

※この記事は経済産業所(RIETI)のコラムに一部加筆・修正して掲載しています
インテージリサーチではRIETIと共同で、2022年度以降、毎年ふるさと納税に関する実態調査を行い、その結果を発信してきました(注1)。本年度も、2025年1月から12月にふるさと納税制度を利用した全国10,850人を対象に最新調査を行いました。
2025年は10月以降の、ポータルサイトから寄附者に還元されていたポイントの付与が禁止となる制度改正を契機に、寄附時期が大きく前倒しされるなど、利用行動に変化がみられました。この記事では、2025年のふるさと納税の利用率、返礼品ランキングの構造、寄附のタイミング、制度改正の影響について、今夏の総務省公表に先立ち最新動向をいち早くお届けします。
これまでのふるさと納税実態調査の記事はこちらからご覧ください。
ふるさと納税は税制優遇制度のひとつですが、他の制度と比べてどの程度利用が進んでいるのでしょうか。図1は、年収300万円以上の生活者約5万1千人を対象に実施した「ふるさと納税実態調査」の結果で、各種税制優遇制度の利用率の推移を表しています。
図表1

2025年のふるさと納税利用率は37.5%で、他の制度と比較して突出しています。2022年の調査時点では、28.0%でした。直近3年間で10%ほど利用率が伸びています。また、調査の設計上(注2)、総務省の発表から計算した利用率よりも高いですが、それでも4割程度であり、新規利用者が増える余地がまだまだあります。
2024年1月から始まった新NISAは、1年目は34.4%、2年目は31.4%と利用率が下落しています。円安や生活防衛、将来の備えのための投資意欲が高まっている一方で、昨今の物価高により、生活コストが上がり、投資に回す余剰資金の余裕がなくなっている様子がうかがえます。ふるさと納税は、実質2,000円の自己負担で返礼品を受け取ることができる仕組みから、家計の負担を軽減する手段の一つとして注目されています。物価高が続くなか、ふるさと納税の活用の仕方を改めて見直す人も増えているのではないでしょうか。そこで次に、返礼品がどのように選ばれているのかを見ていきましょう。
図2は、2025年1月~12月にふるさと納税を利用した10,850人に対し、「ふるさと納税で選んだ返礼品のジャンル」をすべて回答してもらった結果の上位10項目と、本年新たに聴取した「具体的な品目」の上位10項目を示したものです。例年、人気の返礼品のジャンルは固定化されつつありますが、品目選択に偏りがあるのか、いろいろな品目が選ばれているのか、返礼品ジャンルと品目とを併せてみてみましょう。
図表2

例年と同様、ジャンル別に見ると「魚介・海産物」(39.7%)が最多であり、次いで「肉」(36.8%)、「米」(28.7%)、「果物」(23.6%)と続きます。上位ジャンルの顔ぶれ自体に大きな変化はありませんでした。
本年は新たに、品目単位でもランキングを整理しました。品目別では1位が主食の「米」(27.6%)、2位が「牛肉」(25.4%)となりました。一方で「魚介・海産物」は特定の1品目に人気が集中するのではなく、いくら・鮮魚(赤身)・貝・うなぎ・干物など複数の品目が上位に分散してランクインしていることがわかります。
また、ジャンルで上位に入る「果物」や「日用品」は、品目単位で見ると特定の品目が選ばれています。日用品ではトイレットペーパーが品目別で3位に入るなど、生活必需品への集中がみられます。果物ではシャインマスカットなど特定の高付加価値商品が目立ちます。
何が「1位」となるかは、どの粒度で集計するかによって変わります。返礼品のジャンル全体の規模と、個別品目への集中・分散という二つの視点を併せることで、返礼品選択の構造が立体的に理解できます。
続いて図3で寄附のタイミングを見てみましょう。
図表3

ふるさと納税制度の改正のなかった2024年は12月が50.6%と最も高く、典型的な年末集中が確認されました。改正のあった2023年も、10月施行の寄附募集費用規制(注3)により前倒しはみられましたが、12月が依然ピークでした。
これに対し2025年は、9月の寄附割合(41.1%)が12月(29.1%)を上回りました。これは、2025年10月1日施行の「ポイント付与を伴う寄附募集の禁止」(注4)を前に、駆け込み寄附が9月に集中した結果であると考えられます。2023年と2025年の違いは、制度改正によるポイント付与禁止により、利用者の経済的メリットに直接影響したかどうかにあります。2025年は寄附の山そのものが移動し、時期の構造が変化しました。
図3で示したように、制度改正は寄附時期を前倒しさせる影響を与えました。
続いて、ふるさと納税に対する不満を確認してみましょう。
2025年にふるさと納税で寄附をした人のうち、ふるさと納税に対して「特に不満はない」と回答したのは、23.4%でした。
図4は、2025年のふるさと納税に対する不満や改善点(複数回答)の上位5項目を示しています。図4の各割合は、不満や改善点を挙げた8,311人を分母として集計しています。
図表4

図4より、最も割合が高かった不満項目は、「自分の寄附金の上限額がわかりにくい」(40.1%)でした。この傾向は過去調査でも同様でした。
また、「制度の変更によるお得感の減少」(33.3%)や「制度が頻繁に改正される」(24.9%)といった制度の改正に関連する項目も上位に位置しています。利用者の不満は改正の内容そのものに限らず、制度の分かりにくさや安定性にも向けられています。
さらに、ポータルサイトについても28.6%が「種類が多すぎる」との回答がありました。選択肢の多さは利便性を高める一方で、比較や判断の負担につながっている可能性があります。
制度自体のわかりづらさにも不満があり、2025年も制度改正によりお得感が減少したふるさと納税ですが、図5では、2026年のふるさと納税とポータルサイトの利用意向を見てみましょう。
図表5

