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テレビCMの投資量と売上効果の関係は?3300ブランドのデータから読み解く

テレビCM投資にまつわる喫緊の課題が変化

様々なテレビCM関連データやサービスの登場で、データを活用したテレビCM出稿適正化に取り組む企業は増加しています。
弊社もi-SSP(インテージシングルソースパネル)等のテレビデータを保有しており、数多くの相談を頂戴しますが、その中で、直近は以下のような相談をいただくことが増えました。

・テレビCM投資の見直しが迫られているが、何を基準に判断すればよいか?
・テレビCM不要という極端な意見が出てきた。本当に売上効果がないのか?
・過去踏襲ではなく、本当に必要なテレビCM投資量はどれくらいか?

これまでは、自社の出稿状況を分析した上で、いかに「ターゲットユーザーが含まれる割合を高めるか?」「1リーチ当たりのコストを下げるか?」など、現在の活動をよりよくするための相談が主でした。しかし直近は、そもそものテレビCM投資の在り方を問い直す相談が増えてきているのです。
このような課題はこれまでも議論の俎上には上がっていましたが、昨今の円安・原材料高の状況を受けて、喫緊の課題になってきているといえます。

自社・競合・カテゴリ全体の売上効果分析をテレビCM投資量検討の土台に

「そもそもテレビCMを出稿するか否か?」あるいは「どのくらい出稿するか?」を検討する際には、テレビCMでどれくらい売上が上がるか?という問いに対する答えが、議論の土台として重要になります。また、その効果を自社だけでなく、競合やカテゴリ全体の傾向と比較できると、自社の位置づけを相対的に把握ができ、検討の視野や幅が広がりそうです。

そこでインテージでは、市場推移を把握できるSRI+(小売店パネルデータ)とテレビCM接触量がわかるi-SSP(インテージシングルソースパネル)データを用いて、直近4年分、約220カテゴリ・3300ブランドのテレビCM売上を明らかにしました。
消費財においては、店頭状況や単価、季節性などが売上に対して大きな影響を与えますが、SRI+が保有する情報を用いて統計処理を施すことで、それらの要因とテレビCMによる効果を切り離して分析しています。(図表1)

図表1

SRI+(小売店パネルデータ)とi-SSP(インテージシングルソースパネル)解析プロセス

実際にこの分析からどのようなことがわかるのでしょうか。シャンプーカテゴリの結果を例に見ていきます。

各ブランドのテレビCM投資量と売上を分析すると、以下のような傾向が確認できました。
①ブランドの売上規模が大きいほど、投資に対して得られる売上金額が大きい
②各ブランドの売上に占める貢献割合は、投資量に応じて増加していく

それぞれについて見てみましょう。
①ブランドの売上規模が大きいほど、投資に対して得られる売上金額が大きい
図表2はブランドの売上金額(横軸)と1GRP当たりの売上金額(縦軸)の関係性を示したプロットです。

図表2

売上金額×1GRP当たり売上金額

ブランドの売上金額が大きいほど、1GRPで得られる売上金額も大きくなる傾向が見られ、例えば、同程度の投資量でも新ブランドと売上規模が大きいロングセラーブランドでは、後者の方が得られる売上が大きいという結果になりました。
テレビCMは広いリーチをもたらす、マスアプローチが得意な施策です。
そのため、ユーザー数が多く店頭が充実している、規模の大きいブランドの方が、同じ投資量でより大きい売上リターンが期待できる、というのが定量的に示唆された結果だと考えられます。

➁各ブランドの売上に占めるテレビCMの貢献割合は、投資量に応じて増加していく
図表3は投資量(横軸)と各ブランドの売上に占めるテレビCM貢献金額割合(縦軸)の関係性を示したプロットです。

図表3

推定GRP×テレビCM売上貢献割合

投資量の増加に伴い売上貢献割合が高まる傾向が見られ、投資量に応じて、各ブランド一定の割合の売上貢献が見込めると考えられます。ただし、貢献割合には幅があり、この割合が高ければ高いほど、テレビCMがそのブランドの成長や規模を維持するのに欠かせない存在になっていると言えるでしょう。

