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ファンデーション ブラシで塗るか、手で塗るか?~メイクツール市場拡大の兆し~

2025年の@cosmeベストコスメアワードにおいて、ファンデーション用パフが第2位、ファンデーション用ブラシが第8位にランクインした※1。数多の製品がひしめくコスメ市場においてメイクツールが総合10位内にランクインするのは、同賞始まって以来の快挙である。
本稿では近年のメイクツール市場にスポットをあて、市場拡大の要因や展望、さらにはメイク行動全体の変容を紐解いていく。

1. メイクツール市場の動向

まず初めに、直近3年におけるメイクツール市場の動向を確認していく。図表1は、インテージのSRI+®(全国小売店パネル調査)より、「スポンジ・パフ」「フェイスブラシ」の売上を年別に比較したものである。これをみると、どちらのカテゴリーも年々売上を伸ばしていることが分かる。
アップトレンドが少なくとも2年にわたって継続していることから、足元の売上変化は、いわゆる「バズり」による一過性の現象とは考えにくい。メイクツールに対する一定の需要が定着しつつあり、市場は今後も緩やかな拡大基調を維持していく可能性が高いと推測される。

図表1

「スポンジ・パフ」「フェイスブラシ」 金額市場規模トレンド

2. メイクツールを使っているのはどんな人?

では、実際にどのような人がメイクツールを使っているのだろうか。図表2は、インテージのSLI®(全国女性消費者パネル調査)より、女性15歳~79歳における「スポンジ・パフ」「フェイスブラシ」の平均購入金額(100人あたりの平均値)を年代別に表したものである。「スポンジ・パフ」「フェイスブラシ」のいずれのカテゴリーにおいても、この3年間で購入金額は上昇している。年代を問わず伸びがみられるが、「スポンジ・パフ」は30代、「フェイスブラシ」は40代の増加が顕著であり、他の年代と比較して購入水準も高い。メイクツールは化粧を施すために必須ではないため、メイクアイテムに投資できる金額の比較的高い年代で購入規模が上がるものと推測される。

図表2

「スポンジ・パフ」「フェイスブラシ」年代別 平均購入金額トレンド

さらに、「スポンジ・パフ」「フェイスブラシ」の購買ボリュームの内訳をベースメイクカテゴリーへの投資額別に見たものが図表3である。図表から明らかなように、ベースメイクへの投資額にかかわらず、「スポンジ・パフ」「フェイスブラシ」の購入金額は伸びている。

図表3

「スポンジ・パフ」「フェイスブラシ」ベースメイク投資額別 購入規模トレンド

図表2、3から、アイテムによって年代差がみられるものの、メイクツールの使用は幅広い年代に浸透してきており、またメイクツールの使用がメイク投資額の高い層≒メイクへの関心が高い層だけでなく、メイク投資額の低い層≒メイクへの関心が低い層にまで広がっていることがみてとれる。

3. メイクツール市場拡大の背景は?

ここからはメイクツール以外のカテゴリーや社会変化にも目を向けながら、この潮流の背景にある要因を考察していく。
@cosmeアワード2025で第2位を受賞したアイテムは、主にファンデーション使用時に使われる商品であった。では、ファンデーションそのものの市場にはどのような変化がみられているのか。
図表4はインテージSRI+のデータを用い、2023年4月以降の「ファンデーション」売上の形状別内訳を時系列で表したものである。最も顕著な変化が見られたのはパウダー形状であり、2023年からの3年間で割合が12.7%低下している。一方、リキッド形状とクリーム形状はそれぞれ10%前後の増加がみられている。一般的にパウダー形状の製品にはパフが付属する一方で、リキッド形状やクリーム形状の製品にはツールが付属しないケースが多い。そのため、これらの形状を使用する消費者が別売りのツールを購入するようになったことも、メイクツール市場拡大の背景の一つとして考えられる。

