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2030年の未来シナリオ〜生活者の意識に潜むギャップからビジネスヒントを探る〜

私たちの未来に目を向けると、超高齢化社会や社会保障費の増大、年金不安など、さまざまな社会課題が浮かび上がる。一方で、NISAやiDeCoに代表される資産形成支援策や、AI・ロボットの活用など、来るべき未来に備える動きも広がっている。こうした中、生活者がこれから先の社会をどのように見ているかは重要だ。企業がどのような未来を前提に事業や商品を構想するか。この判断そのものが、これからの成長を大きく左右していくからである。
本調査では、2030年の未来シナリオを生活者の意識から「その未来は実際に起こりそうか(実現可能性)」「起こってほしいか(望ましさ)」「自分の暮らしに関係があるか(自分ごと化)」の3つの観点から捉えた。この3軸で整理することで「望まれているが実現しそうにない未来」など単純な期待や予測では語れない、生活者の意識に潜むギャップを可視化し た。すると、「実現すると思う未来」と「望ましい未来」、そして「自分に関係がある未来」は、必ずしも一致しないことが見えてきた。本記事では、そのギャップにも着目しながら生活者への価値をどこで提供できるか、メーカーやサービサーにとっての事業機会のヒントを探っていく 。
なお、本調査は15~74歳の男女2,563名を対象に実施した。

1. 2030年に向けた7つの未来仮説

まず 、生活者が未来をどう受け止めているのかを可視化する目的で、国民生活に関する世論調査(令和6年8月)他、官公庁資料や書籍を元にキーワードを抽出・テーマに集約し、7つの未来シナリオとして整理した。これらは、マクロトレンドを生活者目線に落とし込み、未来への不安と期待の両方を含みながら、業界横断で比較できる未来シナリオとして作成されている。

調査では、これらの未来シナリオを次の3軸で評価した。

「実現すると思う未来」が「望ましい未来」であるとは限らない。また、「自分に関係がある」と考えていない可能性もある。これらを分けて捉えることが、未来の社会における生活者の真の期待や企業が取り組むべきテーマを見つける手がかりになると考える。

2. 生活者が「実現すると思う未来」

実現可能性の観点では、全体(Z世代からシニア計 )で上位に入ったのは
1位:❷多くのお年寄りが「現役世代化」する
2位:❻AI/ロボットが生活に浸透している
3位:❹「健康=資産」が当たり前になる
だった(図表1)。
多少の順位の変動はあるものの、どの世代でも上位に入っている。

図表1

これらは、労働者人口の減少に伴う人手不足に対して、シニアの活躍や生成AI・ロボット技術がその解決策として期待される等の社会変化から、生活者からみて現実味をもって「実現しうる未来」として捉えられている。

たとえば、❹「健康=資産」の背景 には、運動習慣の定着と健康不安の両方がある。2026年現在、「週1回以上運動をしている人」が40.8%と一定数存在していることに加え(図表2)、2030年の制約・ストレスとして「健康や体力の低下による制約」を懸念している人の割合が「とてもそう思う/ややそう思う」64.4%と高い(図表3)。将来の健康不安があるからこそ、健康は維持・投資すべきものと捉えられていると言える。

図表2

現在、運動(スポーツ、ジム、ウォーキング、ヨガ教室など)をどの程度の頻度で行っているか

図表3

2030年の自身の生活に「健康や体力の低下による制約」が想定されるか

3. 「望ましいのに実現しそうにない未来」

ここからが、本調査において事業視点で特に重要なポイントである。「望ましいと思われていながら、実現しそうにない未来」は未充足ニーズが最も大きい領域だからだ。今回は「望ましさ」に関して聴取しており、その結果のランキングを以下に示す(図表4)。なかでも着目すべきは、「❺日本の産業・地域を支える選択をする」という未来シナリオである。実現可能性では、Z世代・Y世代で7位、X世代・シニアで4位とやや低位につけているものの、「望ましさ」に関しては世代を横断して2位と上位に位置している。❺日本の産業・地域を支える選択は「そうあってほしい」と期待されている未来であり、日本の産業や地域の活性化・復興は全世代にとって強く希求される未来であると言える。

図表4

調査では、全体で「購入メーカー」「品質」などにおいて7割以上が日本国内のメーカー・製品を支持(図表5)。生活者目線では、こういった国内メーカー・製品への信頼がこの未来シナリオを支えていると言える。一方、「投資信託」や「美容・ファッション」においては約半数が「(国内・海外の)どちらともいえない」と日本国内、海外ともに支持されていた。

