n=1からみる令和の新ライフスタイル Case7:40代男性Gさん
新型コロナ感染拡大が始まって2年が経ちました。感染拡大が始まった直後はテレワークの推進、密を避けた行動、外出自粛や消毒など、今までほとんどの人が経験しなかった変化が一気に押し寄せました。コロナが生活者の行動や意識に与えた影響は、短期的な変化に留まらないものも少なくないでしょう。 そこで、株式会社インテージクオリスでは自主企画インタビューを実施。生活者ひとりひとりにどのような変化が起こったのか、そしてその変化は感染収束後も定着するのか。生活者の生の声を聴き、行動や気持ちを理解することで今後の生活がどう変わっていくかの兆しを捉えるために10名の方にオンラインのデプスインタビューを実施しました。
今回は、コロナ禍で「トレッキング」という新しい趣味に出会ったGさん(40代・男性)のお話です。
目次
コロナ禍での生活の変化
Gさんは東京都で奥様と二人暮らしをされており、人材派遣会社で営業職についています。
Gさんはコロナ禍で、以下の様に生活のさまざまな側面で変化を経験していました。
■人付き合い・コミュニケーション
オンライン上でのやり取りはあるものの友人との対面での飲み会の回数と時間が減り、気楽に会えなくなった
■健康
健康診断に引っかかり、ウォーキングを始める
■趣味
野球観戦が趣味だが現地に行って応援できず、自宅で見ることが多くなった。
取引先の方から誘われ、トレッキングにドはまりした
■働き方
コロナ禍前から仕事うや気持ちのメリハリはすくなかったが、テレワークでされにつかなくなった
他にも・・・
食、買い物、家族関係、お金の管理や使い方、美容、ファッション、情報収集、介護や老後、ペットについて変化があった
これらの変化のきっかけを明らかにするために「働き方」と「趣味」、「健康」について詳しく伺っていきました。
感染拡大前は楽しかった野球観戦‐家での観戦をむなしく感じることも
Gさんは野球観戦が趣味で、コロナ禍以前は、球場で観戦を楽しんでいました。野球好きな仲間と一緒に行き、歓声を上げながら応援。知らない人とでも生まれる球場全体での一体感を楽しんでいたそうです。また、ひいきが違う人同士でも、野球に関するマニアックなトークを交わし、盛り上がりながら観戦していたとのことです。
しかし、コロナ禍に入り、球場へ行っても歓声が禁止され、テレビや動画配信サイトで観戦することが多くなったそう。以前とは違い、お菓子を食べながらのんびりとリラックスしながら応援しているそうです。
ただ、球場に観戦しに行っていた時とは違い、声援を送ることも、友人同士で話をしながら観ることもなくなったため、以前のように楽しめなくなり、むなしさやフラストレーションがたまるようになってしまったとおっしゃっていました。
トレッキングが変えてくれたメリハリのない日々と健康問題
仕事面については、コロナ禍以前から休日と平日とメリハリのないお仕事だったそうです。気分転換しようと猫カフェやオンラインゲーム、ライブなど色々試したものの、仕事で落ち込んだ時の負の感情を吹っ飛ばすことはできず、半分諦めが入っていたとのこと。
コロナ禍でテレワークになり、余計にメリハリがなくなって悩んでいたそうです。また、健康診断でひっかかったことがウォーキングを始めたきっかけだとか。通勤する際は徒歩にし、運動を取り入れるようになりました。
コロナ禍が始まって1年くらい経ったときにGさんに転機が訪れます。取引先の方にトレッキングに誘われました。高校時代にオリエンテーリング部に所属していたこともあり、山に登った経験はあったそうですが、今の自分の体には厳しく「辛そうだな・・・」と思っていたそうです。しかし、取引先の方からトレッキングの良さをプレゼンするよ!だとか、面白い体験をさせてあげると説得され、Gさんは誘いに乗ることにしました。
実際に行ってみると、ただ歩くだけではなく、花や草木、富士山など展望の素晴らしさに気づきました。さらに、いろいろなルートがあることなど丁寧に教えてもらったそうです。その中でも一番印象的だったのが山頂でのドリップコーヒー。展望が良く、大自然に囲まれながら飲むコーヒーは格別だったとか。山頂にたどり着いた達成感や、大自然の中で過ごす優雅な気持ちで満たされました。
