは有料化とエコ意識の盛り上がりだけのことではない。これまでのレジ袋の持ちにくさや、たくさん入れると指が痛くなるなどの問題をみんな我慢していただけだったのだ。これをショッピングバッグに置きかえることで難点が解消され、肩がけにすることもできるから心地よくなったのだ。このエコバッグを持ち歩くことが習慣化されると、こちらの方が暮らしにははるかに機能的な上に快適になったのである。この価値が暮らしの中に新たに定着した。
逆にこのレジ袋を使わなくなったことによる問題は、ゴミ出しの時のビニール袋がなくなったという悩みであった。ところがこれも様々な工夫をすることであっさりと乗りこえていったりもするものだ。いわゆる100均などにはこれに応えた新しい道具がいっぱい並んでいたりする。こんな暮らしの中でのつながり、連続性をみているといろいろな先読みができるものである。
電動ママチャリでコインランドリーに
さて、前回の話のメインは電動ママチャリであった。フロントのチャイルドシートには保育園や幼稚園児くらいの子供が乗り、リアの大型のシートには小学校低学年くらいの子供が乗って、さらにフロントの荷物かごにはママとキッズの荷物がたっぷり。こんな電動ママチャリは、子育て世代の必需品なのである。さらに防水、防風シートなどの様々な便利アクセサリーがこの暮らしを支えることになるのだ。
通勤前後のこの子供と一緒の爆走シーンが、彼女の日常的な日々だとするならば、そうでないシーンもとても大切である。たとえば平日休みであったり、休みの土曜日であったり、とりわけ午前中にこの電動ママチャリは、ママ一人で爆走していくのだ。平日休みならば上の子供は小学校に行っており、下の子供は保育園に預けている。ここでママのソロ爆走が始まる。ここでベストな条件は、青空が広がり激寒でないことだ。土曜日休みのパパがいれば土曜日も同様である。パパに「子供たちはよろしくね」ということができる。
いずれにせよ天気が大切な条件である。気持ちいい風の中、フロントの荷物かごとリアの空のシートに荷物満載でお出かけをする。行き先はコインランドリー。この時とばかりに家ではなかなか洗う気のしないシーツや子供の大型バスタオル、季節によってはダウンや羽毛ぶとんもたっぷり積んでお洗濯に行くことになる。
現在のコインランドリーは、清潔だし大物洗いの救世主のような所なのである。遠い昔はコインランドリーといえば、単身者の使う薄暗い洗濯場所というイメージもあったが、現在はカフェもついていたり、Wifiもあったりして、子育てママにとってはなくてならないオアシスなのである。青空、電動ママチャリ、コインランドリー、この3点セットは、子育て&清潔ライフの必需品といっていい。
高級食パンをはしごする
この仕上がり待ちまでの間、もちろんWifiで動画でも見ながらカフェで過ごすというパターンもありなのだが、ママたちはこのソロタイムをもっとアクティブに過ごしたいのだ。普段ではなかなか行けない目的地がいくつかある。スーパーに寄って必要な食材を買い出すというモチベーションではない。
その目的の重要な1つが、住宅地などに何気なくあるベーカリーである。スーパーの中や駅ビルの中にあるパン屋ではなく、新しい立地タイプのこだわりのベーカリーやパティスリーである。ブーランジェリーなどと呼ばれたりもするが、その店でこだわって焼いているパンが目的なのである。普段の仕事と子育ての生活動線からは外れているが、コインランドリーの立地からは動線がつながることになる。この時は子供を乗せていないので楽々。少しの坂道や少しの遠出なんて平気なのである。
この日の彼女はベーカリーのはしごである。大好きな“ブーランジェリーメゾンユキ.”と高級食パン好きにはたまらない“nichinichi”を1時間ほどかけて一回り。こんなベーカリーには、2斤で千円近くする極上の食パンがあったりする。もちろんお手軽な値段のバゲットやクロワッサンなどもある。コインランドリーから高級食パンという暮らしの文脈は、青空と電動ママチャリが作りだした連続線なのである。彼女の心地よさと満足度は大いに上がることになる。
おいしいパンはその日のお昼の食卓を本当に楽しいものにしてくれる。でもこんな2斤の食パンをどうするのだろうか。ここにも暮らしの連続的な文脈があるのだが、それはまた次回に。
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