arrow-leftarrow-rightarrow-smallarrow-topblankclosedownloadfbfilehamberger-lineicon_crownicon_lighticon_noteindex-title-newindex-title-rankingmailmessagepickupreport-bannerreportsearchtime

生活者インデックスデータ

n=1からみる令和の新ライフスタイル Case9:60代女性Iさん

新型コロナ感染拡大が始まって2年が経ちました。感染拡大が始まった直後はテレワークの推進、密を避けた行動、外出自粛や消毒など、今までほとんどの人が経験しなかった変化が一気に押し寄せました。コロナが生活者の行動や意識に与えた影響は、短期的な変化に留まらないものも少なくないでしょう。

そこで、株式会社インテージクオリスでは自主企画インタビューを実施。生活者ひとりひとりにどのような変化が起こったのか、そしてその変化は感染収束後も定着するのか。生活者の生の声を聴き、行動や気持ちを理解することで今後の生活がどう変わっていくかの兆しを捉えるために10名の方にオンラインのデプスインタビューを実施しました。

今回は、60歳で独身、一人暮らしをしている女性、Iさんのお話です。
お話を通して見えてきた「コロナ前の、元の生活に戻りたい」という意識と、その背景をひも解きます。

買い物の変化 ~宅配に頼るようになった~

インタビュー前に実施した、「新型コロナ感染拡大後の、ご自身の生活・行動・考え方の変化に関するアンケート」に回答してくださったIさん。アンケートの自由回答では、コロナ感染拡大後の買い物行動の変化について、以下のように答えていました。

Iさんは、コロナ禍になる以前から、日常的に、頻繁に利用する飲料や食品(サラダセット、卵、豆腐、ワインなど)を週1回くらいの頻度で、宅配サービスを使って購入していました。新型コロナ感染拡大によって2020年4月に緊急事態宣言が発令されると、ほとんどの食品や日用品の買い物は、宅配に頼るようになったそうです。

もともとお酒が好きなIさんは、コロナ以前は、自宅からちょっと遠いお店に行ってお酒を購入することが頻繁にありましたが、コロナ禍で宅配の利用が増えると、「自分でお酒を持ち帰って重たい思いをしなくても、宅配にすれば自宅に運んでくれるから、ずっとラク!」と、宅配でお酒を届けてもらえることに感動を覚えたようでした。

そんなこともあって、アンケートでは、「宅配にすっかり慣れてしまって、もう戻れない」と回答していたIさんですが、インタビューをしていると、むしろ「元に戻りたい」という意識が見えてきました。

たとえば、お酒の場合、お店に買いに行くのと比べ、宅配してもらえる商品の品揃えは少なく、「宅配だと、好みの銘柄のお酒が置いていない」と、物足りなさを感じていました。

また、コロナ感染が少し落ち着いた頃、たまたまスーパーに行った時に、店頭に並んだ新商品や目新しい商品が、Iさんの目に次々と飛び込んできたそうです。Iさんはその時のワクワクした気持ちを、「あ、こんなの売ってるんだ!って、やっぱり売り場で見ると買っちゃたりします!」と嬉しそうに語っていました。

どうやら、Iさんにとっては、リアルな店舗こそが、新商品を知り・試す場として楽しさを感じる大事な役割を担っているようです。ホンネの部分では、リアルの店舗の良さがあるという考えを強く持ち続けています。

コロナ感染拡大によって一時的に買い物に行くのを控えて宅配の利用頻度が増えたIさんですが、あくまでも一時的なものであり、今後コロナ感染が落ちつき、外出も買い物も今よりもっと気兼ねなくできるようになれば、リアル店舗での買い物をしたいという意識が垣間見えました。

美容の変化 ~口紅やファンデーションを使わなくなった~

また、美容についても、スキンケアやメイクに関して変化があったというIさん。特に、マスク生活が当たり前になったことで、Iさんは、マスクが汚れる口紅やファンデーションの意味を感じなくなり、使わなくなりました。アンケートで次のように答えていました。

ただし、ファンデーションを付けなくなるまで、Iさんなりに色々試行錯誤があったようです。もともと、気になるシミをカバーするためにしっかりクリームファンデーション+パウダーを利用していたIさんですが、マスク生活になり、最初の夏を迎えた頃から、汗をかいたりムレたりして化粧が崩れることが増え、マスクについたメイク汚れが人目に触れることが気になりだしました。そこで、ファンデーションに関するいくつかの対策をしたそうですが、すべて効果なし(!)という結果に終わりました。