ブランドの売上金額が大きい程、テレビCM投資に対して得られる売上金額が大きく、投資量が多いほどブランドの売上に対するテレビCMの貢献割合が高まることがわかりました。それでは、投資に対して得られる売上金額と、各ブランドのテレビCM売上貢献割合の2指標で全体を俯瞰すると、どのような示唆が得られるのでしょうか。2指標でプロットした図を4象限で分けてみます。(図表4)

図表4

1GRP当たり売上金額×テレビCM売上貢献割合

それぞれの象限は下記のような位置づけと解釈ができます。

・第1象限:売上/成長の両面で有効
テレビCMによって得られる売上金額が大きく、さらに、そのブランドの成長や規模の維持においてもテレビCMが重要な役割を占める。

・第2象限:成長に有効
テレビCMによって得られる売上金額は大きくないが、そのブランドの売上に占める貢献割合は高く、テレビCMが成長の原動力となっている。

・第3象限:売上/成長の両面で課題
そのブランドにおいてテレビCMの重要性が低く、売上リターンも小さい。

・第4象限:売上リターンが大きい
ブランド規模が大きいため、テレビCMの貢献割合は高くないが、得られる売上リターンが大きい。
※この象限にはロングセラーブランドが多く見られた。

このデータに基づけば、例えば、第1象限のブランドへの投資は積極的に行いながら、短期的な売上リターンが重要な局面では、第4象限のブランドへの投資を増やす。あるいは、中期的な視野での成長を目的とする場合は、第1象限のブランドに投資する、といった見方や議論にもつなげることができそうです。
このように、テレビCMの売上効果を俯瞰して見渡すことで、関係者で共通認識を醸成しながら検討を前に進めることができるのではないでしょうか。

カテゴリ全体との比較で見えてくる課題

これまでは自社の状況を精緻に分析し、課題の把握と改善を繰り返しながら、成果を高めていくやり方が主でした。
しかし、カテゴリ全体や競合と比較する事で、これまでとは課題の捉え方が変わるきっかけにもなるかもしれません。

以下の(図表5)は、ある同規模の2ブランドを比較した表です。

図表5

テレビCM売上効果 ブランド間比較

投資量はBがAの2倍となっていますが、得られる売上金額はAが上回っています。つまり出稿に対する売上リターンがAの方が大きいのです。実際に売上リターンの大きさを表す「1GRP当たりの売上」を確認すると2倍以上となっています。
また、カテゴリ全体の傾向から算出した理論値(図表6)と比較すると、Aはそれを上回り、Bは下回る状況となっています。

図表6

推定GRP×テレビCM売上貢献割合

この結果を受けると、ブランドBは投資量の大幅な見直しやクリエイティブの変更など抜本的な改善が必要になるかもしれません。また、改めてターゲットを見つめ直し、テレビCM以外のメディアの有効性を広く検証するなど、より視野を広げた検討も求められそうです。逆にブランドAは、テレビCMの売上効果が高いため、大胆に投資量を増やす判断につながる可能性もあります。

上記のように、競合やカテゴリ全体に視野を広げることで、自社の結果だけの分析では得られづらい気づきや発見ができ、CMの在り方の見直しにもつながることが期待されます。

まとめ

テレビCMは投資の規模・得られるリターンの大きさの両面で、依然として重要なメディアであることは言うまでもありません。しかし、それが故に、これまでの経験や感覚値とずれてくると、様々な意見が飛び交います。そんな中で大胆に舵取りをするには、共通の羅針盤が必要です。自社だけでなく、競合やカテゴリ全体まで視野を広げて、テレビCMの売上効果を俯瞰できれば、まさに羅針盤として活用が期待できるのではないでしょうか。

インテージでは、本コラムでご紹介したアプローチをはじめ、広告コミュニケーション課題の解決をご支援する、様々なアセットやソリューションを保有しております。
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【テレウリ】
インテージが長年蓄積してきた小売店パネルSRI+®の膨大な売上データとメディア接触ログi-SSP®のCM接触量データを用い、これまで難しかったテレビCMの売上効果の可視化を実現。カテゴリ内の傾向や自社・競合状況の把握を通じ、出稿量や出稿計画の改善に結び付けられる分析ツールです。

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