図表4

ファンデーション 形状別 売上推移

また、SNSにおける動画コンテンツの普及による影響も大きいだろう。YouTubeやTikTokといったメディアで活躍する美容系インフルエンサーの多くは、メイクアップ動画の中でツールを用いている。こういった動画に日常的に触れることで、消費者の間でもメイクツールの使用が当たり前となり、市場の定着に貢献している可能性が挙げられる。 さらに、コロナ禍を契機に「手指には細菌が付着している」「手で直接触れる行為は不衛生」という認識が生活者の間で広く浸透した点も、メイクツール市場を下支えした要因の一つと考えられる。指で塗布するよりもツールを使うほうが清潔だという意識が広がり、パフやスポンジの使用が相対的に増えてきた可能性がある。同じ流れの中で、使い捨てタイプや交換前提のアイテムが好まれるようになったことで買い替えが進み、市場全体の売上拡大にもつながった面があったと考えられる。

4. 日本国内にとどまらないメイクツール市場の盛況

メイクツール市場の盛況は、必ずしも国内に限ったトレンドではない。Statista※2の推計によれば、世界のメイクツール市場は中長期的に堅調な成長が見込まれており、安定した需要拡大が続いている。2019年から2026年の動向に目を向けると、EU・ASEAN・米国のいずれの地域においてもCAGR(複合年間成長率)はプラスで推移しており、なかでもASEANは4.64%と相対的に高い成長率を示している。こうした背景には、ビューティーテックの進展による付加価値の高い商品の登場、SDGsの潮流を受けたサステナブル素材の製品拡大、そしてEC・SNSを起点とした購買行動の定着といった構造的な変化がある。こうした世界的な潮流を踏まえると、どのような強みをもって市場と向き合うかが、各国・各ブランドにとって重要な論点となる。高い技術力に加え、熊野筆に代表されるような、職人の手仕事によって生み出される化粧筆の技術や美意識を掛け合わせることで、日本ブランドならではの価値を訴求し、海外市場におけるプレゼンスを高めていく展開も十分に考えられる。

5. さいごに

本稿で見てきたように、メイクツール市場の成長は、特定のヒット商品や一過性のブームによるものではなく、メイク行動そのものの変化と密接に結びついている。ファンデーションの形状変化、SNSの動画コンテンツを通じた使用習慣の一般化、衛生意識の高まりといった複数の要因が重なり合い、ツールは「補助的な存在」から「メイクに欠かせない要素」へと位置づけを変えつつある。こうした潮流は日本国内にとどまらず、海外市場でも共通して観察されている点は注目に値する。今後は、メイクツールを単なる消耗品としてではなく、体験価値や美意識を体現するプロダクトとしてどう捉え直すかが、ブランドや企業にとって一つの論点となっていくだろう。

※1 @cosmeベストコスメアワード
※2 Statista「Makeup Tools Market Trends 2019-26」(参照日:2026年4月)

関連サービス

【SRI+®(全国小売店パネル調査)】
国内小売店パネルNo.1※1 のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約6,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データです。
※ SRI+では、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません
※1 2025年6月現在

【SLI®(全国女性消費者パネル調査)】
全国の15~79歳の女性約4万人の消費者から継続的に化粧品やヘアケア用品、下着などといった美と健康に関連した買い物情報を収集し、蓄積したデータベースです。「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで、購入したのか」という消費者の購買状況を知ることができます。
※バーコードがない商品に関して仮コードをセットすることで、ネットや通信販売系の商品も集計可能です。
※SLIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開しておりません

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著者プロフィール

納谷 知都
株式会社インテージ
マーケテイングパートナー第1本部 ビジネス・ドライブ1部3グループ
2024年に株式会社インテージへ入社後、化粧品業界を担当。国内外のカスタムリサーチにおいて、調査企画から分析・報告までを一貫して手がける。
インサイト抽出と分析設計を強みとし、グローバル視点で企業のマーケティング戦略立案を支援。

株式会社インテージ
マーケテイングパートナー第1本部 ビジネス・ドライブ1部3グループ
2024年に株式会社インテージへ入社後、化粧品業界を担当。国内外のカスタムリサーチにおいて、調査企画から分析・報告までを一貫して手がける。
インサイト抽出と分析設計を強みとし、グローバル視点で企業のマーケティング戦略立案を支援。

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