物価高や外出機会増加が影響「2024年上半期、売れたものランキング」
2024年も折り返し地点となりました。今年の上期はどのようなものが売れたのでしょうか。全国約6,000店舗より収集している小売店販売データ、SRI+®(全国小売店パネル調査)で、日用消費財の中で何が特に売れたのかを振り返ります。
1位のパックは前年比1.5倍 外出機会増加の影響が見られる上位カテゴリー
図表1は2023年5月までの日用消費財カテゴリーの、前年比ランキングです。
図表1
昨年5月に新型コロナが5類に移行されて、約1年が経ちました。コロナ以前に近い生活に戻る中、今年上半期の1位になったのはパック(154%)でした。外出機会増加に伴う化粧品需要の回復に加え、韓国コスメの拡大や有名タレントによるパックブームが起きるなど、複数の要因が後押ししたようです。
特に女性での購入率(期間中に1回でも商品を買った人の割合)が増え(図表2)、全体では昨年上半期の15.0%から18.5%と上昇していました。年齢別では30代女性で18.6%から24.1%と大きく伸び、40代でも5ポイント増の20.8%と、15~29歳女性の購入率に近づきつつあります。同じく化粧品では韓国コスメに注目が集まったほほべにが7位に入っています。
図表2
2位に入ったのは、同じく外出増で増える靴クリーム(133%)。こちらは革靴用のクリームタイプだけでなく、スニーカー用のシートタイプなども含まれています。スニーカー人気もあり伸長しているようです。5位のリップクリーム(128%)も外に出る機会の増加に加え、マスク着用の減少もあり、数字を伸ばしました。
大幅値上げの影響は主食にも
外出機会の増加などポストコロナの行動が定着してきた中、日本の生活者に大きく影響を与えているのが値上げです。特に食品などでは大幅な値上げが続く中、今回9位に入ったのは日本人の主食・米(118%)でした。インテージではスーパー・コンビニ・ドラッグストアなどで袋に詰められているものを中心に調査していますが、米が上位に入ってくることは、ほぼありませんでした。ただ昨年の猛暑の影響で作柄が落ちたほか、インバウンド需要で外食向けの販売が好調なことなどもあり、最近は価格上昇が起きていて、それが大きく影響しました。
食品では大幅な値上げで販売数量が落ちるものも多いのですが、インテージの食卓調査「キッチンダイアリー®」で見ると(図表3)、家庭での米食は堅調です。特に朝食にごはんが出てきた割合は、2021年に31.3%だったところが2024年には34.3%と上昇。逆にパンは73.3%から69.1%まで落ちています。2022年から小麦や食パンの値上げが顕著になる中で、米食回帰の傾向は続いていますが、今後価格の影響がどう出るかは注目です。
図表3
値上げということでは、10位・煮干し(117%)、11位・中性洗剤(117%)、14位・漂白剤(114%)などは販売数量の大きな伸びは見られておらず、主に価格上昇の影響でランクインしたカテゴリーです。一方で4位・トマトジュース(130%)は値上げもありますが、健康を訴求する商品が好調となるなどして、大きく数字を伸ばしていました。
今年も続くインバウンド需要
医薬品も上位に来ており、3位・強心剤(132%)はインバウンド需要による寄与が大きく、外国人旅行客に人気の商品を中心に販売金額が伸びています。6位・ビタミンC剤(119%)、13位・鎮咳去痰剤(115%)はインバウンド需要に加え、国内需要も好調で数字を押し上げました。
ちなみに過去3年間の上半期売れたものランキングは図表4の通りです。ここ数年は上位に入る商品が、毎年のように大きく変化していることが分かります。21年は健康志向の食品やセルフケア需要の商品、22年はコロナ用の抗原検査キット※1が入る検査薬や解熱鎮痛剤などの医薬品、復調してきた化粧品などが入ってきました。23年はコロナ関連の医薬品のほかに、外出増とマスク緩和で更なる復活を遂げた口紅などの化粧品、そして今年も力強さが見えるインバウンド需要関連が上位に名を連ねました。
その中で3年ぶりにランキング上位に顔を出してきたのが今年8位の玩具メーカー菓子(118%)。漫画やアニメの関連商品が幅広い分野で人気となっているのを裏付ける形となっています。
図表4
販売苦戦は衛生用品が上位 コロナ禍で売れた商品は反動も
最後に今年上半期、販売苦戦したランキングを見てみましょう(図表5)。1位・検査薬(47%)、2位・マスク(75%)、8位・殺菌消毒剤(88%)など、コロナの時期に大きく売り上げを伸ばした衛生用品などが上位に入っています。3位・海藻サラダ(75%)、5位・しわ取り剤(80%)、15位・電球(95%)などは減少傾向が続いている商品です。4位・オートミール(79%)はコロナ禍に大幅な販売増を記録して、2022年上半期売れたものランキング1位となっていましたが、その反動が出た形です。それでも2019年に比べると9倍以上となっています。
図表5
ポストコロナの行動変容や値上げ、猛暑などの異常気象や経済状況の変化など、人々の生活や消費行動に大きな影響を与える事象は続いています。インテージでは今年12月にも年間の売れたものランキングを発表し、さまざまなできごとがどのような効果を与えたかなどをお知らせしていく予定です。
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【SRI+®(全国小売店パネル調査)】
国内小売店パネルNo1※1 のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約6,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データです。
※SRI+では、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません
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