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具体例で解説!インターネットリサーチの進め方~データの見方編②

これまで知るギャラリーでは、課題設定や仮説の構築から調査の企画設計、調査票の作成といった、調査実施までのプロセスを具体的な事例を用いて解説し、調査実施前の段階でリサーチの結果から得られる価値の大半が決まる、ということをお伝えしてきました。

続いて、調査実施後の、集計結果の見方や分析におけるポイントを、具体例を用いながら2回に分けて解説します。2回目のこの記事では、アンケート調査の集計結果の見方、主に、クロス集計表の見方を紹介します。

※このコンテンツは、インテージの無料セミナー「i-college」で定期的に実施している「インターネットリサーチの進め方」の一部を記事化したものです。

これまでの記事
事例で解説! インターネットリサーチの進め方~調査設計編
事例で解説! インターネットリサーチの進め方~調査票作成編①
事例で解説! インターネットリサーチの進め方~調査票作成編②
具体例で解説! インターネットリサーチの進め方~データの見方編①

データ分析の3つのポイント

はじめに、データを読む上での前提を説明します。データ分析では常にゴール(マーケティング課題・調査課題の解決)を意識することが大切です。その際には以下の3つのポイントをおさえてデータを読み込んで分析するようにしましょう。

①評価指標
調査目的や課題に沿って、どの項目や指標で評価をするかを決める必要があります。調査票を作成した時に検討しているはずですが、分析を始める前に改めて確認しましょう。

➁比較対象
分析対象を評価するのに、何と比較するかを決めておく必要があります。何と比べるのかによって評価は変わります。ブランド評価であれば、どの競合ブランドと比べるのか、時系列変化の分析ならばいつと比べるのか、といったように分析課題によって設定しましょう。

③判断基準
調査結果をどのように解釈するかの基準を持つことも重要です。
利用経験率であれば、競合と比較して10ポイントの差があることとする、などあらかじめ決めておくとよいでしょう。

分析軸の設定

ここからは、データの読み方を具体的に見ていきましょう。前回はGT表(単純集計表)をみて、大まかな傾向をつかむことを解説しました。次に基本クロス集計表で調査課題を深堀していきます。クロス集計とは2つ以上の設問項目をクロスさせて相互の関連をみるものです。例えば、「男性と女性では調査結果の傾向に違いがある」という仮説がある場合は、調査結果を男性と女性に分けて比較します。これを「性別を分析軸にする」と言います。
また、2つの設問のどちらを分析軸にするかで、集計結果のスコアも読み取れる分析内容も異なります。

【具体例で解説:調査仮説と分析軸】

「性別」と「A社と競合B社の商品の利用有無」というデータがあります。「男性と女性では調査結果の傾向に違いがある」という仮説を検証するのであれば、性別を分析軸にして、男女別の利用率を集計します(図表1)。男性は自社サービスの利用率が高く、女性は競合Bの利用率が高くなっていることがわかります。

【図表1】

では、「自社Aの利用者の男女構成比半々である」という仮説を検証したい場合はどうすればよいでしょうか。「A社と競合B社の商品の利用状況」を分析軸にして集計した結果が図表2で、自社と競合のユーザーの男女構成比を表しています。自社ユーザーの構成比はやや男性に偏っていますが、競合Bは男女半々となっておりバランスよくユーザーを取り込めていることが分かります。

【図表2】

このように、同じデータでも切り口を変えることで解釈と結果が異なるので、調査課題を鑑みてどの切り口(分析軸)で分析するのかが極めて重要です。

クロス集計表の見方

クロス集計表は、「縦にスコアを比較」「横にスコアを比較」の二つの視点があります。これも、調査課題を鑑みてどの視点で分析するのかを考えることが重要です。

【具体例で解説:クロス集計表】

図表3は年代を分析軸にして集計した「平日の利用メディア」です。「20代はテレビ視聴率とインターネット利用率のどちらが高いのか」といった調査課題を確認する時には、データを横に見て比較します。20代はテレビとインターネットをほぼ同じくらい利用していることが分かります。

【図表3】

一方、「新聞購読率は年代間でどのくらいの差があるのか」といった調査課題を確認する時にはデータを縦に見て比較します(図表4)。新聞購読率は20代が最も低く6%、60代が最も高く52%で、46ポイントの差があることが分かります。

【図表4】

サンプルサイズと標本誤差

どの設問を分析軸にするかは調査課題によって異なりますが、クロス集計をする時には分析軸に設定した各層のサンプルサイズに注意が必要です。前回の記事でお伝えしたように、サンプルサイズが小さいと、回答数が1違うだけで%の値が大きく変わるためです。例えばサンプルサイズが25の場合、回答数が1違うだけで4ポイント、2違うと8ポイントの差になってしまいます。8ポイントの差というと「大きな差」のように見えてしまいますが、この差が偶然である確率はサンプルサイズが小さいほど上昇してしまうのです。