図表5

2026年現在の国内⇔海外に関する価値観

それではなぜ、Z世代・Y世代 において他の未来シナリオより❺日本の産業・地域を支える選択の実現可能性は相対的に低いのか?調査では、「自分ごと化」についても聴取している 。これらの世代において❺の「自分ごと化」の順位は他の未来シナリオよりも低めである(図表6)。「そうあってほしい」という気持ちがあっても実現に向けた当事者としての貢献に関してはイメージが希薄なのではないか。今後、日常生活において国産品の購入や地産地消といった消費者としての体験を重ねる、国内企業への就職や就業を経験することによって、日本の産業や地域の活性化・復興についても、Z世代・Y世代が自分ごととして捉えなおすことができるのではないだろうか。

図表6

4. 未来シナリオを事業・商品へどう落とし込むか

本調査では、「このような未来が実現すると、どのような気持ちで毎日を過ごせると思うか」も聴取しており、ここから、未来シナリオごとに生活者が期待する生活の重視点・価値観を確認できる(図表7)。
たとえば、「❹「健康=資産」が当たり前になる」という未来シナリオには「心身ともに元気で活動する」「安心して暮らせる」という気持ちが結びつきやすい。実現可能性、望ましさ、自分ごと化のギャップにも着目しつつ、「安心して暮らせる」ことの価値提供を世代や行動頻度、2030年の制約・ストレスもふまえて検討することで事業・商品化のヒントが得られる。

図表7

それぞれの未来が与えてくれる心持ち(複数回答・Top5)

一方で、生活の価値観、重視点から未来シナリオを導くアプローチもある。「安心して暮らせる」気持ちを叶える未来シナリオをピックアップして、そこで実現したい情緒価値から商品化を考える。「生活者がこのような気持ちで過ごすためにはこのような未来シナリオ」という方法もあるかと思う。例えば、介護が必要な人に対して、ロボットによる日常生活の支援などを提供することにより、生活者は「安心した暮らし」に近づくことができる、というアプローチである。

5. まとめ

2030年の未来シナリオは、単なる予測ではない。生活者がどの未来に実現可能性を見出し、期待を寄せているか、自分ごととして捉えているかを示す、ニーズの表れである。また、今回の調査では、全体を通して、各未来シナリオに関する実現可能性、望ましさ、自分ごと化ともに年代が若いほどスコアが高かった。これは、未来に対してのリアリティや関心の高さ、さらには未来を創っていくという当事者意識の表れとも受け取れる。未来を切りひらくとき、Z世代をつかまえることの重要さが改めて感じられる。
企業はどういった未来シナリオを選び取るか、また、選び取ったシナリオに対して、どのような事業、商品、サービスを創造していくのかを考えることが重要である。これからの成長を左右するのは、「何が起こるか」を受け身で待つことではなく、生活者に受け入れられうる未来を見極め、その未来に向けて自ら事業を描くことにある。


<上記に含まれないダウンロードレポート掲載項目>
未来シナリオの作成手順から各シナリオの支持者像、使い方など、活用いただける情報を盛り込んでおりますので、ぜひ資料ダウンロードしてご覧ください。
・未来シナリオの作成
・未来シナリオギャップランキング
・未来シナリオ支持者のペルソナ(一覧・例)
・未来シナリオが満たす心持ち
・未来シナリオの使い方(事業・商品への落とし込み)
また、個別の集計、ご説明については弊社営業担当や問合せ窓口までご連絡ください。


調査概要
調査地域              :日本全国
対象者条件          :15~74歳男女個人
調査実施時期      :2026年3月13日(金)~2026年3月17日(火)
標本抽出方法      :マイティモニターより適格者を抽出

<スクリーニング調査>
標本サイズ:n=5,275
※国勢調査に基づき性別・年代を人口構成に合わせて回収

<本調査>
標本サイズ:n=2,563
ウエイトバック集計:有り(本調査回答者に対して国勢調査に基づき性別・5歳刻み年代の性年代構成比をもとに実施)
※本調査条件…2030年に自分が同居しているであろう、同居家族(単身含む)を回答できた人

著者プロフィール

高崎 綾子(たかさき あやこ) 株式会社インテージ マーケティングパートナー第2本部 営業推進部 未来共創センタープロフィール画像
高崎 綾子(たかさき あやこ) 株式会社インテージ マーケティングパートナー第2本部 営業推進部 未来共創センター
米国大学院修了後、現地でマーケティングに従事したのち、2013年(株)インテージ入社。消費財、耐久財、サービスなど多方面にわたり、SNSをはじめとする非構造化データのリサーチへの活用に取り組んできた。
業界・企業・生活者それぞれの視点をつなぎ、価値の広がりを生み出すことを大切に日々、プロダクト開発や共創の実現に向けた取り組みを行っている。

米国大学院修了後、現地でマーケティングに従事したのち、2013年(株)インテージ入社。消費財、耐久財、サービスなど多方面にわたり、SNSをはじめとする非構造化データのリサーチへの活用に取り組んできた。
業界・企業・生活者それぞれの視点をつなぎ、価値の広がりを生み出すことを大切に日々、プロダクト開発や共創の実現に向けた取り組みを行っている。

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