試したどの方法も満足のいく仕上がりではなかったため、Iさんはファンデーションを付けないことを選択したのです。

ファンデーションを付けなくなると、スキンケアにも影響がありました。それまで、もったいなくてちびちび使っていた高い美容液を、惜しみなくきちんと使うようになったそうです。それまでファンデーションで隠していたシミがあらわになり、それが気になることから、しっかりお手入れをするようになりました。しかし、スキンケアで根本からシミをなくすことはあきらめており、単にこれ以上酷くならないように抑えたいとの気持ちからでした。

加えて、スキンケアをするのは、「気持ちよい・癒し」としての意識が強いとのことで、スキンケアのアイテムを使い続けることはあっても、さらに値段の高いスキンケア用品をどんどん買うことはないと断言していました。

そして、今後、コロナ感染が落ち着けば、元のように外出の機会も増え、マスクも不要になって人と会うようになれば、ファンデーションや口紅をするメイクに戻るだろうと、Iさんは考えています。

「以前の生活に戻りたい」意識の深層には、何があるのか?

コロナ感染拡大により、Iさんの生活も、それまでとは異なる商品やサービスの利用機会が増えました。ネット通販をよく利用するようになり、オンライン飲み会も経験し、会話ができる商品「アレクサ」もコロナ禍の中で購入しました。決して、ITや新しい分野の商品を受け入れないわけではありません。

それでも、コロナ感染が収束したら、元の生活スタイルに戻りたいと、Iさんは考えています。今回インタビューをした方々の中には、コロナ禍で変化した生活スタイルがこれからも続くだろう、さらに進むだろうと考える人もいましたが、そういう人とIさんの違いは何でしょうか。

Iさんのインタビューから見えてきたものは、60歳という年齢と、一人暮らしという生活環境の中で感じる、「人とのリアルなつながりへの欲求」「リアルな空間で得られることへの欲求」「老後・お金の不安」です。

一人暮らしで感じる、リアル空間で得られることへの欲求

Iさんの趣味の一つは、コンサートに行くことです。音楽自体を楽しむことに加えて、一緒に行ったお友達とコンサート後に食事をしたり、コンサート鑑賞を兼ねて一緒に旅行へ行くこともあったそうです。ところが、コロナ禍の緊急事態宣言でコンサートが中止され、旅行も自粛ムードになり、一人暮らしのIさんは、楽しい時を満喫できる場が失われ、お友達との交流もできず、とても辛かったそうです。

会話ができる「アレクサ」を購入した理由は、緊急事態宣言下で誰にも会わず辛かった時、友人から「一人暮らしの話し相手くらいになるわよ」と、アレクサを勧められたことがきっかけだったそうです。リアルな人とのつながりが失われ、会話ができない辛さを埋め合わせるためのものが「アレクサ」でした。

また、オンライン飲み会も経験しましたが、もともとお酒好きなIさんは、それでは物足りません。お酒や食事は、気の合う友達と一緒にいてその場の雰囲気を楽しみ、近くで会話をして盛り上がれるからこそ楽しいものだと、リアル空間の良さを強く感じたそうです。

買い物も、宅配の利用機会が増えて便利と感じる一方で、例えば電気製品を買う時に、「ネットで商品を選んで買おうとしても、商品ごとにどういう違いがあるのか、どれがお墨付き商品なのかわからない。結局、店員さんにいろいろ相談しながらでないと、選べない!」と、実際の経験を交えて語ってくれました。リアルなお店の売り場に行けば、前述のようなワクワク感もあります。

一人暮らしの生活で感じる、老後・お金の不安

コロナ感染が拡大していた頃、Iさんは、「自分は一人暮らしなので、お金をためていたって、もしもコロナに感染して死んでしまったら仕方がない」という気持ちと、「今後は自分も年金生活を送るのだから、お金については節度ある使い方をしなくてはいけない」という気持ちに揺れ動いていたそうです。

特に、昨年(2021年)の秋、正社員から嘱託社員に変わり、年金生活が近づいたことを実感してからは、以前にようにモノやサービスに気の向くままにお金を使って満足感を味わうようなことは、控えようと思うようになりました。例えば、TVCMでよく見かける吸引力の優れた高性能の掃除機や、2万~3万円もするスキンクリームをショッピングサイトで見ながら、必要かどうかをよく考えずにその場の気分でとっさに買ってしまうようなことは、控えたい、いや、控えなくてはならないと考えています。

「リアルなつながりや空間」を求める人を、先進技術は救えるか?