では、調査結果の差が「偶然」なのかそうでないのかを確認するにはどうすればいいのでしょうか。そんな時に皆さんを助けてくれるのが「標本誤差」という考え方です。マーケティングにおけるアンケート調査は、調査対象としたい集団の代表者を一定規模集めて、調査対象者全体を推定するという前提で実施しています。推定である以上、実際の調査対象集団の全数に調査した場合とは一定のずれが生じます。このずれを「標本誤差」といいます。図表5は標本誤差の早見表です。

【具体例で解説:標本誤差の見方】

自社商品Aの認知率が20%で、競合商品の認知率が25%だったという調査結果があります。サンプルサイズは50です。自社商品は競合商品よりも認知率が低いといえるのでしょうか。このケースはサンプルサイズが50なので、早見表の2行目を使用します。自社商品の認知率20%の列の2行目の値は「11.1」となっています。これは調査結果の値から上下に11.1ポイントが誤差の範囲であることを示しています。つまり自社商品の認知率は誤差を勘案すると8.9%から31.1%の間にあるということになり、競合商品の認知率は25%なのでこの範囲に含まれるので、両者の認知率に差はない、と解釈できます。

【図表5】

この表を上下で比べて見ると、サンプルサイズが大きいほど誤差が小さくなっていることが分かります。また、表頭は調査結果の比率を表していますが、同じサンプルサイズでも、調査結果が50%に近いほど誤差が大きくなり、ゼロや100%に近いほど誤差は小さくなるという特徴があります。調査結果を見て「このスコア差は誤差なのか、意味のある差なのか」と迷ってしまうことがあったら、この標本誤差早見表で確認してみることをお勧めします。

さて、サンプルサイズが同じであれば、標本誤差早見表で意味のある差かどうかを確認できることは分かりましたが、サンプルサイズが異なる調査結果で意味のある差があるかどうかを確認するにはどうしたらいいのでしょうか。そのような時は「有意差検定」という統計手法があります。有意差検定は対象とするデータの性質によっていくつかの種類があり、データに適した検定方法を使用する必要があります。詳しくはこちらのページをご覧ください 。
参考: https://www.intage.co.jp/glossary/058/

相関係数を使った分析

ここまで、クロス集計表の見方と注意点を解説してきました。クロス集計は「異なる群のデータを比較して違いを明らかにする」分析手法で、言い換えれば質的な関連性を明らかにする手法です。多くの調査課題はクロス集計だけで結論を導き出せるといっても過言ではありません。ただし、アンケート調査ではこれ以外にもデータの関連性を明らかにする方法が多数あります。よく使われる分析手法にはコレスポンデンス分析や因子分析、重回帰分析などがあり、これらは複数の変数を分析対象とすることから「多変量解析」と言われています。多変量解析については、知るギャラリー記事「多変量解析のススメ」やインテージのマーケティング用語集をご覧ください。

ここでは、もう1つ知っておくと便利な分析手法をご紹介します。

2つの関連するデータのうち、一方が増加すると、他方も増加(または減少)するデータの傾向を「相関がある」と言います。そしてその強さを測る指標を「相関係数」と言います。相関係数は1.0から-1.0の間の値をとり、1.0や-1.0に近い値ほど「相関が高い」ことを示し、0に近いほど「相関がない」ことを表します。また、「一方が増加すると、他方も増加する」場合はプラスのスコアであらわされる「正の相関」で、「一方が増加すると、他方は減少する」場合はマイナスのスコアであらわされる「負の相関」を意味します。
相関係数の値は図表6のように解釈します。


【図表6】

相関係数は、エクセル関数「CORREL」やエクセルの分析ツールの「相関」で求めることが可能です。
また、散布図を作成すると変数の分布の具合から相関の有無や正負が視覚的にとらえることができます。

【図表7】

相関係数は、商品のどのような要素の評価が高いと商品の使用意向が高くなるのか、といった項目間の関係性を見たい時などにお勧めできる分析手法です。ただし、2つの要素の増減の関係性を表していますが、片方が原因で片方が結果であるといった「因果関係」を表すものではないことに注意が必要です。

終わりに

今回はクロス集計表の見方とその際のご注意点を中心にご紹介しました。本稿で紹介しなかった分析手法はたくさんありますが、適切な分析軸を設定して、クロス集計表をしっかり読み込めば、ほとんどの調査課題は解決することができます。


はじめてマーケティングネットリサーチを行う方向けに、押さえておくべきポイントを手元でご確認いただけるホワイトペーパーを作成しました。是非ダウンロードしてご活用ください。

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