ポストコロナを象徴 「2023年上半期、売れたものランキング」
2023年も折り返し地点となりました。今年の上期はどのようなものが売れたのでしょうか。全国約6,000店舗より収集している小売店販売データ、SRI+®(全国小売店パネル調査)で、日用消費財の中で何が特に売れたのかを振り返ります。
目次
2023年上半期好調なのは「自身で感染症対策」のためのカテゴリー
図表1は2023年5月までの日用消費財カテゴリーの、前年比ランキングです。
図表1
1位となったのは昨年上半期同様、検査薬※1でした。前年同時期比で245%と大幅に数字を伸ばしており、その主因はコロナ用の抗原検査キットです。昨年後半から一気に売り上げを伸ばした検査薬は、感染者が増えた今年1月には前年同時期比508%を記録しました(図表2)。ただし、その後は徐々に落ち着いた数字となっています。
※1:検査薬に含まれる「コロナ用の抗原検査キット」は、医療用・一般用(OTC)で、弊社で判明できた製品のみ(研究用の抗原検査キットは除く)
図表2
3月にマスク規制が緩和され、5月には感染症分類が5類に引き下げられるなど、明らかに今までとは違う状況になる中、上位に入ってきているのが医薬品です。6位・総合感冒薬(144%)は昨年末から今年初めにかけて外国人の大量購入が話題になりましたが、3月以降も前年に比べて高い状態をキープしています。同じく8位・鎮咳去痰剤(138%)、10位・口腔用薬(134%)も今年に入ってから前年を大きく上回る状態が続きます。
5類になって外出も増え、マスクも外れる中で、コロナ以外にもインフルエンザや風邪などの感染者数は増加している様相も見られます。下半期も個人での対策として、これらの商品は伸びていくかもしれません。
好調カテゴリーに見るインバウンド需要の復活の兆し
2位の強心剤(172%)、4位のビタミンB1剤(153%)に共通するのは、コロナ前には訪日外国人に人気でインバウンド需要を引っ張っていたということです。コロナ1年目の2020年には販売苦戦したランキングで強心剤は3位(63%)、ビタミンB1剤は10位(81%)と、外国人旅行客減の影響を受けていましたが、様相が一転。特に外国人旅行客の利用が多いインバウンド店※2に限ってみると強心剤は前年の約10倍、ビタミンB1剤も9倍近くまで数字が跳ね上がっていました。12位・整腸剤(131%)は国内需要も堅調ですが、インバウンド店では約3倍に増えているなど、外国人旅行客が一部商品の消費を底上げしている状況が見て取れました。
※2 インバウンドブランド(インバウンドで購入されることの多いブランド)の売り上げ構成比の高いドラッグストア
復調続く外出需要コロナ前超えのカテゴリーも
インバウンド需要の効果が大きい商品とともに、コロナで大きな影響を受けたのが、マスクで隠れる部分の化粧品でした。3位・口紅は2021年にはコロナ前の3分の1ほどまで売り上げが減りましたが、今年上半期は前年比158%まで復活し、コロナ前と比べても約8割まで戻ってきています。5月には前年比2倍近くまで増えており、今後外出増やマスクの使用頻度の低下などが重なれば、更なる上昇も期待できそうです。9位・ほほべにについても134%と伸びていていました。
ちなみに過去2年間の上半期売れたものランキングは図表3のようになっており、上位の顔ぶれが目まぐるしく変化していることが分かります。21年は健康志向の食品やセルフケア需要の商品などが多く入っていましたが、22年はそこに検査薬や解熱鎮痛剤などの医薬品、復調してきた化粧品なども入ってくる一方、ここ数年売れていたものが今年の販売苦戦ランキングに入るなど大きな変化が出ています。
図表3
改めて今年の売れたものランキングを見ていくと、11位の日焼け・日焼け止め(131%)や、主に乗り物酔い止めが入る13位・鎮暈剤(ちんうんざい、130%)と外出増に起因する商品もランクイン。昨年から回復傾向が続いていた鎮暈剤は、すでにコロナ前の水準を超えてきています。
他のトレンドとしては、5位・乳酸菌飲料(151%)、7位に液体だし(141%)と食品関連が入っています。乳酸菌飲料は睡眠改善などに訴求する商品が昨年から大流行。液体だしは、コロナの時期にじわじわと伸び続けてきたもので、家で食事を作る機会が増える中、手軽に本格的な味を出せるということで利用が広がっています。
上期の販売苦戦ランキング感染対策カテゴリーの現在地は?
最後に今年販売苦戦したランキングを見てみましょう(図表4)。1位・体温計(56%)、2位・殺菌消毒剤(71%)、4位・マスク(82%)、5位・うがい薬(83%)など、コロナの時期に大きく売り上げを伸ばした衛生用品が入りました。このうち体温計以外の消耗品はいまだコロナ前の水準を上回っている状態ではありますが、特に注目のマスクでは、実は前年同月比較で今年1月には81%、その後も2割減程度の状態が続いています。今後暑い夏を迎える中で、どのように生活者がマスクと付き合っていくかが注目されます。
図表4
衛生用品同様に、コロナの時期に売れたが故に低調に見えているものが、3位・麦芽飲料(77%)と8位・オートミール(87%)です。両商品とも健康などへの期待から大ヒット。今年の数字だけを見ると不振ですが、2019年に比べると麦芽飲料は190%、オートミールに関しては1173%と驚異的な数字となっています。同じく12位・玩具メーカー菓子(90%)も、コロナ禍にアニメなどでヒット作品が生まれて関連商品の売り上げが急増。4年前の1.8倍と高止まっています。
コロナ禍で話題になったセルフケア、巣ごもり需要関連にも不調な商品が出ています。9位・住居用ワックス(88%)、11位・家庭用手袋(90%)、13位・血圧計(92%)、15位・入浴剤(93%)などは、家で過ごす時間が減るなど生活者の行動が変化する中で前年同時期を下回る数字となっています。
6位・しわ取り剤、7位・洗濯のりなどの長期減少が続く商品もある中、異色だったのが14位・小麦粉。これは巣ごもり需要の減少も考えられますが、大きな理由となりそうなのが値上げでの売り上げ減です。インテージの食卓調査ではパン食から米食へのシフトが見られるなど、値上げによる食卓行動の変化が出てきています。
コロナやそれに関連する行動変容、さらには値上げなど、ここ数年で人々の生活や消費行動に大きな影響を与える変化が続いています。そのようなことを広く知っていただくためにも、インテージでは今年12月にも売れたものランキングを発表していく予定です。
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【SRI+®(全国小売店パネル調査)】
国内小売店パネルNo1※1 のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約6,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データです。
※SRI+では、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません
※1 2023年6月現在
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