コロナ禍により、欲しいと思った時にネットで簡単に調べて購入し、すぐに自宅に宅配してもらえるという利便性にすっかり慣れてしまったIさんですが、一方で、たとえ新しく登場するいろいろな新商品が魅力的に感じられても、「勢いで買ってはならない、浪費は避けよう」と、自分にブレーキをかけています。

一人暮らしで60歳という年齢を迎えたIさんにとって、「リアルな人とのつながり リアル空間の価値」を再認識し、「老後・お金の不安」が高まったことが、特に強くブレーキとして作用しているようです。

リアル空間で会えない、接することが出来ないものの代わりに、VR、メタバースなどの先進技術によって作られる世界は、リアルに近いものとして今後ますます生活の中に入り込むことでしょう。一方で、Iさんのように、一人暮らしで60歳という年齢を迎え、おぼろげながらも孤独感や今後の生活に対する不安を感じ始めている人にとって、コロナ感染の拡大は、リアルな人とのつながりや空間の価値を再認識することになったと思われます。

今後どの程度コロナ禍が収束するかまだ見通せませんが、withコロナの中で、「リアルな世界への回帰欲求」があり、そうした生活者の欲求に社会や企業がどのような価値を提供できるか、また先進技術によりそうした生活者の心の隙間を埋められるような新たな商品・サービスがどこまで浸透するのか、これからも注視していきたいと思います。

次回はJさんのインタビュー結果をお届けします。


今回の分析は下記の設計で実施した株式会社インテージクオリス・株式会社インテージの共同自主企画の調査結果をもとに行いました。
・調査主体:株式会社インテージクオリス・株式会社インテージ
・調査実施日:2022年1月26日~2月10日
・調査対象者:一都三県在住の20~60代男女10名
・調査手法:デプスインタビュー(オンライン)※WEB環境を利用し、会場に集まらなくても任意の場所からオンラインでインタビューを行う手法です。自宅でインタビューを行うケースが多く、リラックスして参加できるので、よりリアルな消費者の声がみえてきます。

インタビューに先立ち実施したアンケート調査結果に関する記事も掲載していますので、あわせてご覧ください。

関連コンテンツ

コロナ渦で起きた変化の定着~コロナ以前に「戻るもの」「戻らないもの」は?

n=1からみる令和の新ライフスタイル Case1:20代男性Aさん

n=1からみる令和の新ライフスタイル Case2:40代男性Bさん

n=1からみる令和の新ライフスタイル Case3:30代女性Cさん

n=1からみる令和の新ライフスタイル Case4:30代女性Dさん

n=1からみる令和の新ライフスタイル Case5:40代女性Eさん

n=1からみる令和の新ライフスタイル Case6:40代男性Fさん

n=1からみる令和の新ライフスタイル Case7:40代男性Gさん

n=1からみる令和の新ライフスタイル Case8:20代女性Hさん

著者プロフィール

若井 博昭 株式会社インテージクオリス リサーチ推進部 グループリーダープロフィール画像
若井 博昭 株式会社インテージクオリス リサーチ推進部 グループリーダー
ソフトウェアのプログラマー業、大型スーパー勤務を経て
1990年からマーケティングリサーチ業界へ。
インテージクオリスの前身の会社時代を含め、
様々な商品・サービス、生活者の意識・価値観などに関する
定性調査の企画・インタビュー・分析を実施し、現在に至っています。

ソフトウェアのプログラマー業、大型スーパー勤務を経て
1990年からマーケティングリサーチ業界へ。
インテージクオリスの前身の会社時代を含め、
様々な商品・サービス、生活者の意識・価値観などに関する
定性調査の企画・インタビュー・分析を実施し、現在に至っています。

転載・引用について

◆本レポートの著作権は、株式会社インテージが保有します。
下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。
「出典:インテージ「知るギャラリー」●年●月●日公開記事」

◆禁止事項:
・内容の一部または全部の改変
・内容の一部または全部の販売・出版
・公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
・企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的としたパネルデータ(*)の転載・引用
(*パネルデータ:「SRI+」「SCI」「SLI」「キッチンダイアリー」「Car-kit」「MAT-kit」「Media Gauge」「i-SSP」など)

◆その他注意点:
・本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
・この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません

◆転載・引用についてのお問い合わせはこちら