ポストコロナ、値上げ、猛暑。様々な環境変化が表れた「2023年、売れたものランキング」
5月の新型コロナウイルス感染症の5類移行で人々の行動が活発になってきた2023年。今年はどのようなものが売れたのでしょうか。全国約6,000店舗より収集している小売店販売データ、SRI+®(全国小売店パネル調査)で、日用消費財の中で何が特に売れたのかを振り返ります。
目立つインバウンド消費と脱マスクの影響
図表1は2023年5月までの日用消費財カテゴリーの、前年比ランキングです。
図表1
1位となったのは強心剤。動悸、息切れ、気付けなどへの効用をうたう医薬品が、前年比183%でトップとなりました。コロナ禍の時期には販売苦戦ランキングの上位にも入っていた商品ですが、外国人旅行客の増加とともに売り上げが急回復しています。同じく訪日客に人気のビタミンB1剤も4位(148%)、インバウンドに加えて国内需要も強かった13位・ビタミンC剤(132%)、14位・整腸薬(131%)などもランクインしました。
2位には口紅(164%)が入りました。外出の減少に加え、マスクで隠れる部分の化粧品ということもあり、2021年にはコロナ前の約3分の1まで販売金額が激減していましたが、2019年と比べて8割を超えるまでに復活しました。マスクがかかる頬に使用するほほべにも7位(139%)となっています。口紅同様に唇に塗るものでは11位・リップクリーム(135%)でランクイン。脱マスクの流れを感じさせる結果となりました。
様々な感染症の流行で感染症対策カテゴリーが好調
人々が行動的になり、マスクの着用率も下がる中で増えてきたのが感染症でした。夏場に新型コロナ感染症患者が増加したこともあり、検査薬※1(159%)3位に入りました。その主因は新型コロナウイルス用の抗原検査キット※1で、唾液で判定できるタイプが人気になっています。
ただし、検査薬の販売金額は10月に入って前年割れしており、脱コロナの兆しのような動きも見えてきています(図表2)。
図表2
新型コロナ感染症以外にも、風邪やインフルエンザなど様々な感染症が広がりを見せる中、市販薬は好調でした。5位・総合感冒薬(143%)、6位・鎮咳去痰剤(139%)、10位・口腔用薬(137%)などは、今年に入ってから前年を大きく上回り、コロナ前も上回っています。
売れたものに見る猛暑と値上げの影響
今年の夏は猛暑でした。夏(6~8月)の全国の平均気温は統計開始以来最高を記録し、東京都心では最高気温30℃以上の真夏日が9月まで64日間続くなど、残暑の期間も過去最長となりました。また、物価の上昇が続き、日常生活に影響を与えています。
この2つの影響が「売れたもの」にどのように出ているか、ランキングを30位まで広げて見てみましょう(図表3)。
図表3
まずは猛暑の影響です。大きく数字を伸ばしたのが9位の日焼け・日焼け止め(138%)でした。特に高温が続いた7月以降は、強い日差しや例年以上に汗をかくことで外出先での利用もあったのか売り上げも伸び、特にミストタイプのものなどが人気でした。
18位・果汁飲料(123%)、21位・美容・健康ドリンク(121%)、22位・ミネラルウォーター類(119%)などの飲料も大幅増。熱中症対策の需要が高まる中、ビタミンや食物繊維を豊富に含むといった健康訴求のものなどが伸びました。
そして値上げの影響。広範な商品で値上げが進みましたが、価格が高騰しても代替品がなく、販売数量が堅調だったものがランキングに入っています。23位・キャットフード(117%)の他に26位・育児用ミルク(115%)、そして今年初めからじわじわと値上がりしてきた紙製品からも29位・ティッシュペーパー(114%)、30位・大人紙おむつ(114%)が入ってきました。
コロナ禍の売れ筋を振り返る
コロナ禍以降、毎年のように「売れたもの」の傾向は大きく変化しています。その変遷を振り返ってみましょう(図表4)。
図表4
コロナ1年目の2020年は「1位・マスク、2位・殺菌消毒剤、3位・体温計」と、コロナ時代の3種の神器ともいえる衛生系商品が爆発的に数字を伸ばしました。日本中の店頭からマスクが蒸発したかのようになくなったことは、多くの方が記憶しているかと思います。
これが2021年になると、長引く外出規制と巣ごもり需要などもあり「1位・オートミール、2位・麦芽飲料、3位・玩具メーカー菓子」と健康に訴求した食品や、お家時間を充実させる商品などが上位に来ました。
そして2022年は「1位・検査薬、2位・オートミール、3位・鎮暈剤(酔い止め)」と、コロナ対策から旅行に使う乗り物酔い止めまでWithコロナの状況を表すようなカテゴリーが入ってきています。さらに今年はインバウンドの影響なども表れ、ランクインの要因が多様化しています。
販売苦戦ランキングの上位は衛生系用品
最後に、今年販売苦戦したランキングも見てみましょう(図表5)。1位・体温計(61%)、2位・殺菌消毒剤(72%)、3位・マスク(75%)、7位・うがい薬(87%)など、コロナ禍に大きく伸長した衛生用品が上位に入りました。
図表5
特にマスクは、猛暑で気温が跳ね上がった夏場以降は対前年比6割台まで低下。街中でもマスクをしている人は減り、大きな変化が感じられました。それでもこれらの衛生用品はコロナ前の販売金額を大きく上回っています。
同じくコロナの時期に大きく売り上げを伸ばした、5位・麦芽飲料(82%)と6位・オートミール(83%)も数字を落としていました。ただ2019年に比べると麦芽飲料は187%、そしてオートミールはいまだ1,067%と、人々の生活に定着している様子がうかがえます。
コロナ禍で話題になった巣ごもり需要関連のカテゴリーも不調となっています。8位・家庭用手袋(90%)、9位・住居用ワックス(90%)などには、外出が増えてきた影響が出ているようです。
新型コロナウイルス、猛暑、値上げなどの国内要因に加え、海外での戦争など、人々の生活や行動に大きな変化を与える事象が続いています。その結果、どのような影響が出てくるのか。インテージでは今後も「売れたものランキング」を発表していく予定です。
※1:検査薬に含まれる「コロナ用の抗原検査キット」は、医療用・一般用(OTC)で、弊社で判明できた製品のみ(研究用の抗原検査キットは除く)
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【SRI+®(全国小売店パネル調査)】
国内小売店パネルNo1※1 のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約6,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データです。
※SRI+では、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません
※1 2023年11月現在
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