「これまでと同じポータルサイトを使う予定」との回答が83.4%に達しました。ふるさと納税をやめると回答した割合は2.4%にとどまっています。
制度改正に対する不満は一定程度みられるものの、ふるさと納税制度そのものと利用するポータルサイトについては、来年度の利用意向が大きく変わる兆しは確認されませんでした。既存の利用者は、返礼品の内容や実質的なメリットを重視しており、不満があっても制度利用を継続する傾向がうかがえます。ふるさと納税は一定程度、習慣化した行動として定着しているとみられます。
2025年度の制度改正は寄附のタイミングを例年とは異なる形に動かしました。一方で、改正への不満はみられたものの、2026年度の利用意向に大きな変化は確認されませんでした。
制度改正の有無にかかわらず、不満の第1位は一貫して「自分の寄附金の上限額が分かりにくい」でした。これは一時的な変更とは別に、制度設計に内在する課題を示しています。寄附上限額は年収や家族構成に依存し、正確な控除可能額は年末まで確定しにくく、「いくらまで寄附できるのか」が事前に明確でないことは、利用に伴う不確実性を高めます。
したがって、制度改正の方向性を議論する以前に、まず取り組むべきは利用者が感じている不確実性の低減であると考えます。控除見込額の早期提示など、制度をより分かりやすくする仕組みは、利用拡大にも資する可能性があります。
ポータルサイトに求められる役割は、従来のポイント還元やキャンペーン訴求から、寄附の意思決定のしやすさを軸とした価値提供へと移行していくことだと考えます。寄附上限額のわかりづらさに対しては、将来の残業時間見込みを入力することで控除額を詳細に算出できる仕組みや、「あと○円寄附できる」といった残額ベースでの可視化など、上限を起点に意思決定できる設計により、寄附者の意思決定がスムーズにできると考えられます。
そして、返礼品提供事業者は、品目ごとに金額調整しやすいラインナップを用意することで選ばれる確率を高めることができるでしょう。寄附金額に応じて内容量・数量を段階的に設定することで、生活者は寄附上限額に合わせて無理なく選択でき、結果として満足度やリピートにつながる可能性があります。
制度が成熟段階に入った今、公的機関に求められているのは新たな改正によって行動を大きく変えることではなく、制度の透明性と安定性を高めることであり、事業者に求められているのは、寄附者の意思決定の不確実性を一つずつ取り除くことでしょう。
それぞれの立場で「分かりやすさ」を積み重ねていくことが、結果として制度全体の満足度を高めることにつながるでしょう。
注1 著者らのこれまでの発信
2022年度ふるさと納税実態調査について
小西葉子・伊藝直哉・伊藤千恵美「これからどうなる?ふるさと納税~ふるさと納税実態調査①~」、インテージ「知るギャラリー」、2023年10月10日
小西葉子・伊藝直哉・伊藤千恵美「自治体・返礼品ランキングからみるふるさと納税~ふるさと納税実態調査②~」、インテージ「知るギャラリー」、2023年12月22日
小西葉子・伊藝直哉・伊藤千恵美「ふるさと納税の現在地~2つの調査結果より」、RIETIコラム、2023年11月17日
小西葉子・小川光・伊藝直哉・伊藤千恵美「ふるさと納税におけるワンストップ特例制度の効果検証:寄附先の集中と制度の満足度に与える影響」、RIETI-DP 24-J-009, 2024年3月
2023年度ふるさと納税実態調査について
小西葉子・伊藝直哉・伊藤千恵美「ふるさと納税1万人調査!利用者の本音と最新トレンド~ふるさと納税実態調査③~」、インテージ「知るギャラリー」、2024年11月12日
小西葉子・伊藝直哉・伊藤千恵美「もっと知りたい!ふるさと納税 いつにする?どこにする?なににする?~ふるさと納税実態調査④~」、インテージ「知るギャラリー」、2024年12月6日
2024年度ふるさと納税実態調査について
小西葉子・伊藝直哉・伊藤千恵美「速報!2024年度ふるさと納税の最新動向 ~ふるさと納税実態調査⑤~」、インテージ「知るギャラリー」、2025年6月6日
注2 本調査では、年収300万円以上を対象としている。調査対象の詳細については【調査概要】(スクリーニング)を参照。
注3 総務省 ふるさと納税の次期指定に向けた見直し(報道資料)
注4 総務省 ふるさと納税の指定基準の見直し等(報道資料)
【調査概要】
(スクリーニング)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:20~64歳男女/有職者/個人年収300万円以上(※)
標本サイズ:n=51,284(令和2年「国勢調査」と令和5年「賃金構造基本統計調査」から算出した人口構成比(性年代×エリア×有職者×個人年収300万円以上)に準拠して回収)
調査実施時期:2026年1月15(木)~2026年1月22日(木)
(※)総務省の「全額(2,000円を除く)控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」に従い個人年収300万円以上を対象者条件と設定した。
(本調査)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:スクリーニング回答者のうち、2025年1月~12月にふるさと納税制度で寄附を行ったと回答した方
標本サイズ: n=10,850
調査実施時期:2026年1月28(水)~2026年1月30日(金)

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