これをきっかけにトレッキングにドはまりしたGさん。専用のアプリを利用して自分で計画を立てトレッキングに行くまでになりました。汗をかいた後に素晴らしい景色を眺めることにやみつきになったそうです。
また、トレッキングを始めたことで、健康診断の数値も改善され、周りの友人からも筋肉がすごいね!と体形が変わったと言われるようになりました。
今までは仕事できついなと思うことがあっても、気持ちの切り替えがうまくできないことに悩んでいたGさんですが、トレッキングを楽しむ中で変化が訪れました。達成感を味わったり、優雅さで大自然に囲まれながらお湯を沸かしてドリップコーヒーを飲み、優雅な気持ちになれたりすることで、気持ちを切り替えて次に向けて仕事ができるようになったそうです。
コロナウィルスの感染拡大が考え方に変化をもたらした要因
コロナ禍以前からの悩みを解消できたGさんの、考え方を変えた要因はどこにあるのでしょうか?
コロナ禍で、日本だけではなく世界中で外出自粛が求められ、ゴーストタウンになっている様子をTVのニュースで見てショックを受けたGさん。まさかこんなことが起こるとは思っておらず、「いつ何が起こるか分からない・・・」と考えると同時に無力感を抱き、今までの人生を振り返ってもっとまじめに生きておけばよかったと後悔したとのことでした。
そこで、後悔のないように生きたいと思うようになりました。思い立ったらひるまずに、全力を尽くそうと考えるようになったことで、決断が早くなったそうです。例えば、上司に対して新しいことを率先して提案したり、すぐ行動に移すようになったとのこと。それは仕事面だけではなく、プライベートでも同様で、例えば買い物をする際に買う、買わないを決めるのも早くなったそうです。
劇的に変わったGさんの生活 ‐アフターコロナについて‐
トレッキングに誘われても乗り気でなかったにも関わらず、コロナ禍で生じた気持ちの変化により、一歩を踏み出せたGさん。ゴーストタウンにショックを受け、「後悔のないように、ひるまずにやってみよう」とチャレンジし、そこで得た達成感が「働き方」「生活の仕方」「健康」にもよい変化をもたらしたのではないでしょうか。
現在のGさんにとって、トレッキングは、もはや健康づくりや趣味・リラクゼーションというレベルのものではなく、それ以上の重要な意味があるという印象を受けました。それは、街に誰もいない状況を見て感じた無力感と、それまでの人生でためらってしまっていたこと、弱気になってやらなかったことに対する後悔から来ています。Gさんにとってトレッキングは、「悔いなく生きること」の象徴となっているのかもしれません。
前代未聞の事態を経験し、当たり前だと思っていたことがいつ崩れてもおかしくないと気づいたことが、悔いなく生きたいという原動力となったGさん。これから筋トレも始めたいし、行動制限がなくなったら海外にも行きたい、ともっと自分が進化していく予感があるようです。
次回はHさんのインタビュー結果をお届けします。
今回の分析は下記の設計で実施した株式会社インテージクオリス・株式会社インテージの共同自主企画の調査結果を元に行いました。
・調査主体:株式会社インテージクオリス・株式会社インテージ
・調査実施日:2022年1月~2月
・調査対象者:国内(主に首都圏)在住の20~60代男女10名
・調査手法:デプスインタビュー(オンライン)※WEB環境を利用し、会場に集まらなくても任意の場所からオンラインでインタビューを行う手法です。自宅でインタビューを行うケースが多く、リラックスして参加できるので、よりリアルな消費者の声がみえてきます。
インタビューに先立ち実施したアンケート調査結果に関する記事も掲載していますので、あわせてご覧ください。
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